7日、ワシントンポストは「2020年秋に中国軍のハッカーが日本の防衛省のシステムに不正アクセスしていた」と報じた。NSA(=アメリカ国家安全保障局)がネットワークへの侵入を発見し、ハッカーらは深く永続的にアクセスしていたという。
【映像】中国軍による日本へのハッキング問題 元米軍関係者「衝撃的にひどかった」
元米軍関係者は「衝撃的にひどかった」と話している。これを受けて、アメリカの当局者は日本の現代史上最も有害なハッキングの1つだと警告し、オースティン国防長官も「日本がサイバー貿易を強化しなければ日米間の情報共有が遅れる」と指摘した。
8日、米国防総省のシン副報道官は報道内容についてはコメントを避けた上で、日本が安全保障上の懸念に対処できると強調した。
「アメリカは日本との関係や情報共有に自信を持っている。これからも続けていく自信がある」(米国防総省・シン副報道官)
このニュースを受けて、『ABEMAヒルズ』ではスパイ対策にあたった警視庁の元公安部捜査官で、現在は日本カウンターインテリジェンス協会・代表理事を務める稲村悠氏に話を聞いた。
━━2020年秋の中国人民解放軍によるハッキングをどう見た?
「非常に衝撃的な事件だ。中国人民解放軍はグアムのインフラに対してマルウェアを仕掛けた事件があり、サイバー能力の高さを証明した。反面、指摘されるまで気づかなかった日本の危険な脆弱性が露見した」
━━3年前のハッキングがなぜ今更報道された?
「このタイミングでの報道には2つの観点がある。1つはアメリカが日本に対してサイバー防衛能力に危機感を覚え、痺れを切らしてネガティブストーリーを打ち出した。2つ目は、防衛予算だ。日本は2027年度までに防衛予算を増額させて、GDPを2%まで到達させるという話があった。これには日本社会の反発が非常に大きかったが、それに対してアメリカがリークする形で背中を押したのではないか」
━━日本のサイバー対策は、今後どのように強化していけばいいのか?
「脆弱性によって、日本がファイブアイズ(※オーストラリア、カナダ、ニュージーランド、イギリス、アメリカで構成される情報同盟のこと)に加盟できないなど弊害が出ているという話を聞いた。防衛省としては人材確保に注力している。事務次官級・キャリア組のトップの年収2300万程度の金額をサイバー人材の確保に向けて提示し、民間の優秀な人材を集めている。しかし、任期付きの条件だ。仮に民間が同額を提示し、任期がない条件だった場合、優秀なホワイトハッカーは民間を選んでしまっている」
━━なぜアメリカが中国軍による日本へのハッキングに気がついたのか?
「アメリカは常に、中国側の動きを監視するインテリジェンス活動をしている。その中で中国のハッカーのログの中に、日本の防衛システムに対して過度なアクセスを発見した。もしくは、日米間でしか知り得ないデータの情報漏洩をしていて、そのデータを中国が保有していた場合、アメリカが日本を監視していなくても探知が可能だ。松野官房長官は『情報漏洩はなかった』と話していたが、ないとすれば、アメリカが日本の情報を管理するために見ていた可能性がある」
━━どんな国のハッカーが日本を狙っているのか?
「フィジカル的なスパイ活動と一緒で、ロシア・中国・北朝鮮。この3か国は日本に対して積極的に行っている」
━━サイバー防衛体制などを含めて強化していかなければいけない?
「日本のインテリジェンスは脆弱で遅れている。国際情勢もフェーズが変わり、日本も今に合わせた危機意識を持たないといけない」
(『ABEMAヒルズ』より)
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