「タダ飯はない。カモは狙われる」プロが指摘する”仕組債“の唯一のメリットは「担当者と縁を切るシグナルになること」
【映像】「サギ」と「カモ」を分かりやすく解説した図(画像あり)
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 金融庁は、「仕組債」の販売をめぐり、千葉銀行と傘下のちばぎん証券、武蔵野銀行に業務改善命令を出した。千葉銀行から紹介されたちばぎん証券を通じ、2000万円分の「仕組債」を買った70代男性は、700万円もの損失を出してしまったという。

 仕組債やその販売会社の問題点について、日本金融教育推進協会理事で経済コラムニストの高井宏章氏に話を聞いた。

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 そもそも仕組債は、債権とデリバティブ(金融派生商品)を組み合わせたもの。通常の債券は発行した主体が倒れない限りは満額償還されるが、仕組債の中には償還額が大きく変動するものもある。個人で内容を理解するのは非常に困難とも言われ、2022年からトラブルも相次いで報道されている。金融庁の地方銀行100行への調査で「仕組債の販売あり」と答えたのは、2022年3月末時点では77行だったが、同年11月末には33行と、取り扱う銀行は減少傾向だ。

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――仕組債のリスクをどう考える?

「最も問題なのは高いリスクが潜んでいることがわかりにくいこと。債権の部分とデリバティブの部分を分離して評価しないと、どれだけのリスクを取っているかわからない。おそらく、金融のプロでもすぐに評価できる人ほとんどないと思う」

――仕組債は、どう売られてきた?

「昔からあるが、証券会社のちょっとマニアックなお客さん向けの商品だった。大手証券会社よりは、少し中堅の証券会社がセミプロに近いお客さんに売っていた。」

――トラブルになることは予期できたはずだが、なぜ売り続けていたのか?

「売る側が儲かるから。『隠れ手数料』とも言われる。実は本当のリスクは隠れていて、お客さんが取っているリスクよりも受けているリターンが低い。勝率は、可能性で言うと高い設計になっているはず。ただ、勝率が高いのと、リスク・リターンのバランスが取れているかは別。確率が低くてもものすごく損するという場合は、確率の低さ×損失額を期待値に反映しないと適正なプライシングにならない。それをやると『こんな損なものはない』となることも。一説には、仕組債の隠れ手数料は8%や10%、下手すると20%のものもあるのでは、と言われている。」

「銀行は苦しいと思う。低金利で融資は伸びず、だんだん手数料ビジネスに移っているが、投資信託は手数料が下がっていて、ネットで買う人も増えて稼ぎづらくなっている。どうやって手数料を稼ぐのか、というところで、売ってはいけないものを売ってしまったのではないか」

――担当者に仕組債を勧められたらどうしたらいいか?

「皮肉を込めて言うと、仕組債の唯一のメリットは、勧めてきた人と縁を切るシグナルになることだ。仕組債を勧める担当者は、基本的に相手をカモにしようとしている。」

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 仕組債で損失が発生した男性のケースでは、銀行の預金残高が2000万円を超えたところで、千葉銀行の行員から投資を進める声掛けが行われ、千葉銀行の支店内でちばぎん証券からの勧誘が行われたという。

――銀行と証券会社が結託のようなことをしても問題ない?

「銀証連携は、以前は絶対にダメだったが、だんだん規制が緩くなっている。高齢の世代では銀行への社会的信用が大きく、『銀行さんが言うなら大丈夫だろう』と思う人が多いため、それを利用している印象。一方、銀行としては、自らのブランドを棄損(きそん)しながら、目先の手数料を取るようなことをやっている点が問題だと思う」

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――適正な金融商品の見分け方は?

「『タダ飯はない。カモは狙われる』。金融商品はきれいにリスクとリターンが正比例する。仕組債はそのラインから外れていて「カモ」の欄に当てはまると思っている。実は、リスクが高いのにリターンが低い商品で、リターンが減っている分が隠し手数料として取られている。同様のことは投資信託でもあり、類似の投資信託で手数料の高いものと低いものがあり、高いほうを選んでしまえば、これもある種のカモになっているので注意したほうがいい。

もう1つ注意してほしいのはサギ。『元本保証です』『1年で2倍になります』など、リスクが低くてリターンが高い商品は、ない」

――では、何を選べばいいのだろうか。

「アイスに例えると『プレーンバニラ』。シンプルなものを選ぶ。レバレッジがかかっているなど、変な味がコテコテに付いているものは避ける。」

(『ABEMAヒルズ』より)

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