「世界水泳2023福岡」5日目が7月18日に行われ、飛込種目の3m/10mチームイベントでは、飛込各種目の金メダルを独占している中国が、貫禄の強さで優勝を果たした。男女混合で3メートルの飛板飛込、または10メートルの高飛込でソロ、もしくはシンクロで戦う団体戦だが、中国チームは各選手が圧巻の演技で断トツの金メダルを獲得した。中でも10メートルのシンクロ高飛込では、男女の選手が微妙にタイミングをずらして踏み切ることで、入水のタイミングを空中で合わせるという神演技。「あ、ずれた!?」と、一瞬ドキッとする瞬間から、きれいに「ジュポン」と音がする様子に、会場から大歓声が起きた。
「シンクロ」というからには、全ての仕草を2人がぴったり合わせ、踏み切りから入水まで、完全に同じ動きをするように思われがち。実際、ほぼ同じ体型の選手であれば男女問わず、全く同じように動いて演技するケースも多い。ただ男女混合の場合、体型が異なるケースもあり、そうなれば同じタイミングや高さで動き出してしまうと、入水時にずれが出る。
今回の中国チームは、後ろ向きに踏み切り前方向に3回転半して入水する演技を選択したが、男性選手の方が一瞬早く踏み切り、これを女性選手が追いかけた。回転のタイミングも微妙にずれており、過程を見れば失敗に見える。ところが2人とも3回転し、後は頭を水面に向けて入水の準備を整えると、この時には既に両者の姿勢はシンクロ。そのままぴったりずれることなく「ジュポン」と気持ちいい音を揃えて入水した。
一度踏み切ってしまえば、空中で落下の速度は調整できないが、踏み切りの時点で0.1秒になるかどうかの微調整によって、少しずれた2人が空中で揃うようになっていた。まさに積み重ねた練習と、緻密な計算から生まれた神演技だった。
(ABEMA『SPORTSチャンネル』)