「SNSにあげたイラストがバズって『すごい』と褒められたが、自分より絵がうまい人はたくさんいるから『褒めてくれた人を騙してる』と感じる」
こう話すのはイラストレーターとして活動する雪見しの氏(30)。雪見氏は「いつかメッキが剥がれてしまうのでは?」といった不安から、仕事に対して逃げ腰になるなどの悪影響が出ているという。
周囲からの称賛を受け入れられず、自分を評価してくれる相手を騙しているような感覚になる「インポスター症候群」。誰もが陥る可能性があり、特に「謙遜は美徳」「いやいや私なんて」と思いがちな日本人はリスクが高いという。
『ABEMA Prime』では、ミシェル・オバマやナタリー・ポートマンも悩んだとされるこの症候群について、当事者・専門家に話を聞いた。
■インポスター症候群とは?
インポスターとは「詐欺師/偽物」の意味で、この症候群は1978年に心理学者によって提唱された。心の不調ではあるが精神疾患ではなく、あくまでも心理的傾向であり、確立された診断基準・克服方法はない。症状は寝つきの悪さ・悪夢・めまい・吐き気・動悸・腹痛・むくみなどがあるという。
公認心理士・メンタルトレーナーの小高千枝氏は「自己肯定感の低さがカギ。基本的には、生まれ持った気質よりもこれまでの経験や知識を身につける過程で自分に自信がなくなってしまったことが きっかけになる」と解説する。また、「急な注目」や「環境の変化」で陥ることが多いという。
インポスター症候群には
・いつも偽りの自分を演じているような意識
・自分が無能だとバレることへの恐怖感
・何かを任されても「他の人の方がうまくできる」と考えてしまう
などの思考傾向があり、行動としては
・褒められると居心地が悪く、否定することを言う
・期待されることが怖く、能力をあえて隠す
・限界だと感じても自分に鞭を打ち対応する
などの傾向が挙げられるという。
■“安易な褒め”がマイナスに作用する?
では、どのように向き合うべきなのか? 克服・対処法としては
・完璧主義をやめる
・SNSを避ける
・1日を振り返り自分を褒める
などを行うことで自己肯定感・自尊感情を高めることが重要だという(監修:小高氏)。
小高氏は「SNS社会になり、人は褒められ慣れている一方で、自分という存在を深く理解できていない。誰かを褒める時は『結果が良かったね』ではなく、プロセスにおける『その方ならではのポイント』を認めてあげることが大事だ」と解説した。
ジャーナリストの堀潤氏は「“安易ないいね”が相手のメンタルを追い込んでしまう可能性もある。会社が『ウェルビーイングで働きやすくするためにみんなを褒め合おう』と言っていても、それがマイナスに作用する可能性もある。ちゃんと個々人を見なければいけない」と述べた。
これにNPO法人「あなたのいばしょ」理事長の大空幸星氏は「僕は安易でもいいから褒めるべきだと思う。褒め合わない社会の中でそれぞれが生きていくというより、“自分に合った褒め”を選べる社会の方が理想的だと思う」とコメントした。
小高氏は「褒め言葉を受け止めるには『自分ならできる』『うまくいく』という自己効力感が大事だ」とした上で「人間の二面性とインポスター症候群」について解説した。
「人間には表の顔と裏の顔があって当たり前だが、そのギャップが大きすぎると、インポスター症候群になりやすい。その二面性こそが自分らしさでもあるので、ちゃんと自分で認めていくこと。加えて、安心できる、信頼できる人たちがそれを受け止めてくれる環境が必要だ」
(『ABEMA Prime』より)
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