亡き母との誓いを胸に――。下馬評を覆し続ける男・田丸辰がRISE世界トーナメント決勝進出
【映像】大﨑を下した田丸 熱戦の模様

 8月26日(土)東京・大田区総合体育館で開催された「ABEMA presents RISE WORLD SERIES 2023 2nd Round」。RISE WORLD SERIES 2023-54kg Tournament(Bブロック)準決勝では田丸辰が大﨑一貴に判定勝利して決勝進出を決めた。

【映像】大﨑を下した田丸 熱戦の模様

 準決勝・Aブロックで志朗とクマンドーイ・ペッティンディーアカデミーがハイレベルな技術戦を繰り広げる中、準決勝・BブロックではRISEスーパーフライ級&ISKAオリエンタルルール 世界フライ級(-53.5kg)王者・大﨑とRISEフライ級王者・田丸が日本人対決らしい気持ちのぶつかり合いを見せた。

 2020年9月に拳を交えている両者。このときは大﨑が保持していたRISEスーパーフライ級王座に田丸が挑む形での一戦で、2Rに左フックでダウンを奪った大﨑が判定勝利を収めていた。両者にとっては約3年ぶりのリマッチも迎え撃つ大﨑と挑む田丸という図式になった。

 多くを語らず試合と実力で魅せる“良い意味で昭和のファイター”(RISE伊藤隆代表)大﨑に対し、田丸はリング外でも感情をむき出しにして言葉で発信するタイプ。ファイトスタイル的にもパワーの大﨑vsスピードの田丸とあらゆる面で対照的な2人でもある。

 そんな2人の一戦は意外な展開で進んでいく。1Rこそ戦前の予想通り、大﨑がプレッシャーをかけ、サウスポーの田丸がガードを上げて距離を取るラウンドとなるが、2Rに入ると田丸が大﨑の得意な近距離での打ち合いに応戦。大﨑が内股を蹴るインカーフキック、ボディブローとヒザ蹴りで攻め立てると、田丸は大﨑のサイドに回り込むように右フック、左ハイキックを狙う。

 そして3Rに試合が動く。2R同様に我慢比べの打ち合いが続く中、田丸が大﨑の右ボディの打ち終わりに左ストレートを合わせ、この一発でタフな大﨑がバランスを崩す。何とか踏みとどまった大﨑だったが、この一発を機に田丸が勢いを増し、右フック・右アッパーと畳みかけた。

 判定はジャッジ1名がドローにつけたものの、2名が田丸を支持。大﨑に分があると見られた接近戦に応じ、その上で持ち前の機動力を生かした田丸が決勝進出を決めた。

 距離を取ってスピードで翻弄できなければ、近距離での打ち合いにも応じて競り勝つことは想定済み。試合後のバックステージで田丸は「今回は近距離でも戦えるように練習してきた。(1・2Rを終えて)接戦だと思って、気持ちを切らさずに3Rで勝負が決まると思って戦った。最後は気持ちと気持ちのぶつかり合いだったと思う」と語っている。

 また田丸はトーナメント発表会見の場で「このトーナメントで大﨑と志朗をやらせたいみたいな流れがあって、めっちゃムカついている。自分のことをダークホースとは思っていませんが、トーナメントをグッチャグチャにして自分が世界一になろうと思っています」と周囲の評価や扱いに対する苛立ちをストレートに言葉にしていた。

 結果的に田丸は1回戦でWPMF世界ライトフライ級王者のペッシラー・ウォー・ウラチャー、準決勝で19連勝中の大﨑を撃破して、2試合連続で下馬評を覆し「団体やファンの大﨑vs志朗が見たいという予想や期待をひっくり返すことができた。みんなどんな手のひら返しをしているのか楽しみ」と不敵に語っている。

 反骨精神と強気な言葉で決勝まで駒を進めた田丸だが、実は一回戦のペッシラー戦直後に母が他界。トーナメントの棄権も頭をよぎったが、亡き母が周囲と交わしていた約束が田丸をリングへ向かわせた。

「ペッシラー戦が終わって、すぐお母さんが亡くなって。気持ち的に棄権するかどうか迷いました。それで棄権するなら早めに(主催者に)伝えた方がいいと思ったんですけど、家族やお母さんの親族から、お母さんは僕がトーナメントで勝つことを望んでいたと聞いて。実はお母さんは僕が試合する姿が怖くて、一回も現地まで試合を見に来たことがなかったんです。でも周りには僕が今回のトーナメントで決勝まで勝ち進んだら試合を見に行くと言っていたみたいで。それを聞いたときに棄権はしない、やるしかないと決心しました」

 決勝で田丸を待ち受けるのはムエタイの超強豪クマンドーイだ。志朗との準決勝ではRISEへのルールの適応力を見せ、右ストレートでダウンを奪う完勝劇を見せた。おそらく決勝戦もクマンドーイ有利の下馬評になるだろう。

 しかし田丸にとって周りに「田丸じゃ勝てない」と言われるような試合は望むところ。ここまでがそうであったように、田丸にとって世界一への道はそんな予想を覆した先にあるものだ。

「自分は決勝でクマンドーイとやりたかったんで、決勝戦がめちゃくちゃ楽しみですね。僕は必ず優勝すると決めているし、決勝戦も最高に盛り上げて世界一になります。ここで優勝した方がこのトーナメントの主人公だと思うので、僕が主人公になれるように優勝します。そしてもっともっと有名になってスーパースターになります」

 田丸辰の世界一をかけた下克上物語。その最終回は12月16日、両国国技館「RISE WORLD SERIES 2023 Final Round」だ。

【映像】大﨑を下した田丸 熱戦の模様
【映像】大﨑を下した田丸 熱戦の模様
この男がRISEを世界標準にする! クマンドーイが見せるRISE仕様のムエタイスタイル
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