「悪魔の薬だ」突然死のリスクも…薬で肉体強化、どこまで? “ドーピング容認大会”に波紋 現役ステロイダーに聞く
【映像】ドーピング容認の大会に賛否 人の強化はどこまで?
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 ドーピング容認の総合大会「エンハンスト・ゲームズ」の計画が話題を集めている。この大会では、通常のスポーツ競技会で禁止されている興奮剤や筋肉増強剤などの検査がなく、薬物などを使った肉体強化を容認するという。種目は陸上、水泳、体操、格闘技、重量挙げの5つの競技で構成。主催は豪州出身、ロンドン拠点の実業家が代表を務め、来年の開催を目指している。

【映像】ガリガリだった胸板が…“ステロイド剤”使用後の筋肉(画像あり)

 主催者は「人間の潜在能力を解き放つ」「すべての世界記録を消し去る」とコメントしており、大会ホームページには「ウサイン・ボルトの持つ陸上男子100mの世界記録を破る選手を見届けよう」といった言葉が。

 この大会にTwitterでは「選手の健康を危険にさらすような競技は承認できない」「薬物を使って破る世界記録に価値はない」などの声が寄せられている。

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 大会の是非について、アトランタ五輪から5大会連続でオリンピックのスポーツドクターを務めた小松裕氏は「ちょっと許せない」と話す。

「スポーツと呼ばないならいいが、スポーツとしてやるなら、これは絶対に駄目だ。ステロイド剤は、様々な疾患の治療に使われるが、やっぱりドーピングで使うと身体に悪い。筋肉増強ホルモンは男性ホルモンだから、バランスが崩れて精神的に不安定になったり、男性でも女性化乳房といって胸が大きくなったりといった現象が起きる。また、脳梗塞や心筋梗塞といった突然死のリスクもある。非常に危険だ」

 世界アンチ・ドーピングの規程、基本原理には「フェアでフリーなスポーツを守り、クリーンなスポーツに参加するアスリートの権利を守るためのもの」「競技者の健康を保護し、禁止物質、又は禁止法を使用することなく、人間の卓越性を追求する機会を促進するもの」と記載されている。

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 もし競技の中でドーピング違反をした場合、選手はどうなるのか。

「使った薬にもよるが、該当選手は基本的に2年、もしくは4年出場できない。2回、3回と繰り返すと永久に資格停止になる。状況によって、自分は知らずにうっかり飲んじゃった場合は少し軽くなる」

 小松氏は「規定が厳格でなければ公平ではなくなってしまう。スポーツはみんな同じルールで、同じ環境の下で戦うことを求められる。そうでなければ、価値を壊してしまう。『エンハンスト・ゲームズ』はドーピングによる品評会のような場所にしたらいいと思う」とコメント。

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 ステロイド使用を公言しているボディビルダーのステロイダー西村氏は「他者に迷惑をかけない限り、ドーピング自体は個人の自由だ」と話す。

「どれだけ健康被害が出ようが、本人の勝手だ。大会が開催されたら、人類の成績が塗り替えられていく分野もあると思うが、ステロイドユーザーはそもそも人間じゃない。別の生物なわけだ。遺伝子の塩基配列のそのものが組み変わっている。厳密に言うと、僕も生物学的に人間じゃない。人間は人間、化け物は化け物でやればいい」

 実際にドーピングによる健康被害はあるのだろうか。

「僕は毎晩、内臓出血で吐血する。不正脈も常にある。ひどい時は、鼻血がダラダラ流れ続ける。そもそもボディビルは、アメリカ発祥で、ショーで盛り上がった。平均寿命が40代ぐらいだと言われている。それを日本の勝手なこだわりでとやかく言われたら困る」

 血を吐いてまでやり続けることについて、ステロイダー西村氏は「僕にはもうボディビルしかない。それで死ぬなら本望だ」と語る。

「僕はスポーツだと思っていないし、医師の処方がないとステロイド剤はお勧めできない」

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 ステロイダー西村氏がこの道にのめりこんだのは、自身のコンプレックスが原因だったという。

「僕は遺伝子の病気で太れない。ガリガリで骨と皮だけで、50歩で息切れするレベルの虚弱体質だった。身長180cmあって、体重が40kgぐらい。バカにされて教科書に火をつけられたり、靴に画びょうが入っていたりといった、いじめを受けてきて、それを見返してやりたかった。『ガリガリだからこんな目に合うんだ』と思ったが、鍛えたところで遺伝子疾患のせいで全然筋肉がつかない。いろいろ調べた結果、ステロイドに行きついた。悪魔の薬だと思う」

 ステロイド剤によって、筋肉がつき、自分にも自信を持てるようになったという。

「生まれたときから十何年間も自殺願望があった。身体が変わることによって、自殺願望がなくなって、前向きに生きようと思えるようになった。要は、僕は出来そこないで欠陥品だ。欠陥品だった生物が、普通の人間よりも人間を超えた存在になれた。ステロイドはやめたら維持できずに元に戻る。とにかく、でかくなりたい。『痩せてる』と言われることが、死ぬほど悔しい。太ってると言われるとうれしい。今の身体は、まだ目標の1割くらいだ」

 モテることには「興味がない」というステロイダー西村氏。「エンハンスト・ゲームズ」の大会に出てみたいか。

「見るほうが楽しいかもしれないが、ボディビル的な分野があれば趣味程度で出てみるのもありかもしれない。ステロイダーは、自己満足の世界だ。ちなみに僕はバリバリ整形もしている。本当の目的はコンプレックスの解消だ。目標が筋肉だけで200kgなので、まだあと120kgは盛らないといけないと思っている」

(「ABEMA Prime」より)

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