もし、そんなことを言われたらあなたはどうしますか?働かずにのんびり過ごす人もいれば、パーッと使う人もいるのでは。そんな都合のいい話本当にあるという。
その取り組みをしているのはイギリス。ボランティアの中からランダムに選んだ30人に、毎月無条件で1600ポンド(日本円で約29万円)を2年間にわたって支給する政策が持ち上がっている。
これは生活に必要な最低限のお金を、政府が一律に支給する「ベーシックインカム」を導入した際、人々の生活にどのような影響が出るか調査するための社会実験だ。
イギリスに先駆けて、アメリカやヨーロッパの一部ではすでにベーシックインカムの社会実験が行われているが、月29万円というのはこれまでに例を見ない額だという。
ベーシックインカムは、「貧困問題の解決」や「少子化対策」などのメリットが期待されている一方で、ネットでは「財源はどうするの?」「働かない人が増えそう」と、不安視する声も上がっている。
これまでの実験では、ベーシックインカムを受け取っても、ほとんどの人がそれまで通り働くという結果を示したものもある。
「期間が限られているんだからそりゃ働くでしょ」という意見もある中で、フィンランドの実験報告などでは「ストレスが減った」「幸福度が増した」という報告もあった。
一見、いいことずくめのベーシックインカム。日本で実現する日は来るのだろうか。『ABEMAヒルズ』では、経済学者で大阪大学の安田洋祐教授とノンフィクションライターの石戸諭氏に話を聞いた。
――ベーシックインカムのメリット・デメリットは?
安田:メリットは、今のセーフティネットで救えない人を大量に救える可能性があること。デメリットは、既存の社会保障制度が廃止されたり縮小されたりする場合、困ってしまう人が増える危険性があること。既存のセーフティネットが脆弱になってしまうかもしれない。
――社会保障制度とベーシックインカムの制度は食い合うことにならない?
石戸:仮に導入するのならば、財源の問題になるのではないか。今の国家予算の中でどこを削るか、あるいは特に若年層には大きな負担となっている社会保険料のどこを削ってベーシックインカムに割り当てるのかという議論になってくるだろう。生活保護の代替として使われるのが、ベターだと思う。生活保護以下の所得であるにもかかわらず、受け取っていない世帯もかなりの数もいる。ベーシックインカム的な制度を貧困対策で導入するのは大いにありだと思う。
――日本で導入するには、まだ現実的ではない?
安田:ベーシックインカムがベストだとは考えていない。ただ、石戸さんが言うように現状の生活保護制度をみると、救うべきなのに救えていない人がたくさんいる。データで言うと、生活保護以下の生活をおくっている人が約800万世帯あって、その内実際に生活保護制度を受給できているのが約160万世帯と2割くらい。8割は様々な理由があって受け取れていない。これをベーシックインカムに切り替えると無条件で支給になるので、救われる人がひとり親家庭等中心に大量に出てくるはずだ。
――本格導入するとなった場合、巨大な政府と莫大な税収が必要だったりするのでは?
安田:一人当たり仮に月7万円とすると、年間100兆円くらいの予算が必要になる。莫大な気はするが、今の社会保障費は約130兆円で、その内年金が約60兆円だ。ベーシックインカムを導入すると、生活保護や年金の部、たとえば基礎年金の制度を廃止して、ベーシックインカムが代替していく方向になるかと思う。部分的には現在の支出を減らせるので、うまくバランスをとっていけば財政面ではなんとかなるのではないかと思う。
――安田教授自身はベーシックインカムの導入についてはどう考えてる?
安田:生活保護でいうと、現場で働いている役所の方々は必要な人に配ろうと頑張っていると思う。とはいえ、「必要な人を選ぶ」という発想だと、本当に困っている人にお金が届かないとか、困っていないのに嘘をついて受給しようとする人が出るとかの問題が生じてくる。一旦ユニバーサルに配ってしまうことで、そういった労力・時間から解放される人が出てきて、その力を社会保障に充てることができれば建設的になのではないか。
(『ABEMAヒルズ』より)
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