「ChatGPT」を開発したOpenAI社の創業者兼CEOのサム・アルトマン氏が新たに「仮想通貨」を立ち上げた。『ABEMAヒルズ』ではその狙いなどについて、AI事情に詳しい起業家のチャエン氏に聞いた。
サム・アルトマン氏が立ち上げた仮想通貨「ワールドコイン」。参加する仕組みは“オーブ”と呼ばれる機械で、目(虹彩)をスキャンし個別のIDを取得するだけ。無料で仮想通貨が受け取れるという。このプロジェクトの概要について、チャエン氏は次のように説明する。
「2つのポイントがある。1つは『全世界の人に無料で仮想通貨を配る』こと。2つ目は『一人ひとりにIDを付与する』ことだ。僕自身も参加して62ドル(約9000円)を貰えた。さらに毎週2ドルずつ貰える予定となっている。デメリットとしては、虹彩のデータを提供するという点を懸念する方もいるかもしれないことだ」
ベータテストで20カ国35都市に設置されたオーブ。期間中に200万人のユーザーを獲得した。一方、仮想通貨に対する規制の厳しいアメリカではサービスを提供しなかったという。
「かつてFacebookもリブラという仮想通貨をやろうとしたが米政府に止められたので、アメリカなしでの開始は英断だと思う。東京でも設置されて長蛇の列ができていた。おそらく日本ではすぐに規制が入ることはないのだろう」
現在のワールドコインの評価はどうか。
「立場によって賛否両論ある。投資家の目線、セキュリティ目線、事業家的な目線などがあるだろう。投資家目線では懐疑的な方が多く、セキュリティの観点での懸念は自明だ。とはいえ、僕も含めた事業家目線では、目先ではなく中長期的な視点で取り組んでいるので素晴らしいと思う人が多いだろう」
虹彩情報を集める目的は何があるのだろうか。
「万人不同な虹彩情報をもとに個別のIDを振り分ける。その後『ベーシックインカム』という、働かなくても最低限のお金を付与する活動を全世界的に実現することが彼の野望のようだ」
ベーシックインカムを目指しているというアルトマン氏。ChatGPTだけでなく、低価格で地球環境にも優しい“次世代小型原発”の稼働を目指すアメリカの企業「オクロ」も上場している。今回の仮想通貨は「AI」「エネルギー」に加えて「通貨」の部分にも、大きく手を伸ばしはじめているということだろうか。
「天才としかいえない戦略だ。38歳という年齢でこの規模で動いている方は世界に1人ではないかと思う。10~20年先の未来ではAIが働いてお金を生む時代が来るのではないかと思う。ブログや動画も作れるようなAIも発達してきていて、現状ではタスクを依頼している状態だが、そのうちAIが自分で考えて依頼をこなしお金のやり取りをするところまで可能になるのではないか」
人間が働かなくなる時代がくるのだろうか。
「過去を見ても産業革命が起きた時代、人間は時間があったので芸術や哲学が発達した背景もある。もっと人間はクリエティブに生きていいのではないかと思う」
ワールドコインは流行するのだろうか。
「一度流行った後で失速する気がする。200万人×9000円という金額はものすごいが、プロジェクト自体がまだお金を稼ぐことは難しいからだ。現状はほかの事業で賄っているが、各事業でもお金はかかるので、全てをワールドコインに回すことはできない。永続的な成長が難しいので次第に落ち着いてくるのではないか」
(『ABEMAヒルズ』より)
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