【関東大震災から100年】「寝る場所を2階より上に」関東一円に広がる“すべる地層”専門家が警鐘
【映像】関東にある「すべる地層」(画像あり)
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 今から100年前に起こった関東大震災。死者・行方不明者は約10万人にのぼり、大きな被害をもたらした。

【映像】地震によって潰れた電車 ※東海道線の駅周辺(画像あり)

「滑りやすい地層は関東一円に広がっている」

 そう警鐘を鳴らすのは深田地質研究所の理事長・千木良雅弘さんだ。

「あそこに見える白い地層が(東京)軽石層。これと同じ地層に『すべり面』ができて、上の地層がすべった」

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 千木良さんによると、練られた軽石層の土は泥水のようになり、その泥水の上に乗っていられなかった地層はすべってしまうという。

 神奈川県秦野市の「震生湖」も、関東大震災による地滑りによって、川がせき止められてできた湖だ。当時、周辺では地滑りが相次ぎ、行方がわからないままの子どももいた。関東大震災発生時、神奈川県では西部を中心に同様の土砂災害が相次いだという。

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 気象庁が今年、初めて公開した当時の記録写真がある。場所は現在の小田原市。発生した土石流の写真をみると、瓦葺きの家々を土砂や木々が覆うように流れている。手前の家は土壁が崩れているようにもみえる

 また、当時の鉄道省の調査書では、東海道線の根府川駅に直撃した土石流の写真も残されている。これにより、130人の犠牲者が出たという。写真をみると、海岸に落ちた列車の一部や、駅に近い大きな橋が土砂により横に倒されている。

 これらの土砂災害について、非常に強い揺れに加えて前日に降った雨も原因だといわれているが、詳しいメカニズムがわかっていないものもある。

 一方で、秦野市の震生湖に関しては、詳しいメカニズムがわかってきた。7年前、京都大学の研究者だった千木良さんは、地下に広がる東京軽石層が風化して崩れて起きたと突き止めた。

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「東京軽石層は、箱根から噴出し、神奈川~東京まで広く分布している。軽石は大雨の時にはあまり崩れないが、地震で崩れることはある。特に、こういう地層がずっとあって、斜面の下のところが川の浸食や人の工事で、なくなっている所がすべりやすい。(造成した住宅地なら)上に乗った家はいっしょにすべるし、下の方では横から来た土砂ですごい被害になる」

 東京軽石層は、7万年近く前の箱根山の火山活動でできたものだという。軽石層は各地の火山活動によって全国的に広がっていて、2018年の北海道胆振東部地震の地滑りも、軽石層の崩れによるものだった。

 千木良さんは、現在の行政の課題として、斜面の危険度を示すハザードマップで大雨は考量されていても「軽石層のリスクは見落とされている」と指摘する。

「個人で調べるには限界がある。ハザードマップにはこういうゆるい傾斜の地震時の地すべりは入っていないので、(国や地方自治体中心に)何らかの対策、被害の評価をしていかねばいけないと思う。地震時の軽石・火山灰のすべりはちょくちょく起こるものでないので、網の目から漏れている状態なのでは」

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 千木良さんは、軽石層の崩れる速さは場合によっては、時速100キロと逃げられないほどの速さになると話す。リスクがある地域の家に住む人たちができる対策は、寝る場所を2階より上にすることぐらいだという。

「街中に軽石層が隠れている恐れが高い。国レベルで状況を把握して周知していくべきです」

(「ABEMANEWS」より)

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