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 “シンガーソングライター”甲田まひるのファーストアルバム『22』は、美味しい幕の内弁当を食べているような、どこを取っても満足感のある作品となった。

 肩書に二重引用符を付けて強調したのには訳がある。アルバムタイトルと同じ、わずか22年の人生の間で、彼女はさまざまな役割を担ってきた。Instagramをきっかけに、小学生ながらにして”ファッショニスタ”として注目(のちにモデルも経験)。その後は“ジャズピアニスト”として、17歳で『PLANKTON』をリリース。18歳を迎えると、“俳優”として映画デビューも果たす。

 今回のアルバムの中には、多種多様な音楽ジャンルと、聴き応えのある楽曲群が並ぶ。豊かな才能を備えていることはもちろん、普段の地道な努力、これらが両立していないと成り立たないわけだが、創作意欲の源泉はどこにあるのか。直接本人と話し、探っていく。

とにかく「かっこいい曲」を作った

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ーーこれまでのタイアップも含めた全13曲。ポップス、R&B、ラップなど「シンガーソングライター」という肩書には収まらない、バラエティにとんだアルバムになった印象です。

甲田:これまで、シングルやEPしかリリースしてなかったので、まとめて13曲となると、聴いたみなさんがどんな感想を持つのか、楽しみなところがありますね。各曲、プロデューサーの方もバラバラで、他のアルバム曲を聴いているわけではなかったので、私だけが“設計図”を持っている感じで。だからこそ、全体をどのくらいポップに落とし込むかとか、通して聴いて統一感があるようにとか、曲順も相当考えました。作るときは、そんなことは気にせず、とりあえず「かっこいい曲を!」っていう気持ちだったんですが。

ーー曲を重要視するというのは、やはり幅広い人に聴いてほしいという思いからなんですかね。

甲田:そうですね。色々葛藤しながらも、結局は自分がかっこいいと思うサウンドメイクで、JPOP色が強い曲だったらよりメロディで心をつかめるように意識してます。

 ーーとは言いつつも、歌詞も印象的で。抽象的に書く人もいるなか、自分のことをあけすけにしているじゃないですか。「2001いわゆるZの現代人 間違っても押し付けない絶対美 着いて来れる?怒涛の展開に mapiなら行ってる良い線最近」(「Ame Ame Za Za」)とか。

甲田:たまに「こんなこと書くんだ」みたいに言われたりするんですけど、自分では「それが普通じゃないの?」って(笑)。詞の完成にはすごく時間がかかるタイプで、ビートを作って、ピアノを入れて、その時点では歌詞は仮で入れていくんですが、書き直してもなかなかしっくりこなくて、結局最初のパターンがハマったり。ただ、ラップだけは気負わずに早く書けて、特にリアルな自分が出てると思います。

ーーアルバムラストの「M」には、「鏡の中にたたずむ私 誰かのものになりたくない i wanna be me それでも気になってるなら 探してmy name」というフレーズがあって、自身のアティチュードみたいなものが強く表されているなと感じます。

甲田:この曲に関しては、すらっと歌詞が出てきましたね。今回、内向きな歌詞が多いんですが、弱いままの私で終わるよりは、意思表明して終わりたかったっていうのはありました。「自分にはこういう面があるんだぞ!」っていう。

これまで歌にあまり自信がなかった

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ーー「One More Time」、「Ame Ame Za Za」、「Take my hands ~君となら~ 」ではラップもしていますが、ヒップホップとの出会いはいつごろだったんですか?

甲田:中学3年生ぐらいのときでしたね。当時ロバート・グラスパーとか、J・ディラといった「ジャズとヒップホップの融合」みたいな音楽に憧れがあったんです。そんな中、著名なジャズピアニストの方が、Twitterで「ATCQ(ア・トライブ・コールド・クエスト)の新譜やばい」みたいなことをつぶやいていて。誰なんだろうと思って聴いてみたら、ビートの上にラップが乗っていて、「ヤバい、カッコいい!」って衝撃を受けたんですよね。それをきっかけに、90年代ヒップホップを深掘りするようになって。ローリン・ヒルを聴いた時に、女性ボーカルが乗ったらこんなにかっこいいんだと知って、「私もやってみたい!」と。

ーーそもそも、歌う側に行こうとは考えていなかったんですか。

甲田:憧れはあったんですけど、自分自身、歌が上手いと思ったことがなくて、半ば諦めかけてたんですよね。その分、ピアノを頑張っていて、ジャズのライブで伴奏してたりしたんですけど、やっぱりボーカルの人が華やかに映って。ちょうどその時、ジャズのアルバムを出そうかっていう話があったので、一度それはそれでやりきって、そこから3年かけてシンガーになる準備をしていました。

ーー先にジャズのアルバムを出したことで、良い効果もあったんじゃないですか。

甲田:今回のアルバム1曲目の「22」でご一緒した駿さん(石若駿。常田大希とは東京芸術大学時代の同級生で、KingGnuの前身バンドSrv.Vinciの初代ドラマー)に、ジャズのアルバムを出すことが決まったときかなり相談したんですよね。「私、自信がないです」って。そしたら、駿さんも高校生のときに録音したものをリリースしていて「当時の音から気づくこともあるから、記録をしておくだけでも違うよ」って言われて。そこから、何でも音は残していこうというマインドになりました。

ーーそういった意味では、いろんなジャンルの曲が詰め込まれている理由もわかります。

甲田:次々といろんなことに挑戦していると、周りから「何がやりたいの?」って思われることもあるんですけど、自分の中では全てつじつまが合っているつもりです。いまはどんなアーティストかわからないかもしれないけど、音源をこれから出していって、振り返ったとき、「ああ、こんなことを表現したかったんだな」って理解されるのかなと。

「追い込み」することが快感に?

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ーージャズピアニストとして活動していた人が、いま歌、ラップ、ダンスをやっていて、前例のない存在になっていきそうですね。

甲田:私も誰を参考にすればいいかわからないです(笑)。もちろんダンスボーカルでいえば、安室奈美恵さんとかアリアナ・グランデさんとかロールモデルはいるんですけど。何か、自分と戦ってる感じが常にしていますね。

ーー進みながら、悩みながらという。

甲田:せめて自分だけは信じないと、歩みが止まっちゃう気がするので、「私は誰も進んでこなかった道にいるんだ」って開き直ってますね。曲づくり以外にも、MVの企画や衣装とかも関わっていて、「ここは任せようかな」って何回か考えたこともあるんですけど、それで納得したケースはほぼなくて。大変にはなっちゃいますけど、「自分が意見を出してよかったな」って毎回思うから、任せきりにはしません。昔、ピアノのコンクールに出ていたときも、毎回練習が辛かったんですが、最後の最後に報われるという経験があったから続けられて。追い込むことに、どこか快感を覚えているのかも(笑)。

ーーやることが多い中で、どこかのパートがスムーズに進まなかったりしたらパンクしませんか?

甲田:そうなんですよね。計画性が本当になくて(笑)。今回、とにかく曲の量が多かったので歌詞が下りてこないことが多くて。レコーディング当日の電車移動中でも書けない時はブースに入ってから急いで仕上げたり……次はもっと余裕を持ってやりたいですね。

ーーとはいいつつも、しっかり形にしていく「実現力」はすごいなと思います。

甲田:一番は周りの人との出会いに恵まれてるのが大きいですね。あと、これは自分の特徴なのかもしれませんけど、やりたいことが明確にできたら、周囲の雑音に惑わされずに、突き進めるんです。「歌いたいな」「ラップしたいな」「フェスに出たいな」とか、目標が立ったらそれに向かっていくのみ。もし失敗したとしても、それまでに費やしてきた努力の時間は、悪い方向にはいかないだろうなって思っていますし。多分、今後もその繰り返しなのかなと思ってます。

ーーだからこそ、次にどんなことを見せてくれるのか、興味が湧きます。

甲田:今は「これがしたい!」というよりは、歌やラップがまだ経験が浅くて「楽器を1から始めてみた」っていう状態なので、もっと技量を付けていきたいなと。ライブとか、本番に普段以上の力が出る方っていると思うんですけど、私はやってきたことが素直に出るタイプなので、“本番でごまかしがきく”ぐらい、実力をつけていきたいですね。

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取材・文:東田俊介
写真・武石早代

甲田まひる 
ジャズ・ヒップホップをバックボーンとして、ジャンルに束縛されていない自由なサウンドを 放つシンガーソングライターで、全楽曲の作曲・作詞を自ら手がけている。2021年11月5日 シンガーソングライターとしてデビュー作品となる1st Digital EP『California』をワーナーミュージック・ジャパンより発表。そして2023年1月20日(金)に、ドラマ「今夜すきやきだよ」 のオープニングテーマの4th Digital Single「CHERRY PIE」をリリース。その他にも、 俳優、タレント、ファッションアイコンとして多岐にわたる活動を行っている。

1stアルバム 『22』(7月12日リリース)
収録曲
1. Ignition
2. ターゲット
3. 22
4. Toyhouse
5. CHERRY PIE
6. One More Time
7. Ame Ame Za Za
8. Snowdome
9. Take my hands〜君となら〜
10. in the air
11. California
12. Sugar=High
13. M

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