189万5000人。病気やけがなどで手や足が損なわれ、日常生活の動作が困難な人達の数字だ。そんな人たちの助けになっているのが義手。
先天的に右腕を欠損しているやまもとくにひろさん(26歳)が使っているのは「筋電義手」。筋肉を動かす時に生じる微弱な電流、筋電をセンサーで検知して自らの意思で動かす義手のことだ。
やまもとさんは、靴ひもを結んだり、ジェンガを人差し指で押して、つまんで取るといった繊細な動きもスムーズに行う。ただし、じゃんけんでチョキの形を作るなどの一部動作は難しいという。
『ABEMA Prime』では、義手によって生活がどう変わるのか。そして理想の義手とはどんなものなのか、当事者のユーザーと共に考えた。
■義手のスペックと課題
義手には、体の動きを利用して腕や手が動く「能動義手」、動かすことはできないが見た目のリアルさを重視した「装飾義手」、自分の意思で手や指を動かせる「節電義手」と種類がある。
右腕で筋電義手を使っているやまもとさんはペットボトルのキャップを開けたり、煎餅を袋から取り出したりもできる。これはつまり繊細な力加減ができることを意味する。
25歳の時に職場の大型機械に両腕を挟まれたことで、両手義手ユーザーとなったまぁーさん(44)は右手で筋電義手を、左手で能動義手を使っている。
タイプの異なる義手の使い分けについて、「腕が長く残っており、利き手でもある右腕では把持力が高い筋電義手を使っている。左腕の能動義手はフック船長の腕のような形状で小銭を取り出すなどの細かい作業がしやすい。それぞれの長所を活かしている」と説明した。
仕事などで不便はないのだろうか。やまもとさんは「義手で文字を書く方もいらっしゃる。また、テクノロジーが急速に発達してるので、今後はさらに制限がなくなっていくのではないか」との見解を示した。
まぁーさんは「私は図面を書く仕事をしているが、両手義手をつけてのタイピングやマウス操作をする。また、足を使ってクリックする装置などを組み合わせているので、不便を感じていない。車の運転もハンドルを少し改造したら、問題なくできる」と実情を語った。
義手の価格についてやまもとさんは「一人ひとりに合わせて作っていくので変動するが私の場合だと約300万円だ」と述べた。
これまでは「先天性」の病気などで腕を失った人への補助はなく、「労災」のケースに限られていた。2021年に公費支給の対象に筋電義手を追加されたが、現状においても「訓練して審査で使いこなせると承認されれば」という条件がついている。
これに対し、電気通信大学教授の横井浩史氏は「これはおかしい。使いたい人が使える環境を国が用意すべきだ」と指摘した。
■義手は人体を拡張するか
今後の進化について横井氏は「人間の手ではできなかったような物の検知ができるようになる。イギリスでは手の中にセットしたビジョンカメラが対象の形を認識して、手がその形に合うように姿勢をコントロールする研究が進んでいる。また、工業応用の観点では1000℃ほどの高熱の対象物を掴んだり、扱うことができるようになる」と推測した。
これを受けてラッパーの呂布カルマは「僕は全身をサイボーグにするという目標があるので楽しみだ。最新の機器が出るごとに付け替えて『今回の義手はすごいな』などと感動したい」と述べた。
(『ABEMA Prime』より)
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