【総ルビ版】「大人と子どもで本の区別があるのは日本くらいだ」マネックスG松本会長が進める“ルビのある社会” 財団創設の思いとは

　今年ことし5月がつに設立せつりつされた一般財団法人いっぱんしゃだんほうじん「ルビ財団ざいだん」。漢字かんじのよみがな「ルビ」を増ふやすことで、「子こどもの学習がくしゅうを効率的こうりつてきに推進すいしんし、好奇心こうきしんを発達はったつさせ、興味きょうみを自みずから追求ついきゅうできる社会しゃかい。外国人がいこくじんにも優やさしい社会しゃかい。大人おとなにとっても情報量じょうほうりょうが増ふえる社会しゃかい」を実現じつげんし、インクルージョンを推進すいしんするという。

【映像】読みやすい？総ルビのフリップ

　立たち上あげたのは、マネックスグループ会長かいちょうの松本大まつもとおおき氏し。なぜ今いま、社会しゃかいに振ふり仮名がなを増ふやす必要ひつようがあるのか。15日にちの『ABEMA Primeあべまぷらいむ』で本人ほんにんに話はなしを聞きいた。

　松本氏まつもとしは財団創設ざいだんそうせつの経緯けいいについて次つぎのように語かたる。「大人おとなと子こどもの本ほんの区別くべつがある国くには日本にほんぐらいだ。漢字かんじが読よめるようになるまで大人おとなの本ほんが読よめないことで断絶だんぜつしている。大人おとなの言葉ことばにもルビを振ふれば、自分じぶんの興味きょうみで育そだっていく子こがいるだろう。海外かいがいから来きた人ひとや旅行者りょこうしゃ、あるいは親おやが外国人がいこくじんということで漢字かんじが読よめない子こも大勢おおぜいいる。訪日外国人ほうにちがいこくじんのうち、実じつは英語圏えいごけんの人ひとは2割わりか3割わりで、道路標識どうろひょうしきなどを英語えいごで書かくよりも振ふり仮名がなを振ふるほうがはるかに読よめる人ひとが多おおい。そうすればよりインクルージョンな社会しゃかいになる」

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　明治中期めいじちゅうき、文章ぶんしょうを理解りかいしやすくして読者どくしゃを獲得かくとくするため、多おおくの新聞しんぶんがすべての漢字かんじにルビを振ふっていた。しかし、戦後せんごの1946年ねん、政府せいふは日本語にほんごを簡明かんめいで規則性きそくせいある言語げんごに改革かいかくし、漢字数かんじすうを制限せいげんして振ふり仮名がなは原則げんそくとして使つかわなくなった。公文書こうぶんしょや新聞しんぶんから姿すがたが薄うすれ、他ほかの出版物しゅっぱんぶつでも減少傾向げんしょうけいこうになっていった経緯けいいがある。

　松本氏まつもとしは「新聞しんぶんにルビが振ふってあると、当時とうじ小学生しょうがくせいだった私わたしは“水俣病みなまたびょうは水銀すいぎんが～”と書かいてあるのを見みて、“すいぎんとはなんなのだろう？”と興味きょうみを持もった。しかし、振ふり仮名がながなかったら読よめないし、辞書じしょの引ひきようもない」と必要性ひつようせいを強調きょうちょう。

　ジャーナリストの堀潤ほりじゅん氏しは「最近さいきんの新聞しんぶんは文字数もじすうが減へり、読者どくしゃの忍耐力にんたいりょくがなくなり、刷するだけの経営力けいえいりょくもないということで、随分ずいぶん薄うすくなった。限かぎられた情報じょうほうの中なかで、一文いちぶんを誰だれもがわかるようにするのか、情報量じょうほうりょうを増ふやしてルビも振ふっていくのか」と投なげかける。

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　松本氏まつもとしは「情報量じょうほうりょうだったらインターネットに勝かてるわけがない。新聞しんぶんなんて放ほうっておいたらなくなってしまうが、ルビが振ふってあれば子こどもが興味きょうみをもって読よむかもしれない。だから、新聞社しんぶんしゃの人ひとは生いき延のびるためにルビを振ふって読よみ手てをつくらないと」と提案ていあんした。

　一方いっぽうで、総そうルビによって「テロップが占しめる範囲はんいが増加ぞうかし映像えいぞうが見みにくくなる」「一行いちぎょうで読よみ取とれる情報量じょうほうりょうが減へる」「本ほんなどのページが増ふえ印刷いんさつコストが増加ぞうかする」「漫画まんがなどで雰囲気ふんいきが壊こわれる」などのデメリットも考かんがえられる。

　松本氏まつもとしは「今度こんど本ほんを出だすが、総そうルビだ。ゲラを無意識むいしきで読よんだが、全然ぜんぜん読よみにくくない。出版社しゅっぱんしゃには適度てきどにルビを振ふるというノウハウがなくなってしまっているので、総そうルビのほうが簡単かんたんだろう。最初さいしょは段組だんぐみについて出版社しゅっぱんしゃの腰こしが引ひけていたが、いざやってみるとそんなに増ふえなかった」と説明せつめい。

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　今回こんかいの活動かつどうには反響はんきょうも大おおきく「東大とうだいの藤井ふじい総長そうちょうとルビ財団ざいだんの話はなしをしたら“その視点してんは気きづかなかった”と。永岡ながおか文科大臣もんかだいじんにも会あったが“それは良いい”と。ルビ財団ざいだんには評議員ひょうぎいん・理事りじが6人にんいるが、そのうち私わたしを含ふくむ4人にんが同おなじ開成高校かいせいこうこう。彼かれらが“これは絶対ぜったい良いい”と言いって、みんなで手伝てつだいながらやっている。原体験げんたいけんとしてルビが振ふってあるほうがわかりやすいというのがあるので、それをもっと発信はっしんしていきたい」と意気いき込ごんだ。

　ルビを振ふるだけでなく、自由じゆうに外はずすことも目指めざしているという。「ルビ財団ざいだんのホームページは、ボタン1つでルビのオン・オフができるようになっている。現在げんざいコードの開発かいはつをして無料むりょうで配布はいふできるように計画中けいかくちゅうだ。それを入いれればどんな企業きぎょう、あるいは地方政府ちほうせいふでもボタン1つで切きり替かえができる」。

　松本氏まつもとしは最後さいご、「文字もじは昔むかしから、上うえが下したを押おさえつけるために使つかわれてきた。聖書せいしょは聖職者せいしょくしゃだけが書かき写うつすので教会きょうかいがすごく力ちからを持もった。グーテンベルクが活版印刷かっぱんいんさつを考かんがえ、ルターが宗教革命しゅうきょうかいかくをやり、聖書せいしょをみんなが持もてるようになって一気いっきに権威けんいが崩くずれていった。例たとえば、日本にほんの法律用語ほうりつようごも難むずかしいが、そういう言葉ことばは一部いちぶの官僚かんりょうなどだけが使つかえるものになっていて、いわゆるヒエラルキーが作つくられる。インターネットはそれをひっくり返かえすものであるし、ルビを振ふるというのは、そういった意味いみではアンチ権威的けんいてきな、民主主義みんしゅしゅぎの運動うんどうでもある」と述のべた。（『ABEMA Primeあべまぷらいむ』より）