ある一組の夫婦のドキュメンタリー映画が劇場公開され、注目を集めている。
女優・石原さとみがナレーションを担当する映画「NO LIMIT,YOUR LIFE ノー リミット,ユア ライフ」は、27歳の時、難病・ALS(筋萎縮性側索硬化症)と診断された武藤将胤(まさたね)さんと妻・木綿子(ゆうこ)さんの6年間の軌跡を追った作品だ。
ALSは、全身の筋肉が徐々に動かせなくなる進行性の病気だ。身体が思うように動かせなくても、特殊なメガネを使い、目で音楽と映像を操るDJパフォーマンスを行う武藤さん。DJ以外にも、誰もが着やすく、着せやすい服を開発するなど、最新テクノロジーを駆使して、ALS患者の未来を明るくするアイディアを次々と実現してきた。病気を知った上で結婚を決めた妻・木綿子さんは、毎日試行錯誤しながら、そんな武藤さんを支えている。
監督を務めたのは「報道ステーション」のディレクター時代から、武藤さん夫婦を取材し続ける毛利哲也氏だ。監督初作品となった今作について、反響をどう受け止めているのか。
「将胤さんと木綿子さんの困難に立ち向かっていく姿勢を見て『勇気や生きる力をいただいた』といったご感想がたくさん寄せられています。そもそも、僕が難病のALSを知ったのは、報道ステーション在籍時の10年前でした。当時、愛知県の女性の患者さんを取材する機会があり、彼女は延命を選択せず亡くなりましたが、僕は『ALSが治る日まで報道し続けます』と誓ったんです」(以下、毛利哲也監督)
武藤さん夫妻と出会ったのは2017年。毛利監督がALSの治療法に関する取材を続けていたところ、ある新聞記事が目にとまった。
ALSと闘いながら自分らしく活動する武藤さんは「ALSが治る未来はきっとくる」と強く信じている。毛利監督は、その夢を一緒に叶えていきたいと思ったという。
「武藤さんはALSという病気だからこそ、使命を感じて患者のために動いています。僕が彼に惚れ込んだのは、人間としての魅力です。信念の強さ、成功するまで諦めない気持ちが見ていて、カッコいいんです。喧嘩もしながらサポートする木綿子さんとの関係性も印象的でした。最初、僕がカメラを入れたときは、お二人の素の姿は3分の1くらいでしたが、人間味あふれるお二人を見ながら、二人三脚で自然と撮影を続けさせてもらいました」
主題歌にも強い思い入れがあるという。
「主題歌『FLY』は武藤さんが作詞して、作曲は親交のあるロックバンド・andropの内澤崇仁さんが作曲しました。武藤さん自身も参加した、東京パラリンピック2020の開会式で共演し、パフォーマンスをした多様な仲間たちとの経験を胸に、自由に世界へ羽ばたいてほしいという願いが込められています。ミュージックビデオでは、開会式でパフォーマンス『片翼の小さな飛行機』を披露した和合由依さんや、式を演出したウォーリー木下さんたちと再びチームを組みました。初めてこの曲を聴いたとき、力強い詞とメロディーに私も心動かされて『映画化できたら絶対この曲を主題歌にしよう』と温めていました」
公開に先立って、世界初の“分身ロボットを使った試写会”も行われた。
「試写会は『分身ロボットカフェ』で行われました。カフェを立ち上げたのは『OriHime』というロボットを開発した吉藤オリィさんです。実は武藤さんもこのプロジェクトに参加していました。試写会に参加したのはALSなどの病気や障害などを抱えて外出が難しい方たちで、パイロットと呼ばれています。彼らは普段ここで注文を聞いたり、コーヒーを入れたり、飲み物を運んだりして働いているんです」
インターネットを通じて遠隔操作できる『OriHime』は、内臓カメラやマイクなどで周囲の人とコミュニケーションが可能だ。
「試写会当日は病気で映画館になかなか行けない人たちから『武藤さんと話せてうれしかった』『まさか映画を観られるなんて』など、たくさんの感想を直接聞くことができてありがたかったです、ALSの患者は全国に約1万人いらっしゃる。今この瞬間も、病気と闘っていることを知ってほしい。人生で心配なこと、不安なこと、悩まれたりいろいろなことがあると思いますが、そういうときに背中を押してくれる作品になっています。1人でも多くの方に見ていただけたらうれしいです。武藤さんたちが願う『ALSが治る未来』は必ず来ると、私も信じています」
映画「NO LIMIT,YOUR LIFE ノー リミット,ユア ライフ」現在、東京のT・ジョイ PRINCE 品川、大阪のT・ジョイ梅田で公開中。7月からは東京の丸の内TOEI、8月には愛知のミッドランドスクエアシネマで公開予定だ。(「ABEMA Morning」より)
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