25日、岸田総理はいわゆる“サラリーマン増税”について「全く考えていない」と否定したが、ネット上では「白々しい」などの声も挙がっている。
発端となったのは、政府の税制調査会がまとめた今後の税制に対する答申。ここでサラリーマンについて「他の主要国に比べ給与所得控除が手厚い」とし、退職金への課税が優遇される制度や、通勤手当に対する課税を見直すことなどが盛り込まれていた。
サラリーマンは本当に“さらに課税されても当然なほど”優遇されているのか?『ABEMA Prime』では、令和の新たな働き方を専門家とともに考えた。
▪️どこの国と比べて“優遇”されている?
サラリーマンが優遇されているという点に対し、元総務官僚で国会議員の政策秘書も経験した政策コンサルタントの室伏謙一氏は「答申には『主要国と比較して』と書いてあるが、具体的な国名は書かれていない。おそらく財務省にとって都合がいい国だけを挙げて比較しているのだろう。そもそも、もしサラリーマンが税制上優遇されていたとしても外国と比較する必要があるのか。『日本はそういう良い制度を持っている、以上』となるだけではないか」と違和感を口にした。
さらに、サラリーマンと10月にインボイス制度が開始され苦しくなるとも言われるフリーランスとの比較において、「もし仮にサラリーマンの方が優遇されているということであれば、サラリーマンの足を引っ張るのではなく、フリーランスの方を底上げすればいいだけだ」と提案した。
▪️退職金の見直しは悪いことばかりではない
政府の税制調査会の答申には、リモートワークなどで働き方が多様化している中、非課税とされる意義が薄れてきているものの一つとして、通勤手当が挙げられているという。
これを受けて近畿大学情報学研究所所長の夏野剛氏「確かに、リモートワークが普及し、定期券を購入していない社員も増えているが、もし通勤費用が会社の経費として認められなくなると個人所得になり、会社側は多めに払う必要が生じる」と懸念を示した。
続いて退職金について。現在の退職金の控除額は、勤続20年までは1年につき40万円、以降1年につき70万円となっているが、「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画 改訂版」(内閣官房 先月16日公表)には「20年を境に1年当たりの控除額が増額する税制変更に伴う影響に留意しつつ本税制の見直しを行う」と記されている。
これに対し夏野氏は「現在の制度ではまるで同じ会社に30年勤めることが奨励されているかのようだ。しかし、現在は転職者が増えてはいるがまだまだ労働の流動性が低いことが問題になっている。本来ならば先にもらっていた方がいい給料を後出しでもらう仕組みは、企業が内部留保を貯める手助けをしているかもしれない。退職金に関しては単にサラリーマンへの増税という観点だけではなくて、『世の中に合っていない仕組みを見直す』という面でも評価しなくてはいけない」との考えを示した。
さらに夏野氏は「退職所得税制度の見直しはサラリーマンにとって悪いことばかりではない」と話す。「もし退職金の優遇制度をやめたら、僕は経営者として退職金を前もって給料で払う。そんな会社はうちだけではないはずだ。今までは後でもらったほうが本人にとって得になる仕組みだったから退職金として渡していただけ。企業の業績が悪くなったらもらえない場合もあるため、先にもらったほうがいいのではないか」と投げかけた。
(『ABEMA Prime』より)
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