「社会は処理水問題を軽く見すぎだ」放出計画に“問題ナシ”も…メディア報道が不安を煽る? 風評加害とは
【映像】風評加害って何? “処理水”めぐる論争
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 東日本大震災から12年以上経ち、処理水問題にようやく出口が見えてきた。

【映像】1年間の“放射線”影響一覧 「歯のレントゲン」も(画像あり)

 4日、IAEA(国際原子力機関)は、福島第一原発の処理水放出計画は安全基準に合致していると結論づけた。また、原子力規制委員会の最終的な安全性の検査でも設備に合格の評価が出された。

 一方で、7日、福島県生協連の吉川毅一顧問は「国際社会の理解醸成、安全性の担保が十分でない」とした上で「科学的に安全とされているものであっても、新たな風評被害の発生など地域に大きな影響が出ることが想定される」とコメント。東京電力に提出されたのは、約25万4000人分におよぶ反対署名だ。

 どのような科学的根拠が示されようと、消えない不安の声。Twitterでは、不安を煽るような報じ方をする「メディアのせい」といった指摘もある。

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 『「正しさ」の商人』(徳間書店)の著者で、処理水問題をはじめ、これまで様々な風評被害の構造を解き明かしてきた福島県在住のライター・林智裕氏は、IAEAの報告書をどう受け止めているのか。

「IAEAのグロッシ事務局長は本当に頑張って、一生懸命コミュニケーションを取ってくれた。処理水に関しては、ボートで放出口の真上まで行って査察までやってくれた。本来であれば、福島県知事や国がやるべき仕事を彼が一手にやっている。"グロッシ頼り"になる前に、日本国内でもできることがあったのではないかと思う」

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 中にはIAEAの報告書の中立性に疑問を呈す報道もある。これに、林氏は「陰謀論としか言いようがない。恥ずかしいぐらいだ」と指摘する。

「報道で“巨額の分担金”と言われているが、古いデータだ。実際、今は日本よりも中国のほうがお金を支払っている。日本の影響力が及ぶ範囲ではない。それなのに、あえて古い情報を示した上で、最新の情報や不都合な事実を示さず、嘘は言っていないけれども、本当のことも言っていない。これでミスリードをして、人々の誤解を招く誘導する。典型的な詭弁だ」

 なぜ、陰謀論のような報道が出てしまうのか。

「正確な情報を邪魔だと思う人がいる。風評問題は、事実かどうかは本質ではない。完全に利害関係だ。風評被害が続くと都合のいい勢力が確実にある。そういった方々が妨害に走っている」

 作家・ジャーナリストの佐々木俊尚氏は「風評被害は自然に起きるものではない」と話す。

「最近は“風評加害”という言葉が使われるようになってきた。2011年の福島原発事故が起きた直後に『放射線が心配だ』という人がいた。それに寄り添う必要がある一方、不安を煽る“デマゴーグ”がいる。“デマゴーグ”と“放射線が怖い人”は、分離して考えるべきだ。12年経っても“怖い”と思う人がいるのは、煽り続ける人がいるからだ。例えば、同じ福島県内というだけで、特に放射線の被害がなかったのに、福島市と郡山市が自主避難している。そういった人たちに対して、12年経っても『家賃補助をしなくてはいけない』と言っている人たちがいる。これは寄り添っているのではなく、単に風評加害をして、根拠なく恐怖を煽り続けている」

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 また“風評被害があると都合がいい人”について、林氏は「主に3つの目的に分けられる」と分析する。

「1つ目は、政治闘争だ。反原発や政権批判など、実際に被害者の声を政局に利用したい勢力がある。これらは共依存みたいな関係だ。体制の破壊や国の脆弱化が目的になっている。風評に対して『漁業者にちゃんと保証をするべき』という声があるが、そもそも国がやるのではなく、加害者にちゃんと賠償などの責任が追及されるべきだ。2点目は、悪徳商法の類だ。社会不安に便乗して、金銭や地位などを得ようとする、詐欺や売名行為がある。3つ目は自己顕示欲や逆転願望の発露、陰謀論、偏向した権威など、派閥内での保身的な踏み絵やポジショントークになっている」

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 大手メディアでも「誤った記事はある」と指摘する林氏。その上で「処理水問題は軽く見られすぎだ」と警鐘を鳴らす。

「例えば『水源に毒』という流言は非常時や災害でよく見られる。太平洋戦争中に『ハワイの日系人が水道に毒を入れた』というデマが広まった。関東大震災でも『外国人が井戸に毒を入れた』と言われた。今回の『汚染水が海洋放出される』といった言説も同様だ。今回、ALPS処理水に関する科学的なデータが出た時に『汚染された放射線物質が含まれているというのが私たちの立場だ』と主張した政党があった。文系的に悪いところが出てしまっていると思う。例えば『太陽が西から昇る』『地球は平面で地球の周りを太陽が回っている』と同じことを大真面目に言っている。汚染水はいくらやっても汚染水だと。一方で、処理水に関してファクトチェック機関、フェイクニュースの専門家がどれだけ調査しているか。これが全くと言っていいほどヒットしない。社会はこの問題を軽く見すぎている」

(「ABEMA Prime」より)

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