「私はアメリカにいる間、何度も日本の漫画やアニメのことを本当に誇らしく感じた。それが今、日本で始まるインボイス制度によって破壊されようとしている」
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先月22日、涙ながらにこう訴えた声優・女優の岡本麻弥氏。『機動戦士Zガンダム』のエマ役などで知られる声優だ。
相次いで反発が起こっているインボイス制度。これまで売上高が1000万円以下の事業者は、消費税が免除される免税事業者とされていた。この制度が始まると、課税事業者に転換するか、免税事業者にとどまるかの選択が必要になる。
課税事業者を選んだ場合は新たに消費税を納めることになり、免税事業者を選んだ場合は、取引先がこれまで以上に消費税を負担することになる。そのため、免税事業者の報酬が引き下げられたり、契約が打ち切られたりする懸念、さらには廃業の可能性もある。
会見で「どちらを選んでも地獄しか待っていない」と訴えた岡本氏。こうした状況にTwitterでも「独立したけど、真剣に転職を考えるしかない」「税収が過去最高で70兆円超えなんでしょ。これ以上取る必要ある?」といった声があがっている。
アニメ・声優業界では、具体的にどのようなことが懸念されているのか。ニュース番組「ABEMA Prime」に出演した岡本氏は「実際、私たちは今、課税事業者になるのか、免税事業者のままでいるのか選択を迫られている。他の業種もそうだが、消費税の納税義務が発生することを知らぬまま課税事業者に登録している人もたくさんいる。制度をちゃんと知ったら誰一人賛成しないと私は思っている」と話す。
また、会見で流した涙について「声優業界だけでなく、同じことがたくさんの業種で起こる。日本中の国民みんなに関わることだから、本当は報道で知っていただきたい。それなのに、全然報道がなされず、周知が進まない。すごく悔しさを感じている」とコメント。
「2023年のフリーランス白書を見ると、フリーランスの年収のボリュームゾーンは、200〜400万円が47%だ。人が喜んでくれるからと、ささやかな生業としてやっている人たちもたくさんいる。声優でいえば、6年後にデビューする子が、これからすごく儲かるか、一銭も稼げないのか分からない状態で、赤字でも消費税を取られる。業界はもう“焼け野原”だ。もっと政治家やいろいろな有識者の方が話し合ってほしいと思う。まずは周知してみんなで話し合って、報道がもっとちゃんとインボイス制度を伝えてほしいと思う」
ネット掲示板「2ちゃんねる」創設者のひろゆき氏は「僕はインボイス制度自体には賛成だ」という。
「例えば青果店さんがある。年間の売り上げが1100万円だったとする。家賃とか、野菜の仕入れとかで900万円ぐらい経費がかかった。そうすると手元に200万円残る。それから、売り上げが1100万円なので、消費税の110万円を抜いて、手元には90万円しか残らない。これが普通の事業だ。僕は実際にエンジニアとして、免税事業者の会社を持っている。僕が適当にプログラムを書いて900万円の売り上げになったとしたら、1000万円を超えていないので、消費税を払わなくていい。免税事業者をうまく使っている金持ちは超得する。低所得者に対する支援は必要だと思うが、僕みたいな金持ちが消費税を払わないで懐に入れるような仕組みはよくないと思う」
その上で、ひろゆき氏は「結局、収入が少ない人は廃業を考えるのは変わらない問題だ。インボイスがない状態で、声優で所得が年間900万円あったとする。その人が消費税を払うことによって、810万円になる。なぜ、これでアニメ業界が潰れるのかが分からない」と投げかけた。
岡本氏が「声優は年間所得300万円以下がほとんどだ。レッスンに行ったり、本を読んだりするから仕入れもある。50%ぐらいの経費はかかっている」と答えると、ひろゆき氏は「それなら低収入の人の補助金が必要という話だ。800〜900万円もらって、でも消費税は自分のポッケに入れるのは、別の仕事に比べて不公平だと思う。だから僕は課税するべきだと思う」と話す。
元国税職員でフリーライターの小林義崇氏は「要は8%、10%をちゃんと明記してくれることにメリットがある。企業同士の取引においても明確になる。一方で取引に対して、各事業者が申告書を作ったりとか、納税をしたりといった負担が増える。消費税はすごく滞納が多い。普通の報酬だったら、源泉徴収されて支払われるから、確定申告をすれば還付金をもらえるが、消費税は一旦預かったものを年に1回まとめて払う形だ。その時にお金がなかったら滞納になる。そうすると税務署は徴収という形で動かざるを得ないし、さらに滞納した人には延滞税の追徴税がかかってくる。そういう影響が考えられる」と話す。
低所得者からすると、優遇がなくなるだけでも打撃が大きい。れいわ新選組のたがや亮衆議院議員は「そもそも税の三原則は、簡素・中立・公平だ」と指摘する。
「インボイス制度は、公平の部分に非常に合っていない。平等にはなるかもしれないが、平等と公平は全く違う。お金持ちもそうじゃない人もみんな平等に徴収されるから、インボイス制度は公平性を失っていると私は考えている。単なる弱いものいじめの増税だ」
免税事業者の約4割が課税事業者に転換すると仮定した場合、2480億円の税収増になる見込みだ。
ひろゆき氏は「仕入れの少ない仕事は免税されると、得をする。ただ、仕入れのある仕事は手元に残るお金が少ない。基本的には、僕は全員公平にするべきだと思う」とした上で「同じように働くなら、同じようにするべきだ。『低収入の人は困るよね』となれば、そういう人を助ける施策を話せばいいのに、なぜ『クリエイターは助けよう』みたいな話でお茶を濁すのかが分からない」と述べる。
インボイス制度は今年10月から始まる。たがや氏は「夢を持って今仕事をされている人は、降って湧いたようにインボイス制度が導入される。一旦立ち止まって、1年でもいいから延期をするべきだ」と主張した。(「ABEMA Prime」より)
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