「やっぱり無理だな、こりゃ」レジェンド佐藤康光九段、若手の研究見て決断「角換わり業界には参入できない」と苦笑い/将棋・ABEMAトーナメント
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 「緻密流」「丸太」など、その指し回しが様々な言葉で表現されるレジェンド棋士にも、手が出せない領域があるようだ。将棋界の早指し団体戦「ABEMAトーナメント2023」予選Dリーグ第2試合、チーム康光とチーム糸谷の対戦が6月24日に放送された。佐藤康光九段(53)は高見泰地七段(29)、大橋貴洸七段(30)という後輩2人を引き連れて参戦。第1試合ではエントリーチームにスコア5-1で快勝すると、第2試合ではフルセットの末にスコア4-5で敗れたものの予選突破を決めた。第2試合の第5局では大活躍の大橋七段の将棋を見守ったが、この最中に「角換わり業界には参入できない」と、プロの間でも研究がどんどん進む角換わりに“投了”する場面があった。

【映像】研究が進む角換わりについて語る佐藤康光九段

 角換わりは、相居飛車の戦いの中で、序盤にお互いの角を交換してから戦う戦型の一つ。七冠保持者である藤井聡太竜王・名人(王位、叡王、棋王、王将、棋聖、20)も非常に多く用いる戦型で、居飛車党の棋士の多くも研究を深める「エース戦法」だ。その分、無数に見える分岐にも、それぞれ研究手が用意されていることも多く、進行によっては序盤・中盤まで同一で、ほぼ終盤に入ろうというところまで進んでから「いざ勝負!」という対局も珍しくない。

 居飛車、振り飛車どちらも指しこなし、独創的な指し手が魅力の佐藤九段だが「やっぱり無理だな、こりゃ」とつぶやいたのは、第5局のことだった。大橋七段がチーム糸谷・徳田拳士四段(25)との一局で、角換わりの出だしに。佐藤九段は「大橋さんが作戦負けしているのは、あまり見たことがない」と話していた。すると大橋七段が△9四角という一手を選択した。これには控室で見ていた高見七段が「ひえー、研究!」、佐藤九段も「これはびっくりだね」と仰天。この一手を境に形勢は大橋七段に一気に傾いた。

 衝撃的な展開を目の当たりにした佐藤九段が、一息ついたところでつぶやき始めた。「やっぱりプロの研究が深すぎる。やっぱり俺、角換わり業界に参入できないよ」と苦笑いすると「密かにどこかのタイミングで参入しようと思ったけど、やっぱり無理だな、こりゃ」と、自ら角換わり戦に持ち込んだとしても、自分の知らない“隠し玉”が大量にあるのであれば、選ぶだけ自分の不利になると痛感したようだ。

◆ABEMAトーナメント2023 第1、2回が個人戦、第3回から団体戦になり、今回が6回目の開催。ドラフト会議にリーダー棋士14人が参加し、2人ずつを指名、3人1組のチームを作る。残り1チームは指名漏れした棋士が3つに分かれたトーナメントを実施し、勝ち抜いた3人が「エントリーチーム」として参加、全15チームで行われる。予選リーグは3チームずつ5リーグに分かれ、上位2チームが本戦トーナメントに進出する。試合は全て5本先取の9本勝負で行われ、対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行われる。優勝賞金は1000万円。
ABEMA/将棋チャンネルより)

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