「史実に忠実なら、みんな外から見るだけの城に」名古屋城の木造復元にエレベーターは必要? 車いすユーザーの訴え
【映像】名古屋城の復元にエレベーターは必要? 史実に忠実は非現実的? 河村市長が陳謝
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 1959年に再建された名古屋城。空襲で焼けた木造に変わり、コンクリートの城に生まれ変わった。しかし、それから60年以上経った今、この城が物議を醸している。問題になっているのが、車いす利用者のためのエレベーター設置の是非だ。

【映像】名古屋城“木造復元” 完成図のイメージ ※現段階(画像あり)

 現在、名古屋市は城の木造復元を目指している。3日、河村たかし市長も参加した市民討論会で、エレベーター設置を求めた車いすの男性に対し、“ある市民”がこんな発言をした。

「エレベーターも電気もない時代に作ったものを再構築するという話だ。どこまで図々しいのかという話で。我慢しろという話だ」

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 また、別の市民は身体障害への差別表現を使った上で「エレベーターは誰がメンテナンスするのか。その税金はもったいないと思う」と述べた。これに、一部の市民からは拍手が起きたという。

 5日、河村市長は「その場で制止すべきだった」と陳謝。6日の定例会見でも「差別的表現を含む不適切な発言があった。発言には気をつけてと言うべきだった」と謝罪した。

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 名古屋城はどこまで昔の姿を守るべきなのか。ニュース番組「ABEMA Prime」に出演した、車いすユーザーで愛知障害フォーラム事務局長・辻直哉氏はこう話す。

「討論会では差別発言が多くあった。障害のある人、車いすの方が発言をしている時に『わがままだ。図々しい。お前が我慢しろ』と。今では使わないような差別的発言もあった。こういう発言が、市主催の場で堂々と行われた。明らかに異常な事態で、重大な人権侵害だと思う。会場には多くの市職員がいた。なぜこういった発言が起きたのか、原因をしっかりと究明していただきたい」

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 今は城には耐震の問題で入れないが、辻氏によると城の5階まで行ける23人乗りのエレベーターが2基ついているという。

「木造復元すると、マンションで約13階建ての高さになると言っていた。しかも、階段は45度を超える。エレベーターをつけないと、危険だとしか言いようがない。障害者を特別扱いをしてほしいのではなく、みんなが使えるようにしてほしい。もしくは、みんなが外から見るだけのものでいい。それこそ史実に忠実にやるのであれば、どうぞやってもらってかまわない。本当に江戸時代に作られた、電気も何もないものを作ってほしい」

 作家・ジャーナリストの佐々木俊尚氏は「そもそも観光地なのかどうか。ここから議論したほうがいい」とコメント。

「日本の近代観光は1950年代くらいから始まった。至るところを乱開発して道路を作りまくって、自然がどんどん破壊された。その中で道路を入れずに自然を守ったのは、尾瀬ヶ原だ。今、尾瀬ヶ原をバリアフリーにして『誰でも入れるようにしよう』と言っても、賛成する人は誰もいないだろう。美しい自然環境を守らないといけないからだ。松本城や弘前城は木造だが、ものすごく急な階段で、全然バリアフリー化されていない。『バリアフリーにしよう』とならないのは、観光地ではなく、保全しないといけない建築物だからだ」

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 その上で、佐々木氏は「木造復元の目標は観光地化なのか。それとも歴史的建造物を再現することなのか」と投げかけ。「河村市長がどのように思っているか分からないが、少なくとも完全に木造にして再現したい、バリアフリーにしないのであれば、観光地ではなく、あくまで元の名古屋城の形に戻したいということだ。歴史的建造物もしくは、その復刻版であるとちゃんと打ち出せば、バリアフリーかどうかという議論は生じない」と述べた。

 一方でテレビ朝日田中萌アナウンサーは「いくら史実に作ったと言っても、令和の時代に再現したものにあまり歴史的価値は感じない」とコメント。「そのお金を公園や街のバリアフリー化を進めることに使ってほしい。そのほうが喜ぶ人は増えるんじゃないか」と述べた。

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 NPO法人「あなたのいばしょ」理事長の大空幸星氏は「河村市長の良さは歯に衣着せぬ発言で、白か黒かでなく、そこらへんの政治家が言わないようなことを言ってくれるところ。それが市民にウケていたのに、河村たかしさんの良さが終わってしまった」と話す。

「なぜ市民から支持を得てやってこれたのか、原点にぜひ立ち返っていただきたい。もちろん、差別発言は再発防止をしていただいて、木造復元事業がそもそもどこに向かっていくのか。観光施設なのか歴史的建造物なのか、あやふやになっている。事業の終着点をしっかり見せてほしい」

(「ABEMA Prime」より)

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