2018年に放送されたTVアニメ「青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない」が、現在地上波にて再放送されている。2019年公開の劇場アニメ「青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない」に続く物語が描かれる劇場アニメ「青春ブタ野郎はおでかけシスターの夢を見ない」が2023年6月23日に公開、「青春ブタ野郎はランドセルガールの夢を見ない」の劇場公開も決定しているなど、人気シリーズとなった「青春ブタ野郎」シリーズ。
神奈川県の藤沢が舞台となり、思春期特有の感情が「思春期症候群」と呼ばれる不思議な現象を引き起こすという思春期ファンタジーが描かれ、少年少女たちの心情を丁寧に描写したストーリーがシリーズの魅力となっている。
「おでかけシスターの夢を見ない」では、主人公・梓川咲太(あずさがわ さくた)の妹・梓川花楓(あずさがわ かえで)を中心に、彼女の進路をめぐる繊細な物語が繰り広げられていく。
本記事では、咲太役の石川界人と桜島麻衣(さくらじま まい)役の瀬戸麻沙美、花楓役の久保ユリカにインタビューを実施。TVアニメと前作の劇場アニメを経て、「おでかけシスターの夢を見ない」では役へのアプローチがどのように変わっていったのかを伺った。
――「おでかけシスターの夢を見ない」では、役を演じる上で向き合い方も変わったのでしょうか?
石川:変わりましたね。「おでかけシスターの夢を見ない」では花楓をはじめとした繊細な思春期の子たちの心を表現している部分も多いですが、それは咲太も例外ではなくて。今までの咲太はがむしゃらにがんばることもありつつ達観したようなところがあって、誰かに助言をしたり何かを促したりする立場にいることが多かったと思います。
ただ、これまではいわば「そうあらねばならぬ」という感じだったのが、「おでかけシスターの夢を見ない」での咲太は「そうであろう」として立ち振る舞っているように見えていて……。
――咲太も高校生なので、大人でもなければ子どもでもない微妙な立ち位置ですよね。
石川:「そうあらねばならぬ」から「そうであろう」という立ち振る舞いやサポートへ無意識的に変化していると感じました。そのことが咲太自身の迷いや(TVアニメ終盤で消えてしまった花楓の別人格である)かえでへの複雑な気持ちにも繋がっていると思ったので、「そうであろう」とする咲太の気持ちを大事に演じました。
――瀬戸さんはいかがでしょうか?
瀬戸:「おでかけシスターの夢を見ない」で麻衣さんを演じて改めて実感したことがあるのですが、それはみんなとは違う世界を一つ持っているということでした。咲太と会う時間がこれまでのTVアニメと比べても減っているのですが、いろいろなところに女優としてロケのお仕事に行っている時間が増えていて。麻衣さんは忙しいなと感じつつも、思春期症候群であまり仕事ができない時期を乗り越えて自分の中での答えが出せたことで、また仕事をやれているという受け取り方もできるので、すごく嬉しいと思えました。
そんな中でも咲太とは恋人同士の関係性がしっかりと続いていて、一緒にいられない時間が多くなっても、高校生とは思えないほどお互いを想い合う絆が強くなっていっているのかなと思います。
――ファンとしても信頼感を強く感じます。いっぽう麻衣と花楓との関係性はどうでしょうか。
瀬戸:麻衣さんにとっても、花楓が妹みたいに可愛い存在であることは変わらないと思っています。花楓との会話の中で、これまでの関係値がしっかり育まれていると役を通じて感じられました。
――TVアニメでは「かえで」から「花楓」に戻った印象が強く残っていますが、久保さんは本作を通じて全編で花楓を演じることになります。
久保:花楓がTVアニメの最後に出てきたときは、目が覚めたばかりで訳もわからず、咲太も変な反応をしていて(苦笑)。
――ファンも複雑な心境になりましたが、「ゆめみる少女の夢を見ない」を経て花楓に対する印象も変わったと思います。
久保:「ゆめみる少女の夢を見ない」では、花楓自身も“もう一人のわたし”は、みんなからこんな風に思われていたんだとか、こういう時間があったんだということを実感しながら、ほんの少しよそ行きの顔を見せている段階だとしたら、「おでかけシスターの夢を見ない」では花楓が元々持っていた、可愛らしい部分やリアルな妹らしい部分が出てきていると思っています。
お兄ちゃんしかすぐそばで頼れる人がいなかったときから比べて、そのお兄ちゃんが信頼している麻衣さんや友人たちがいて、彼らがみんな自分に優しくしてくれるのはかえでがいたからであり……。目が覚めたばかりのころはツンツンとしていましたが、そのときほどではないにせよ、中学生らしい花楓の葛藤をうまく表現したいとすごく意識して、お芝居させていただきました。
――TVアニメと前作の劇場アニメ、そして今作と物語が進んでいく中で、花楓の中でも変化があるということですね。
久保:どうしても(キャラクターとして)わかりやすいのは、かえでになってしまうのですが、花楓の心境の変化もなるべく細やかに演じられればいいなと思っています。
――きっと「おでかけシスターの夢を見ない」を見たら、かえでも花楓も好きになると思います。
久保:よかったです! いまだに「かえでを返して!」と言われてしまうこともあるので……(笑)。「だから違うんだよ! そんな寂しいこと言わないで!」って大声で言いたいです(笑)
一同:(笑)
かえでから花楓へと戻ったあと、自身の進路という中学生らしいリアルな悩みに直面する「青春ブタ野郎はおでかけシスターの夢を見ない」のストーリー。花楓の思春期の悩みはもちろん、咲太や麻衣の心情も丁寧に描かれていく。誰しもが共感できる物語の行方を、ぜひ劇場で確かめてみてほしい。
「青春ブタ野郎はおでかけシスターの夢を見ない」
2023年6月23日劇場公開
【公式HP】https://ao-buta.com
【Twitter】https://twitter.com/aobuta_anime
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取材・テキスト・写真/kato