学校の「日焼け止め禁止」論争 柴田阿弥「先生がパーカーにサンバイザーで何なん?と」 “ブラック校則”を避ける・変えるには
【映像】「靴下の色まで制限」不評な校則の数々

 もうすぐ夏本番。街ではあちこちで紫外線対策をする人の姿が見られる中、毎年のように話題になるのが、学校での「日焼け止め禁止」の校則だ。

【映像】「靴下の色まで制限」不評な校則の数々

 Twitterでは「肌が弱いから日焼け止めを許可してほしい…」「日差しが健康を害すこともあるのに、なぜ?」「こういう変な校則は無くなってくれ」との声があがっている。プールの水が汚れるなどの理由もあるようだが、「納得いかない」という声も少なくない。

 校則はたびたび物議を醸してきた。例えば化粧やピアス、ルーズソックスに靴下の色、眉そりなど、「本当に必要なのか」という校則は多く、時に“ブラック校則”と言われてしまうことも。

 反発の声がある一方で、「なんでもかんでもダメな校則だというのは違う」「学校は我慢を学ぶ場所でもあるでしょ」という声もあがっている。学校のルールはどこまで必要なのか。『ABEMA Prime』では校則のあり方を考えた。

■日焼け止め禁止の弊害

 実は、プールの授業で日焼け止めの使用を許可していない学校は多い。日本学校保健会「学校における水泳プールの保健衛生管理」(平成28年度改訂)によると、小学校では29.9%、中学校では31.6%、高校では48.5%が屋外プールにおける日焼け止めの使用を許可していない。

 5年前に教員を辞めた元中学校の音楽教諭のすぎやま氏は「だんだん減ってきているとはいえ、日焼け止め禁止という中学校はけっこうあった。ベテラン教師の中には『日焼けしている生徒は健康的でいい』という考えで時間が止まっている人もいた」と説明した。

 日焼け止めクリームの使用を許可することで懸念されるのは、「プールが汚れる」「クリームを塗る時間の確保」「化粧品との区別」など。これに対しジャーナリストの堀潤氏は「汚れの定義をはっきりさせた方がいい」と指摘する。

「薬剤師会のホームページを確認したが、『赤ちゃんが誤飲で日焼け止めクリーム・オイルを飲んだとしても、中毒の心配はほとんどない。水か牛乳を飲ませて様子を見てください』とある。口に入ってもその程度であれば問題ないという論も立つのではないか。校則は科学的エビデンスに基づいて作られてないんだと実感した」

 日焼け止めの「必要性」について日本小児皮膚科学会は「紫外線を浴びすぎると、しみ・しわなど皮膚老化を早める。皮膚がん・目の病気をおこしやすくなる」、日本学校保健会は「『日焼けしやすい』『光線過敏』の児童生徒には日焼け止めクリームの使用を。耐水性クリームなら水質は汚染されない」としている。

 さらに、神内聡弁護士は「校則での日焼け止め禁止は違法の可能性も高い。(日焼けは)健康被害の可能性があり、制限することは社会通念上、不合理」との見方を示している。

 フリーアナウンサーの柴田阿弥は「日焼けの影響は人それぞれで、火傷みたいにただれてしまう子もいるし、沖縄とか地域によって日差しは全然違う。それでも日焼け止めがダメなら、屋根を作るとか、上着を着たり帽子をかぶったりしてもいいという代替案を出してほしい。私は女子高で、日焼け止めは塗ってもよかったが、体育教師はパーカーにサンバイザーを着けていて、“自分たちだけ何なん?”と。日焼け止めを塗って非行に走る人は少ないだろうし、価格が安いものもあるので、健康優先で考えていいのではないか」と提案した。

■校則の事前開示や、変えていける環境が必要?

 近畿大学情報学研究所所長の夏野剛氏は「生徒と教師の議論が全く行われないのは間違いだ」との考えを示す。「教育で大事なのは、自分で考える、理由を考えること。インターナショナルスクールなどでは『なぜこういう校則があるのか?』と言う生徒の声がきっかけで、『こういう危険性があるからだ』『じゃあこうすればいいのでは』と議論が起こり、ルールが変わっていく。でも、日本の学校では事例が少ない」。

 教師自身も校則に違和感を抱くことはあるのだろうか。すぎやま氏は「僕は職員会議で何度も提案してきた。例えば、荷物を毎日全て持ち帰らないといけないという校則に対して『教科書を持って帰っても勉強しない子はしないし、勉強する子は教科書でしない』と訴えた。しかし、『いや、持ち帰らせないと勉強しなくなるからダメだ』と。『よく考えてくださいしないですよね?』『そんなことない』という言い合いになり、他の先生も下を向いていた。結局、先生ごとの指導になったが、校則は変わらなかった」と述べた。

 堀氏は「僕が通っていた中学校では、生徒会が立案し、評議会で議論すれば校則を変えられた。その仕組みで制服をやめた経験がある」と振り返る。

「一年ぐらいみんなで議論して、制服は廃止になった。『岩崎中学校は自由服になります』と当時の神奈川新聞に出て誇らしかったが、数年後には制服が復活していた。どうしたの?と聞くと、次の代の子たちが『やっぱり制服があった方がいい』と。こうして民主主義を学べたのはよかったと思う」

 さらに、夏野氏は「もう1つ大きな問題がある」と指摘する。「校則を事前開示していないことだ。文科省は全ての高校、あるいは公立の学校に対して校則をウェブ上で開示させるべき。そうすると炎上するものがいっぱい出てくるだろう。その開示義務があってこそ生徒も学校を選べるし、生徒の保護になる」

 すぎやま氏は「2021年4月、東京都教育委員会から都内高校へ不合理な校則を見直すよう通知も出された。もちろんまだ一部残っているところもあるが、生徒の関わりで校則を見直したというのがニュースになるぐらいの温度感だ」と述べた。

 校則に縛られたくない思いで高校を選んだというタレントのryuchellは「その学校は頭が良かったから相当勉強した。校則が超ゆるくて、金髪にしても問題なかったけど、一つだけ禁止されていたのがタトゥー。結果、社会はこんなにタトゥーに偏見があるということが理解できたし、その決まりは納得できる。ただ、入学前にちゃんと提示して、ルールをみんなが知る権利があった方がいい。さらに生徒たちにも校則を変える権利があるとなれば学校の評判も上がるので、時代に合っていると思う」と投げかけた。
(『ABEMA Prime』より)

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