【スーパーフォーミュラ】第6戦(決勝・7月16日/富士スピードウェイ)
まさに鬼神の走り。ITOCHU ENEX TEAM IMPULの平川亮が、日本最高峰のレース『スーパーフォーミュラ』で、20番手スタートからの4位フィニッシュと、脅威の16台抜きを披露した。
平川は、予選では思うようにマシンをセットアップできず、スーパーフォーミュラでは自身初めてのQ1(予選1回目)落ち。しかし、そこからチームは決勝に向けてセットアップをしっかり詰めてきた。
決勝では、抜群のスタートを決めると、オープニングラップから20番手から16番手までジャンプアップ。一時的にエンジンをパワーアップさせるオーバーテイクシステム(OTS)を上手く使いつつ、ライバルチームのOTS残量を常に確認し、的確なタイミングでオーバーテイクを狙っていった。5周目では、前を走る小林可夢偉(Kids com Team KCMG)のOTS状況を確認し、相手がOTSを使えないと知るや否や、その数秒後に最終コーナーで小林のインに飛び込みオーバーテイク。その後もぐんぐん順位を上げていく。これだけオーバーテイクをしてもタイヤをきちんと残せるのが平川の凄さだ。他車が先にピットインし、新しいタイヤに交換しても、平川はその新品タイヤのチームと比肩するほどのレースペースを保っていた。その結果、ピットインを引き伸ばすことで、レース後半勝負に打って出た。
しかし、そのピットタイミングで不運が起こる。平川のチームは、前を走る山本尚貴(TCS NAKAJIMA RACING)よりもピットタイミングを遅らせ、オーバーカットを狙うはずが、平川がピットに入るタイミングで山本と野尻智紀(TEAM MUGEN)が7番手争いの大バトルを展開。通常のレースならバトルすればラップタイムは落ちるので、平川が前に出られるかと思いきや、その2台はOTSをふんだんに使いながら回ってきたため、なんと平川はその2台の後方、9番手でピットアウト。平川は、この状況に不満を漏らしながらも、新品タイヤの利を活かしながらその2台を猛然と追いかける。
まずは山本とのバトルで疲弊した野尻のマシンを軽々とオーバーテイク。さらに数周後に最小限のOTSで山本も抜き去った。途中、チームは「5位を狙うのは難しい」という見解だったが、残り2周でさらに前を行く太田格之進(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)をパス。これで5番手。さらにその周の最終コーナーでは、4番手の佐藤蓮にオーバーテイクを仕掛けるが、佐藤がOTSで応戦。佐藤が前に出たままファイナルラップに突入し、最終セクターに入ったところで、佐藤のOTS残量がゼロに。
ここまでOTSを温存しながら佐藤に張り付き続けた平川は、ファイナルラップの最終コーナーでOTSを使い、見事佐藤をオーバーテイク。4位でチェッカーフラッグを受けた。これまでのレースでも類を見ない、脅威の16台抜きが叶った瞬間だった。
この凄まじい追い上げに、「平川すごい」「16ポジションアップ!」「恐怖の平川。来月の茂木で勝つな。きっと」「この追い抜きは凄い」とファンも大盛り上がり。チャンスがあれば、それを必ずモノにする。平川の勝利に対する貪欲さとその鮮やかなテクニックが存分に見られた第6戦だった。
(ABEMA『スーパーフォーミュラ2023』/(C)JRP)