「死に場所・火葬場・墓」全部不足 “火葬待ち10日”の背景に「死=忌まわしい」のイメージか
【映像】広くて寛げる“遺体ホテル”の一室
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 去年の死者数は156万人あまりと過去最多。今後も増え続け、深刻な事態を引き起こすという。そのひとつが「看取り」だ。

【映像】広くて寛げる“遺体ホテル”の一室

 今、日本人の7割が自宅で最期を迎えることを希望しているが、家族の要望による延命治療や在宅医の働き方問題もあり、およそ8割の方が病院で亡くなる。その結果、医療機関の病床数が足りず、このままでは2035年にはおよそ47万人が看取られる場所、つまり「死に場所」の確保ができない可能性も。

 さらに、亡くなった後にも「火葬待ち」という課題が。都市部では火葬を10日以上も待たなければならないケースもある。新しく火葬場を作ろうとしても、住民からの反対でなかなか進まない自治体も多い。

 そんな中、遺体安置の専用施設、いわゆる“遺体ホテル”に注目が集まっているという。『ABEMA Prime』では、多死社会へと向かう日本の課題・解決策を専門家と共に考える。

「死に場所・火葬場・墓」全部不足 “火葬待ち10日”の背景に「死=忌まわしい」のイメージか
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■“遺体ホテル”増加の背景

 遺体ホテルは単なる安置場所ではなく、24時間故人と面会ができ、ゆっくりとお別れができる場となっている。需要が高まる背景には、火葬待ちにより「初七日を過ぎてからお通夜」という状況が珍しくなくなったことや、マンションに遺体を搬入できないケースなどがあり、遺体専用の保冷システムによる長期保存できる場所が求められているという事情がある。

 火葬場にも霊安室があるが、そこに安置するわけにはいかないのだろうか。遺体ホテル・ラステル新横浜の村田大地氏は「火葬場の霊安室はどちらかというと、殺風景で冷たいイメージがあるだろう。そこを少しでも変えたいと考えて作った施設だ」と答えた。

 なぜ火葬場を増やせないのだろうか。ニチリョク取締役で葬儀プロデューサーの尾上正幸氏は「ご自宅の近くにご遺体がたくさん安置されていると、どなたもなかなか引き受けにくい。そのため建設も難しい」と実情を語った。

 プロデューサー・慶応義塾大学特任准教授の若新雄純氏は「正に自業自得だ。自宅周辺には作らせないで、その結果、身内が亡くなっても預けるところがない」と指摘した。

 さらにリディラバ代表の安部敏樹氏は「死に対するイメージが悪化する懸念」について「孤独死が増加すると、発覚の遅れによって状態が悪化し、不動産価格が下落するケースも増えるだろう。そうなると『死=汚れ』というイメージが強化される方向に進むのではないか」と述べた。

■「死」を考えないから貧弱になった

 ジャーナリストで浄土宗僧侶の鵜飼秀徳氏は「葬儀そのものに参加する機会が減っている。昔は上司の親が死んだ場合も部下が手伝いに行った。2000年代半ば頃まではそんな慣習があったが、途端になくなって家族葬になり、遠縁の葬式にも行かなくなった。その結果、大人はもちろん、特に子どもたちが死を学ぶ機会が少なくなっている」と説明した。

 若新氏は「自分も含めて身内もいつかは遺体になる。遺体に何の忌まわしさがあるというのか。死んだ者に対して、遠ざけたいという感情があるようだ。その背景には死後の世界について考えるのをやめて、僕らが何かを営まなくなったことですごく貧弱になったことがある。やはり僕らは生きている間から死ぬということもセットの人生を考えなくては」と述べた。
(『ABEMA Prime』より)

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