「“逝くなよ!生きろ!”と叫びながら」「助けてあげたかった…」 懸命な救助活動も死亡、医療従事者の“後悔” 大分・別府ひき逃げ事件
【映像】事件後15分後の現場の様子
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 2022年6月29日に大分県別府市で発生したひき逃げ事件。信号で止まっていたバイク2台に軽乗用車が追突し、19歳の大学生1人が死亡、1人がけがをした。警察は現場から逃走した八田與一(はった・よいち)容疑者(26)を道路交通法違反の疑いで全国に指名手配。逮捕につながる有力な情報提供には遺族が最高500万円の懸賞金をかけているが、未だに行方はわかっていない。

【映像】事件後15分後の現場の様子

 八田容疑者は、ひき逃げする直前、事故現場近くのショッピングセンターの駐車場で、亡くなった大学生Aさんに対し、一方的な言いがかりをつけていた。大分県警によると、八田容疑者の軽乗用車は時速70キロ以上で追突し、ブレーキもかけずに電柱に激突。被害者2人のバイクは、交差点の先まで吹き飛ばされ、Bさんは奇跡的に軽傷だったが、Aさんは心肺停止となり病院で死亡が確認された。大分県警は、八田容疑者が故意に追突した可能性も指摘しているが、逃走中のため明らかにはなっていない。

 事故発生からまもなく1年。大分県警は5月、八田容疑者の車両と被害者のバイク2台をメディアに公開した。車は前方が激しく損傷し、フロントガラスにはひびが入りへこんでいる。Aさんのバイクも追突により後方が激しく破壊され、追突された衝撃の大きさを伝えている。

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 事件当日の午後7時45分ごろ、Aさんが八田容疑者に言いがかりをつけられた後、500mほど先の交差点で信号待ちをしながら「どうせ変なやつやろ。気にすんなよ」と話している時だった。「アクセルベタ踏みの音がした」。Bさんはその時の状況を振り返る。

「回転数がだいぶ上がって『ブーン!!』みたいな。光というか音で気づいた。赤信号なのにそんなふかすやついないし、バイクのミラーを見たらヘッドライトがすぐ近くに来ていて。『これはまずい』と思って最後2人目が合った」(Bさん)

 次の瞬間、八田容疑者の車が追突し、AさんとBさんのバイクは火花を散らしながら30メートル以上突き飛ばされた。Bさんは地面に叩きつけられ、一瞬意識を失った。

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 事件発生の15分後に上空から撮影された映像を見ると、Bさんが追突された地点付近で倒れていたのに対して、Aさんは交差点を越え、電柱に激突した八田容疑者の車付近に倒れていた。元宮城県警で、現在は交通事故調査鑑定人の佐々木尋貴(ひろき)氏は、次のように推測する。

 「Aさんはボンネットの上でフロントガラスに叩き付けられた後、車に乗せられた状態のまま、電柱に衝突した衝撃で地面に落ちたのではないか。例えば、時速80キロで車がぶつかると、オートバイにまたがっていた人も時速80キロまで一気に加速する。そこですでに相当のダメージがあるが、もっと大きいのは落ちる時。80キロのままドンと落ちる」(佐々木氏)

 意識が戻ったBさんは、Aさんのもとに這いながら駆けつけようとしたが、体が動かなかった。救急車の中で隊員からひき逃げだと伝えられた。

「意識が戻ってすぐにあいつだと思った。救急車の中で、レスキュー隊員かなにかの人に『突っ込んできたやつ、俺もさっき会いました。見覚えがあります』というのを伝えた」(Bさん)

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 八田容疑者と出会って少なくとも約3分後に、Aさんは命を奪われた。

 買い物帰りに偶然現場を目撃した、医療従事者のKさん。救急車や警察が到着する前だった。八田容疑者の車付近の地面に手が見えたのを確認。駆け寄ると、Aさんの体は思わず目を背けたくなるほど激しく損傷していたという。声をかけたが返事はなかった。

「とにかく声をかけながら『大丈夫よ、助けるよ』って言いながら、『一緒にいるからね』と声をかけていた。たぶんすごく怖いだろうなというのがあったので」(Kさん)

 意識のないAさんに「私がずっとついているから」「怖かったね。絶対大丈夫だからね」と、声をかけ続けたKさん。しかし、すでに現場に八田容疑者の姿はなかった。救急車が到着するまで、Kさんはスマートフォンで警察の指示を受けながら、偶然居合わせた別の看護師の女性と懸命に心肺蘇生を行った。

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「『大丈夫! 逝くなよ! 生きろ!』と叫びながら、通りすがりの人たちも『頑張れ』と叫んだり。野球部っぽい高校生たちが、救急車が来られるように、道路に散らばっているバイクの部品をよけたり、交通整理したり、すごく全員が全員助けようとしていた」(Kさん)

 Kさんは翌日、Aさんが亡くなったことをニュースで知った。事件から1年経った今も、助けられなかったことを悔やんでいる。

「『もっとできることがあったかな』とか、それは今でも引っかかる。一番に発見して、最初に駆けつけて、触ったり声をかけたりしたので、きっと最後のほうは私の声を聞いている。何をしていたにしても後悔はあったかなと思うが、助けてあげたかった」(Kさん)

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 別府の事件について、警察は情報提供を呼びかけている(別府警察署:0977-21-2131)ほか、番組Twitter(ABEMAニュース/@News_ABEMA)のDMでも事件や容疑者に関する情報を求めている。(『ABEMA的ニュースショー』より)

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