幼いころから宇宙に興味を持ち、宇宙に関する仕事をしたいと語り合っていた兄弟が、月面で作物を栽培できる土の開発に成功し、その一歩を踏み出した。
月の砂を用いて、月面で農業をしようという壮大なプロジェクトを進めているのが、ベンチャー企業「TOWING」の西田宏平社長。彼が主に研究開発しているのは、農業に必須な「土」だ。
「土壌の微生物の培養技術を活用して、月面基地の中で持続可能な食料生産を実現するというプロジェクトをしている」(TOWING・西田宏平社長)
環境に配慮した土壌づくりへの取り組みは容易いことではなく、化学肥料から有機肥料へ切り替えた場合、土づくりには5年もかかるという。しかし、TOWINGが微生物の培養技術によって開発した土壌改良資材を使うと、たった1カ月で農業に適した土壌が作れると話す。
「植物の炭や、植物以外でも地域で出てくる未利用なバイオマスを炭にして、そこに微生物を培養する。その微生物の餌になる有機肥料を混ぜ合わせて改良資材を作っている」(西田宏平さん)
TOWINGが生み出したこの人工土壌、その名も「宙炭(そらたん)」。
「僕たちの最終的なゴールは宇宙のプロジェクト。2040年代に月面基地を作る計画が動いており、約1000人が住むようだ。地球から食料を送るとどうしてもコストが高くなるので、現地で食料を作ろうという計画が動いている」(西田宏平さん)
月面に畑を作り自給自足を目指すとはいえ、宇宙で手に入るのは農地に向かないサラサラの月の砂と、人間の排泄物や食品残渣などの有機物。しかし、TOWINGの技術により、これらを使って植物が育つ人工土壌を作り出すことができた。
「月の砂で上手く粒を作り、微生物を培養し食料生産するというプロジェクトを大林組と実施して成功させた。世界で初めて、有機肥料だけで食料を生産できた」(西田宏平さん)
月の砂とほぼ同じ「模擬砂」から作った土壌で小松菜を育てることに成功し、月面農業への可能性が開けた西田さん。そもそも、西田さんが宇宙に興味を持ったのはなぜなのか。
「漫画の『宇宙兄弟』がすごく大好きで、そのときから宇宙に関わる仕事がしたいなと思って」
中学時代に読んだ『宇宙兄弟』に触発され、その頃から宇宙に関わる仕事がしたいと考えていたという。後に、名古屋大学地球惑星科学科に進学し、宇宙農業につながる技術と出会った。
「地球でも宇宙でも使えるという非常に素晴らしい技術だったので、それを何とかプロジェクトにしたいと会社を作った」(西田宏平さん)
宇宙兄弟のごとく、西田さんの弟、亮也さんも研究開発の責任者としてこのプロジェクトに携わっている。兄よりも早い時期から宇宙に関心を持っていたそうだ。
「出身地が滋賀県の信楽町という、山奥の星空がすごく綺麗な所だった。夜な夜な星を眺めながら過ごすような幼少期を過ごしていて、宇宙に興味を持っていた」(TOWING・西田亮也さん)
星空が好きな少年の心に刺さったのが、兄と同じく『宇宙兄弟』だったという。
「僕たちは宇宙飛行士ではないが、個人的には最終的に“宇宙農家”になりたいと思っている。宇宙で働く人たちの食料供給や生活を支えていけるようなシステムを、自分たちでも作っていきたい」(西田亮也さん)
宇宙農家になるための一歩となった、小松菜栽培の成功。幼き日の夢を叶えるべく、兄弟のたゆまぬ努力は今後も続く。
「実際に宇宙で使うとなると、いかに問題が起きないかが重要。実際に自分たちが地球で検証したものが、宇宙でどういう挙動を示すかは本当にやってみないと分からないことが多々ある。まだ階段の一歩目二歩目という感覚だ」(西田亮也さん)
「実際に月面基地が作られるのが2040年代という風に言われていて、僕たちもそれまでには美味しい野菜を提供できるようにしたい。恐らく2035年頃には試験栽培を実施して、2040年頃にはある程度ものにしていかないといけないと思っているので、そこをしっかりクリアできるように研究開発を進めていきたい」(西田宏平さん)
(『ABEMAヒルズ』より)
■Pick Up
・「ABEMA NEWSチャンネル」がアジアで評価された理由
・ネットニュース界で話題「ABEMA NEWSチャンネル」番組制作の裏側