「けんかを止めようとした」クルド人に聞いた埼玉・川口“100人”トラブルの真実
【映像】クルド人当事者に聞く"川口100人トラブル”の現場
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 大勢の外国人の姿、何台もの警察車両……Twitterに投稿された“ある映像”に注目が集まっている。撮影された場所は、埼玉県川口市内の病院前だ。

【映像】騒動当日の様子(※視聴者提供)

 集まっているのは、トルコ国籍と見られるおよそ100人。ガラスが割れた車もあり、機動隊が出動し、あたりは騒然としている。

【目撃者の声】
「お互いが輪をかけてけんかになってしまったと言っていた」
「やっぱり入院している方も、あの騒ぎでみんな寝るどころではなくて、なんかとんでもないことが起きてしまったのかと思って、もう怖かった」

 居合わせた人によると、病院前に集まっていたのはトルコ系住民と、クルド系住民だったという。クルド人は、トルコやシリア、イランなどの国境地帯に住む民族。国を持たない世界最大の民族で、約3000万人いると見られている。

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 一方で、差別や迫害を受けて海外へ逃れるクルド人も多い。日本クルド文化協会によると、日本には約2000人のクルド人が生活をしており、その多くが川口市、蕨市に集中しているという。

 しかし、故郷を離れて移り住んだクルド人に対し、ネットでは「コンビニでたむろし、メンチ切ってくる」「車で危険運転をする」「気味が悪い、怖い人たち」といった声も一部であがっている。

 川口の騒動をきっかけに、以前より強まるネットの論調。ニュース番組「ABEMA Prime」では、実際にクルド人が暮らす地域に行ってみた。

 街には彼らが開いた飲食店や食材店が点在する。ケバブ店「HAPPY KEBAB蕨店」ではクルド人のほか、トルコ人も一緒に働いているという。

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 店のオーナー、タシ・テイフィキさんはトルコ出身のクルド人で、2004年に来日。実は事件当日、彼の元に知人からある連絡があったという。

「資材置き場で殴られたから、そっちに早く行ってと連絡が来た」

 その後、急いで病院に向かったタシさん。ネット上では、まるで100人が騒ぎを起こしたかのように伝えられているが、タシさんは「みんなが自分の知り合いを呼んで、けんかを止めようとした。だが、ニュースで『ここでけんかになっている』というイメージになってしまった」と明かす。

 事の発端は、実は病院におけるトラブルではない。それより前に別の場所で起こっていた。

 警察によると、川口市内で車に乗っていた男性2人が複数台の車に追いかけられ、停車したところ、刃物で切られ1人が重傷を負ったという。被害者、けがを負った加害者の仲間と見られる1人も同じ病院に搬送され、双方の関係者らが病院に押し寄せ、小競り合いが起きたとしている。この騒動により、暴行や公務執行妨害容疑で2人の男が逮捕された。

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 今回の騒動が起こった背景について、タシさんは「クルド人ならではの慣習も関係している」と話す。

「クルド人はみんなで集まって話をすることがすごく好き。中東の文化でもある。でも、集まる度に『けんかしている』とすぐに写真を撮って、何もないのにSNSに載せる人がいる。普段から声も大きいから、喋っている時に暴れているように思われる」

 そもそもトラブルの原因はどのようなことだったのか。

「若い人たちの間でトラブルがあって、けんかになった。刃物は大きいものではないと聞いた。トルコ人とクルド人のけんかというよりも、普通に若者同士のけんかだ。テレビでは、クルド人とトルコ人の“戦争”のように報道されていて、全然違う。みんな住んでいるところも近く、家族関係が強い。けんかを止めたいと思った人たちが、病院に集まった」

 これに、ネット掲示板「2ちゃんねる」創設者のひろゆき氏が「刃物で1人が重傷になっている。殺人未遂は“ちょっとしたトラブル”ではないと思う」と指摘。タシさんは「ちょっとしたことではないが、建築の仕事をやっている人が多いから、仕事道具として元々そういう物を車にのせていたと聞いた」と話す。

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 トルコ出身のクルド人であるマヒルさんは「埼玉、川口のみなさん、本当に申し訳ございません。この言葉を心を込めて言いたい」と謝罪する。

「誤解があったとはいえ、切りつけられた人がいるのは“ちょっとしたこと”ではない。若者同士のあってはいけないけんかで、僕らもそう思っている。みんな家族をすごく大事にしていて、どんなことでもやってあげたい気持ちがある。ちょっとした親戚や、4世代前のおじいちゃんおばあちゃんの血の繋がりのある人など、みんなすぐ近くにいる。止められなかったのは残念だ」

 2004年に来日したマヒルさん。在留資格が認められず、5回目の難民申請を行っているという。

「当日、僕は現場にずっといたわけではない。最初のけんかが起きた後、一旦家に帰って、その後にみんなからいろいろ聞いた。病院に大勢が集まって、警察もいっぱい来た。一部の警察官は来た人を追い出す誘導をしていて、一部は道の脇に行こうとした。ただ、警察との会話の中で、運転していた人が右と左を間違えてしまった。運転手はまだ19歳だった。警察の車にバックで衝突してしまって、公務執行妨害で逮捕された。ガラスが割れた時、警察官が腕にけがをしたと聞いた。僕は決して警察が悪いと言っているわけではない。警察官の方が大勢いて、右にも左にも警察がいて、現場は混乱していた」

 「トルコ人とクルド人同士が殴り合った」という話はフェイクニュースなのか。マヒルさんは「はっきり言って、僕らは埼玉県川口市に30年以上住んでいる。埼玉県内では、今までトルコ人とクルド人のけんかは聞いたことがない」と話す。

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  先月27日、フランスでは北アフリカ系の17歳少年が交通検問中に従わなかったことから、警官に射殺された。これに対し、抗議活動が暴動に拡大し、一晩で車2000台が放火された。また、週末だけで2000人以上が拘束され、パリでは夜間外出禁止になるなど、大きな騒動に発展している。

 中にはフランスの暴動と同一視するメディアもあり、住民を心配するような内容がネットニュースに掲載されている。これをどう受け止めているのか。

 タシさんは「フランスの事件とは全く違う」と否定。マヒルさんも「国や警察、役所にどうこう言うつもりはない。どちらかというと、お願いをしてこの国に住んでいる立場だ」と述べた。

 外国人が大勢集まった時に、日本では怖がる人がいる。マヒルさんは「僕も声をかけたり、Facebookで『日本のルールはこういうもの』と僕も声をかけているが、中東のマナーのまま生きている人たちが大勢いる。コンビニの前に集まったり、全員で集まってワイワイ話すのは、普通なことだと思っている。僕としては、日本に来たら日本のルール・マナーに従ってやっていくべきだと思うが、それには時間がかかる。ただ、努力をして頑張っている人もいる」という。

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 ジャーナリストの堀潤氏は「結婚式などに行くと、本当にみんな集まってきて、知らない人たちも含めてみんなで話すカルチャーだ」と話す。

「ネット上で確認がされないまま、流布されていく状況が問題だ。今回も一部の動画が出回る前から『川口で何か異変が起きているようだ』みたいな形で、ある程度肩書を持った識者のような人が、発言を繰り返していた。マスメディアに課せられている使命として、これは全力で止めないといけないと思う」

(「ABEMA Prime」より)

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