「プーチン大統領の心が変われば明日にでも」 ウクライナ侵攻どう終わらせる? 過去の戦争に学ぶ“3つのシナリオ”
【映像】水上ドローンがロシア艦船に体当たり攻撃を仕掛けたとされる様子
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 ロシアによるウクライナ侵攻から約1年半が経過。ウクライナは現在、奪われた領土を奪還すべく東部や南部で反転攻勢に出ていると言われているが、状況は思わしくないという。ゼレンスキー大統領は「反撃は複雑だ。おそらく誰もが望んでいるよりも遅く進んでいる」と述べ、CNNもアメリカ政府高官の話として、ロシア軍の防衛線を突破できていないと伝えている。

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 ここで改めて考えたいのが、戦争の終わらせ方。過去の事例からヒントは見出せないのか。『ABEMA Prime』は防衛研究所防衛政策研究室長の高橋杉雄氏とともに考えた。

 武器供与がエスカレートしていることも要因になっているのではないか。高橋氏は「この戦争はウクライナの存在を否定しようとするプーチンと、アイデンティティを守ろうとするウクライナ、あるいはゼレンスキー大統領の戦い。武器があるから戦っているのではなく、戦っているから武器を与えているのであって、武器がなければない中で戦うだけの話だ。それはより悲惨な状況になる。民間人が巻き込まれることを考えると、近代武器を供与してある程度の戦線を張っている現状のほうがはるかにましだと考えている」との見方を示す。

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 核の抑止力について、広島の松井一實市長は「核抑止論は破綻していることを直視する必要」「為政者に核抑止論からの脱却を促すことが重要」、長崎の鈴木史朗市長は「忘却が新しい原爆肯定へと流れることを恐れる」「今こそ、核抑止への依存からの脱却に勇気を」と述べている。

 高橋氏は「ロシアの思うようにいっていない中で核兵器が使われていないことを考えると、核抑止論が機能していない、破綻しているというのはあまり正しくないと思う」とした上で、「核兵器をめぐる立場は3つある。1つが、“廃絶させねばならない”と絶対悪として捉えるもの。もう1つは、脅威が存在する以上は抑止力になるという必要悪として捉えるものだ。この2つは“核が悪である”という点で共通しているが、第3の立場は“核兵器は悪ではない”。自分たちの国益を追求するために威嚇を含めて使ってもいいという考え方で、例えば北朝鮮や今のロシアがそうだ。批判すべきはこの第3の立場であって、核抑止力ではないと思う」と述べた。

■過去に学ぶ戦争の終わらせ方“3つのシナリオ”

 過去の事例から考えられる戦争の終わらせ方“3つのシナリオ”を高橋氏に聞いた。

(1)戦闘の停止(停戦・休戦)
 朝鮮戦争(1950~1953年)後、北朝鮮側と韓国側は今もなお38度線で「停戦・休戦」している状態だ。

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「この戦争は北朝鮮の韓国への侵攻で始まり、米軍がすぐに国連軍として参戦、中国人民義勇軍も参戦した。戦いの主体はアメリカと中国で、両軍が疲れ切ったことで休戦協定に入った。この時、韓国は反対してサインをしていないが、もともとのエリアで落ち着いている。どちらかがすごく大きなものを失ったわけではないので、落とし所をつけやすかった状況ではある」

 この形からウクライナ戦争の終わらせ方はどうイメージできるのか。

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「今占領されている土地をウクライナがほぼ全て、あるいは譲歩できる範囲まで奪回して、ロシアが諦める形で停戦をするのが唯一のシナリオだと思う。その地域には平穏な生活をする権利があった人たちが住んでいて、取り戻すまではやめられない」

(2)お互いに譲歩・妥協(和平)
 パレスチナの帰属をめぐりイスラエルとアラブ諸国が衝突した中東戦争(1948~1979年)。イスラエルがエジプトに領土(シナイ半島)を返還する代わりに、イスラエルを国家として承認する「エジプト・イスラエル和平条約(第4次)」が結ばれた。

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「ある領土を諦める代わりに、政治的にプラスをくれということ。ウクライナが占領されている場所をどこか諦める代わりに、例えば米軍が駐留するとか、NATOに加盟をすることをロシアが認めて、ウクライナのその後の安全を保障する」

 ロシア外務省は7日、ウクライナが「敵対行為とテロ攻撃」をやめ、西側諸国がウクライナへの武器提供を停止すれば、事態を解決すること(和平)が可能だとしている。条件として、1.占領しているウクライナの領土割譲、2.ウクライナの中立・非同盟・非核武装をあげている。

 「ロシアはこのために戦争を始めているから、社交辞令でもなんでもなく本気で言っていると思う。ただ2つ目の要因をロシアが諦めない限りは、ウクライナが領土を諦めることはないだろう」

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 現状、仲介役が必要かもしれないことを考えると、どういった国がキープレーヤーになるのか。

「お互いに諦めたくないものなので、相当強いパワーが必要だ。ロシアが約束を破らない保証がない中で、ウクライナの安全を保障できるプレーヤーでないと和平はできない。そうなるとやはりアメリカになる」

(3)予想外の要因
 太平洋戦争(1940~1945年)では、史上唯一の核攻撃によって甚大な被害が発生し、ソ連が日ソ中立条約を破棄して参戦した。

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「ワイルドカードとして考えていたのは、ロシアの政変やベラルーシの政変。それ以外には、太平洋戦争みたいに国外で起こった国際政情の大きな変化、つまり原爆投下だけではなくソ連の参戦だ。そういうところで戦争が終わるインパクトを持ちうるプレーヤーは、実は中国になる」

 ロシア国内の経済状況も影響するのか。

「韓国やスペインと同じレベルの国力しかない国だ。一方で、過去の膨大な蓄積の軍事力は使い潰している。あるロシア専門家が『過去の栄光のために未来を先食いしている』と言っている。プーチン大統領はまだ持つと思っているが、そうではなくなった時に展開があるのかもしれない。この戦争はプーチン大統領の心が変われば明日にでも終わる。ウクライナは戦うのをやめると国がなくなってしまう。その中で、ロシアの心を変えるために何が必要なのか。とにかく戦場で消耗させる、経済制裁で圧力をかけていく。メディアの情報戦も含めていろんなことをやっていく必要がある」

(『ABEMA Prime』より)

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