70代男性「黙ってりゃ死ぬからと…」 仕組債で700万円損失 銀行と証券会社に金融庁が業務改善命令
【映像】「700万円失った」インタビューに答える70代男性(音声あり)
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 リスクの低い投資を希望していたにも関わらず、勧められたのは「仕組債」。銀行内で行われたのは、証券会社の営業だった。ニュース番組『ABEMAヒルズ』では、700万円もの損失を出してしまった70代の男性を取材した。

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 「だまされた。本当に許せない」と、怒りをあらわにする男性(70代)は、「仕組債」と呼ばれる複雑な仕組みを持つ金融商品で、約700万円の損失を出してしまった。そもそもの始まりは、退職金などの資産を整理した2018年。千葉銀行の口座に2000万円が集まると、すぐに銀行の営業担当から連絡がきたという。要件は資産の運用だった。

 男性は最寄りの千葉銀行に出向き、そこで紹介されたのが千葉銀行傘下のちばぎん証券だった。男性はとにかくリスクを嫌い、「元本割れは避けたい」と伝えた。

「実際に『コーラブル債』というのを2年間やって元本割れがなかった。利子というか配当も少しだがあった」(以下、70代男性)

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 最初の投資は500万円で、2年間の運用は無事終了した。男性は担当者を信頼し、500万円を追加。日経平均などに連動するリンク債を購入した。いずれも「仕組債」と呼ばれる商品で、その後の金利や株価に左右される構造だ。

 しかし、3度目の投資では―

「ちばぎん証券の担当者が代わり、新しい商品のEB債(他社株転換可能債 ※仕組債の一種)の勧誘があった」

 3度目に勧められた投資も、株価の変動がポイントとなる仕組債だった。例えば、株価が一定の水準の範囲内であれば利回りは5%になる。しかし、株価が下落すると利率は低下する。株価が一定以上下落する「ノックイン」となった場合は株式で償還を受けるが、値下がりしているため実質的に元本割れになる。

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「よくわからないが、ちばぎん証券は今まで2年半やって損をさせられることがなかったから『まあ大丈夫だろう』という思いがあった。限度まで下がり切ってしまうと戻ってくる金額が6割ぐらいになるという話は聞いていた。実際には半年を待たずにノックインしてしまった。営業担当者の想定よりも株価の下がり方が激しかったと思う」(700万円の損失を出した70代男性)

 当時の評価価格で含み損は約700万円。ローリスクローリターンを希望していたはずが、気づけばハイリスクな投資に手を出してしまっていたのだ。

「その年の6月に打ち合わせをしたが、7月22日に父親が亡くなってしまった。打ち合わせのタイミングが父親の具合が非常に悪い状態で、打ち合わせのときも心あらずな状態だったと思う」

 そして、最初のコーラブル債を購入した当時の資料を見てみると、投資方針の欄には「積極的値上がり益重視」の言葉が記載されていた。「リスクがあっても高利回りを望む顧客である」という属性付けが始めからされていたことに気づいた。

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 最終的に金融商品の購入を決めたのは男性自身だが、金融商品取引法では、金融機関は顧客の知識や投資経験などを事前に把握したうえで、適切な商品を提供することが求められている。

 実は、ちばぎん証券は日本証券業協会から3回にわたり注意喚起を受けていた。複雑な仕組債の販売方法が問題視される中、顧客にリスクを十分に説明していなかったことや、苦情が多数寄せられていたにも関わらず適切な対応を取らなかったことなどを理由として、金融庁はちばぎん証券、千葉銀行に業務改善命令を出した。

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「“自分の失敗”ということばかりが頭の中で離れない方もいるし、生活費にまで及んでいる方もいると思う。年配者が多いから『黙ってりゃ死んで文句なんか言ってこない』と考えていると思ったら、本当に許せない話だ」

 男性は、現在、農作業などの仕事を続ける傍ら、全国銀行協会の「あっせん委員会」にトラブル解決を訴える準備を進めている。千葉銀行は「個別の事象については回答を差し控える」としたうえで、金融庁からの処分については、以下のようにコメントしている。

「斯様な事態に至ったことにつきまして、深く反省いたしますとともに、お客さまをはじめ、関係する皆様に多大なるご迷惑とご心配をおかけしましたことを、あらためて心よりお詫び申し上げます。この度の事態を厳粛に受け止め、引き続き改善・再発防止に取り組み、お客様をはじめ関係者の方々からの信頼回復に努めてまいります」

(『ABEMAヒルズ』より)

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