激動のオフを過ごしたセガサミーフェニックスの魚谷侑未(連盟)。長らくチームを引っ張ってきた近藤誠一(最高位戦)がMリーガーを勇退し、新監督になることが発表されるなど、話題に事欠かない状態が続いた。個人としては昨期レギュラーシーズン▲355.2ポイントと大不振に陥った。それでも魚谷は「自分の中ではいい経験にもなって、糧にはできた」とポジティブに新シーズンを迎える。「誠一さんが見せてくれた素晴らしい麻雀プロ像を引き継いでいく」。そう決意した魚谷は、新たな仲間、そして近藤新監督と優勝シャーレを抱くために、今期もMリーグという荒波に挑んでいく。
【映像】セガサミーフェニックス2022-23シーズン密着ドキュメント
-自身で昨期の振り返りを。
魚谷侑未(以下、魚谷) チームも、というか私の成績が苦しくなってしまったので、チームに負担をかけてしまったシーズンでした。
-これだけ苦しい数字が出るのも、プロ歴の中で数えるほどだったのでは。
魚谷 自分の麻雀人生はすごく恵まれていた。いわゆる大きく負けるというか、勝ちが遠い、みたいなことはたぶん麻雀人生の中でなかった。負けたことがないわけではありませんが、これだけ大きく負けるというのは初めてだったかな、と思います。そういう意味で自分の中ではいい経験にもなって、糧にはできるのかな、というシーズンでした。
-もう少し「こうすればよかったかな」という点は。
魚谷 昨シーズンをプラスで終えることは正直、手牌とか展開で考えると難しかったかな、とは思いますが、マイナスをあと100から150減らすことは、もう少しやりようを変えていたらあったのかな、とは思います。麻雀とは結局、道中の過程において、何が最善かというのは、その場でその人なりに結論は出せると思いますが、例えばAIが100%正しいのかと言えば、それはわからない。正しさというのを定義付けられるかはわかりませんが、それでも自分の中で明らかにミスといえることは数点あったので。そういうところをきちんと、もう少し試合に集中して、全力で間違いがないようにですね。自分で間違いだったなと思うような一打をなくしていかなければいけないです。
-麻雀というゲームの性質上、プラスを伸ばす時はどんどん行ける。マイナスをどこまで食い止められるかが難しくもあり、ポイントか。
魚谷 私も自分の本で「メンタルが大事な競技だから、負けていてもメンタルを保つことが大事」と言っていますが、去年実感したのは、勝っている時と負けている時の麻雀の向き合い方が一番大事な舞台だと変わってしまう、ということ。難しいですが、きちんと心の調整を完璧にした上で挑みたいです。一応、自分の中で麻雀を打っている時は、メンタルは折れていないつもりでしたが、あとあと考えるとシーズン中は、麻雀中という問題ではなく常にメンタルが折れていたと思うので。自分なりに精一杯打った結果、今シーズンも同じような結果になったとしても「きちんと100点で打てたから大丈夫」と言えるシーズンにしようと思っています。
-近藤誠一選手が勇退して監督に。東城選手とのYouTubeで涙ながらに語っていたが、勇退を聞いた時の感想は。
魚谷 悲しかったですね。聞いたタイミングは契約更改の時です。私が会社に行った時に誠一さんもいらして。そのタイミングでお話をされた感じです。
-ただただビックリしたか。
魚谷 ビックリというか、少し嫌な予感はしていて。でも、その日までに誠一さんが選手を勇退するという考えはしませんでした。ただ、シーズン中に誠一さんの体調が悪そうなことはわかっていたし、たぶん体力や気力の問題で麻雀を打ち切れていない日もあるんだろうな、ということはわかっていたので。いろいろ考えると、「そうか」と納得する部分もありましたが、いちチームメイトとしては納得したくないですね。
-過ごした期間はいろいろ話をし、戦いぶりで背中を見せてくれたこともあった。近藤選手から学んだことや感じたことは。
魚谷 近藤誠一さんは麻雀プロとして素晴らしい。麻雀はもちろん、プロとして素晴らしい選手だと思っています。選手としてはMリーグを引退されて、もしかしたらまた戻ってくるかもしれませんが。誠一さんが見せてくれた素晴らしい麻雀プロ像は、私も引き継いでというか、見習って素晴らしいプロになれるように努力したいな、と思わせてくれる存在です。
-そんな近藤選手が監督になり、醍醐選手が新たに入られた新生フェニックス。醍醐選手の印象は。
魚谷 女性の中に入るのは少しドキドキすると思いますが、醍醐さんは割と女性慣れしてらっしゃるというか、人当たりがいい、コミュ力が高い感じなので、大丈夫そうだな、という感じがします。
-今はチームとして練習をしている時期か。
魚谷 今は全くやっていないです。これからもあるかどうかも定かではないので、個人個人で練習している感じですけど、フェニックスはもともと、チームとしての練習は多くなかったので。今後も個々でMリーグに向けて、という感じだと思います。
-醍醐選手はどういうプレーヤーか。
魚谷 醍醐さんの麻雀を語れるほど、たくさん見ているわけではないです。醍醐さんはわかりやすいプレーヤーではなく、型が変則系というか。本人は「わかりやすいつもり」と話をされていますが、あまり型にはまっているタイプではないですね。少し誠一さんに近い部分があるのかな、と。人が選ばなそうなところを選択して、でも、それが読みとかいろいろなものを駆使した上での選択なので、面白いプレーヤーだと思います。雀力に関しては、私は誠一さんのことをとても信頼しているので、その誠一さんが推薦した選手ですし、間違いはないだろう、と思っています。
-醍醐選手を迎えた三人娘は相変わらずか。
魚谷:いつも通り、やらせていただいております。みんなもたぶん「誰が嫌だ」というタイプもいないので、仲良くやっていけると思います。
-個人の目標は。
魚谷:昨シーズンが終わってしばらくして、自分がダメだった部分を考えた上で、来年の計画を考えていましたが、まず一番思ったのは、過去の栄光を捨てること。私が2019-20シーズンでMVPを取れたのはメンゼンの重たい型でも運が向いていた感じでしたが、運が向いていない時だと、鳴きもすぐにできないという状態が、私の中では昨シーズンは多かったなと思うので、もう少し積極的に参加して、自分で勝ち取りにいくようにしたいです。他家に影響を与えるような仕掛けだったりとか。リーチの判断は変わらないと思いますが、仕掛けとか、もう少し積極的な策を考えてやっていきたいと思います。数字というよりかは、過去の自分を捨てて、新しい自分で戦う、というところです。
-自身の中ではスタイルチェンジに入るか。
魚谷 近いと思います。最初のシーズンで結構、参加してダメでした。なので重い麻雀に変更した、というのがありましたが、もう少し打点を重視しつつ参加する。軽く参加するというよりかは、打点を重視しつつ参加する麻雀を打ちたいと思いますので、見てくださるみなさまにも、それがわかるくらいの変化をお見せできたらいいな、と思います。
-新Mリーガーで注目選手は。
魚谷 渡辺太選手です。Mリーガーになられてから、一緒に麻雀を打ちました。ネット麻雀民はすごくたくさんいます。何ならプロよりも多い。その中で頂点に、しかも数回立つというのは、間違いなく強さがある。麻雀界隈で生きている人の中でもトップクラスの雀力があると思っているので、一番、台風の目になるかな、と思っています。
-渡辺選手の名前を出される方は多い。やはり、力が突出しているか。
魚谷 突出していると思います。プロとしては新人ですが、経歴を含めて一番、タイトルを引っ提げてきた。朝倉康心さんはネット麻雀で天鳳位2回という偉業を達成していますが、渡辺さんはそれを超えた実績を作って参戦してきています。天鳳位を複数回取るというのはそれくらいすごいことですから。
-対戦は楽しみか。
魚谷 あまり誰かと対戦するのが楽しみ、という感覚がないですね。人を気にしたことがないんです。誰と打つから、とかはなくて。もちろん人に合わせて打ち方を変えることはありますが、「誰だから楽しみとか、誰だから嫌だ」という感覚は全くなくて。誰と打っても、自分が絶対。自分があればいいと思っているので、楽しみも嫌な感覚もなくて、客観的に見て、活躍するだろう、という目線です。
-どれだけやれるかが楽しみか。
魚谷 上から目線かもしれないですけど。Mリーグを外から見ているいち視聴者として、活躍するんじゃないかな、と。
-9チームになったことで日程も変わる。影響はあるか。
魚谷 日程を見ましたが、週に1回しかない週は、2回か3回くらいしかありませんでした。あまり日程が減るという感覚はありませんね。9チームになるのでファイナルに行ける確率も優勝できる確率も下がるなとか。あとは、チームメンバー強制入れ替えのレギュレーションも変わった。いろいろ変わった部分はあると思いますが、9チームになったから自分が何か変わる、変えていこうということはありません。
-去年の成績を踏まえてリベンジするのではなく、自分の麻雀を貫くのか。
魚谷 先ほども言いましたが、自分の麻雀は変えていきます。今までの私とは全く別の麻雀を打とうと思っています。それは去年の負けを踏まえてというか、みなさん、だんだんというか、例えば最初から出ている方でもみんな成長している。「何かが変わらないといけない年だな」とすごく思ったので。私自身が変わることで、「それでリベンジしてやりたい」とか、そういうことではなくて、私がやりたいことはチームを優勝に導くことなので、そのピースにきちんとなれればいい、と思っています。そのためには去年の成績を出してはいけないと思っていますが、麻雀という競技の中で、120点で打ち続けて去年のような成績でしたら、私は認めるしかないと思っています、という感じの決意です。
◆Mリーグ 2018年に全7チームで発足し、2019-20シーズンから全8チーム、2023-24シーズンからは全9チームに。各チーム、男女混成の4人で構成されレギュラーシーズンを戦い、上位6チームがセミファイナルシリーズに進出。さらに上位4チームがファイナルシリーズに進み優勝を争う。優勝賞金は5000万円。
(ABEMA/麻雀チャンネルより)