韓国では数多くのサバイバル番組、オーディション番組が放送されている。そしてそこに参加する日本人の数も増える一方だ。ABEMAにて放送中の『QUEENDOM PUZZLE』には、元AKB48の高橋朱里ことジュリ、元NMB48の白間美瑠が出演。そしてHYBEのサバイバルプログラム『R U Next?(アーユーネクスト?)』では22名の参加者のうち、1/3にあたる7名が日本人だ。なぜ著名グループのメンバーも含め、こうした番組への参加を志す日本人が増えているのだろうか。
【映像】K-POPサバイバル番組に出演した白間美瑠、高橋朱里のステージの様子
K-POPグループに増え続ける日本人メンバー
K-POPグループに所属する日本人メンバーが増えてきたのは、2010年代の中頃から。道を切り拓いたのは、TWICEのミナ、サナ、モモだろう。過酷な練習生期間を送り、サバイバル番組『SIXTEEN』出演を経て2015年10月にTWICEとしてデビューした3人は今や世界的なスター。“同じ日本人として誇らしい”と、多くの人が口にするまでの大活躍を見せている。
その後もPENTAGONのユウト、NCTのユウタなどが続き、近年デビューしたKep1er、IVE、LE SSERAFIM、aespa、TREASURE、ENHYPENなど、多くの人気グループにも日本人メンバーが所属している。韓国の事務所で厳しい鍛錬を積み、高いパフォーマンススキルで世界中にファンを増やすK-POPアイドルへ憧れる若者の数は増える一方だ。
『QUEENDOM PUZZLE』は、既存のガールズグループメンバーと女性アーティストたちをパズルのように組み合わせ、最強のグローバルガールズグループを誕生させるという主旨の番組だ。ジュリ、白間のほか、LOVELYZ、Weeekly、Cherry Bullet、LIGHTSUM、PURPLE KISS、tripleS、WJSN(宇宙少女)など、ベテランから新人まで幅広いK-POPグループから26人が参加している。
ジュリと白間には共通点がある。IZ*ONEを輩出した、日韓合同オーディション番組『PRODUCE 48』(2018年)に出演していたのだ。2人ともファイナリスト20人まで残ったが、惜しくも脱落。番組出演を経てK-POPへの思いを強め、ジュリはその後、2019年にAKB48を卒業し、渡韓してガールズグループ・Rocket Punchの一員としてデビュー。白間は2021年にNMB48を卒業。その後は日本でソロアーティストとして2022年にデビューし、2枚のシングルをリリースした。
K-POPに憧れ、努力を重ねる白間美瑠 伝説級の青春ステージで魅了
『PRODUCE 48』を経て「ずっと歌って踊っていきたい」という思いを強めた白間。『QUEENDOM PUZZLE』の第1話では、1人ずつパフォーマンスを披露して参加者同士で格上か格下かを評価する「アップダウンバトル」にて、「K-POPアイドルグループのパフォーマンスがすごく好き。韓国でまたゼロからスタートする気持ちが合致する歌になっているのでこの曲を選びました」と、自身のソロデビュー曲「Shine Bright」を選曲してパフォーマンスした。気迫たっぷりに歌い上げたが、結果は格上5票、格下22票と厳しい結果に。他の参加者すべてに格上ボタンを押すという謙虚な一面も印象的だった。
その後もミッションが進むにつれ、K-POP楽曲のレベルの高さに苦戦しながらも、白間はひたむきに努力を重ねる。「Re-Mixバトル」バトルではダンスが得意なメンバーに囲まれ、「ついていくのが大変でした。メンバーみんなダンスが上手かったので……」とこぼしながらも、団体練習が終わっても個人練習を重ねる。そんな彼女にイェウン(CLC出身)が優しく寄り添い、SHINee「Don’t Call Me」のステージを作り上げていった。
注目すべきは「オールラウンダーバトル」でのDAY6「Time of Our Life」のステージ。原曲が持つ青春感を最大限に生かした演出で、白間はメンバーたちとともに制服姿で登場し、ハツラツとステージを駆け回る。NMB48で鍛え抜いた表情豊かなパフォーマンスを発揮して、青春の1ページをなぞるようなステージで観客を魅了した。他の参加者たちも「トータルで一番すごい」「レジェンドステージだ」と絶賛していた。
ポジティブなエネルギーで周囲を鼓舞するジュリ
そしてジュリは、『PRODUCE 48』の頃からK-POPへの並々ならぬ熱意を持ち、独学で韓国語を勉強していた。『QUEENDOM PUZZLE』では合流が遅れたRocket Punchの2人の代わりに人形を両脇に抱えて現れて笑いを取るなど、初回から存在感を発揮。明るいキャラクターで周囲を鼓舞し、他の参加者が尻込みしていたダンスバトルの場面でも、率先してステージに上がった。他の参加者からも「ジュリはすごい」とたびたび称えられ、まるで番組の太陽のようにポジティブなムードを発揮している。流暢な韓国語で、韓国語が得意ではない白間をサポートする場面も多い。
ジュリの名シーンは、「Re-Mixバトル」においてのBSS(SEVENTEEN)「Fighting」のステージ。当初ジュリ以外はこの曲を担当することに不本意なメンバーが多く、チームの空気が重かった。ところがそこで必死にチームを盛り上げたのがジュリ。積極的にアイデアを出し、本番では会社のオフィスをテーマに意外性あふれる演出も交え、ステージを縦横無尽に駆け回って観客を沸かせた。
このほか『QUEENDOM PUZZLE』にはPURPLE KISSの日本人メンバー・YUKIも出演。YUKIはTWICEに憧れて渡韓し、2021年3月に正式デビュー。類まれなラップの実力で、「オールラウンダーバトル」ではイェウンとともにCrush「Rush Hour」のラップパートを堂々と披露してチームの勝利に貢献した。
またYUKIは、25日に生放送で発表された最新のTOP7に見事ランクイン。日本人からはたった1人だけが選ばれた。YUKIは「予想もしていませんでした。私のステージを温かい目で見てくださったファンの皆さん、本当にありがとうございます。これからももっと努力して、素敵なYUKIになりたいと思います」と感激した様子でスピーチした。
K-POPサバイバル番組に出演することで得るものとは?
『QUEENDOM PUZZLE』出演を通じて、参加者のパフォーマンスの実力がさらに磨き上げられたことは確実だ。そしてそれだけでなく、他の出演者と築いた友情も、今後の彼女たちの財産となっていくことだろう。また彼女たちのSNSのフォロワー数は増え続け、コメント欄にもさまざまな言語のコメントが躍っている。IZ*ONEの活動終了後、LE SSERAFIMとして再デビューした宮脇咲良の世界的知名度の高さは言うまでもないが、帰国してAKB48、HKT48にそれぞれ戻った本田仁美、矢吹奈子(矢吹は2023年4月に卒業)も、Instagramのフォロワー数はそれぞれ150万人超を数える。世界中にファンがいることは、彼女たちの大きな強みになっているのだ。たとえ最終的にデビューグループのメンバー入りが叶わずとも、サバイバル番組への出演は、日本人参加者には得るものが多い。
同じくABEMAにて放送中の『R U Next?』は、BTSなどが所属する韓国大手芸能事務所「HYBE」からネクストガールズグループを誕生させるサバイバルプログラム。日本人参加者が22人中7人という驚きの比率であることは先述した通りだが、その7人にも高い実力を持つ参加者が多い。LE SSERAFIMのデビュー組にいたルカ、3歳から始めたダンスの実力で注目されるイロハ、『Nizi Project』に出演していたフウナなどが、熾烈な争いを繰り広げている。また22人中最年少となる2011年生まれのエナも日本人だ。
たった6つのみ用意されたデビューメンバーの椅子に、はたして彼女たちは座ることができるのか。言語などさまざまな壁を越えてひたむきに努力を重ねる日本人練習生たちの夢の行方を、ぜひ見守ってほしい。
『QUEENDOM PUZZLE』は毎週木曜よる10時よりABEMAにて配信中。
テキスト:岸野恵加