優しげな顔と穏やかな口調で、いきなり核心をついた。「知名度や影響力で最高峰のリーグに僕がいないのはどうなのかと思いました」。セガサミーフェニックスに新加入した醍醐大(最高位戦)は、Mリーガーを勇退し新監督となった近藤誠一(最高位戦)が、自分の後釜にとプッシュした選手。経験、実績は申し分なく、毎年ドラフト指名候補に名が挙がっていた。チームの三人娘(魚谷侑未、茅森早香、東城りお)に対して「親戚のおじさん」というポジションを命じられている醍醐が、ついにMリーグの舞台に降臨する。
【映像】セガサミーフェニックス2022-23シーズン密着ドキュメント
-ユニフォームに袖を通して、いよいよという実感は。
醍醐大(以下、醍醐)こういう格好で麻雀をすることは基本ないので、新鮮な気持ちですね。早く始まらないかなと思っています。
-毎年のようにドラフト候補として名前が挙がっていた。晴れて指名された時の気持ちは。
醍醐 ここ最近いろいろなチームの企業さんとお話しさせていただく機会が増えて、「ひょっとしたら指名するかもよ」と言われていましたが、今回ようやく、という感じですので、ホッとしました。
-周囲の反応、反響は。
醍醐:反応は想像以上にめちゃくちゃすごかったです。1カ月くらい経ちますが、生まれてきて今までで一番「おめでとう」と言われました。
-セガサミーフェニックスへの印象は。
醍醐:もともとアットホームなほんわかしたチームだな、と思っていましたが、実際に入ると、よりそう思いました。
-大先輩である近藤誠一選手が昨期までプレーしていた。
醍醐:近藤さんが基本的にすごく温和な方なので。そのチームカラーというか、その雰囲気が大きいと思います。
-今年から監督になった近藤選手が醍醐選手をプッシュした。
醍醐 すごく光栄です。近藤さんは麻雀プロで唯一、尊敬している方。その方に選んでもらうというのは、特別な気持ちになります。
-尊敬ポイントは麻雀なのか、姿勢なのか。
醍醐 まずきっかけは麻雀のこと。一緒にタイトル戦を5日間戦って、技術的なことがどうこうというよりも、気力や気迫が他の選手とは違うことを肌で感じました。それから「すごいな」と思って。あとは同じ団体の男性プロの中でファンへの対応とか、そもそも断トツの人気プロ。プロとしてのあるべき姿と、麻雀の気迫的な部分と、合わせて尊敬している感じです。
-監督になってからの会話はあったか。
醍醐 「推しておいたよ」という感じではありませんでしたが、「なってもらいたいと思っていた」とは言っていただきましたし、決まってからは「魚谷さんはこういう人で、東城さんはこういう人で、茅森さんはこういう人で」みたいなアドバイスとかはいろいろいただきました。
-取材日は撮影で、集まったのは今回で3回目。「三人娘」は聞いていた評判との違いは。
醍醐 思っていたよりみなさん話しやすい。最初の頃は緊張していましたが、もう3回目ですけど、緊張しないでしゃべれるようになりました。
-ある選手からは「イジれるかも」と話が出ていた。
醍醐 すでにイジられているかもしれません。ほら、写真を撮ってるし(笑)。※取材を受けている様子を東城選手が撮影。
-雀士として、このMリーグ5年の戦いをどう見ていたか。
醍醐 本音を言うと、僕は自分の麻雀に自信を持っているタイプ。Mリーグはいろいろな方に見られて、知名度とか影響力という意味では最高峰で間違いないと思いますが、最高峰のリーグに「僕がいないのはどうなの?」と自分で勝手に思っていました。
-それは純粋に雀力の点においてか。
醍醐 はい。
-入れば活躍できるという自負がある。
醍醐 はい。あります。
-自団体の戦いぶりを見ても、そう思うか。
醍醐 ルールがそれぞれの団体とやられているルールと違うので、何とも言えませんが、ルールの適性を考えると大丈夫かな、と思っています。
-Mリーグだけ見てきたファンに向けて、自身のセールスポイントを紹介すると。
醍醐 ひと言で言えば本当にオーソドックスで、アガリ率が高くて放銃が少ない。ですが、パッと見14枚の中から「何を切る」というのは他の人と違うというか、「変わっている」と言われることが多いです。ただ、必ず理由があるので。「何で、この牌を切ったのかな?」とか、考えるきっかけに感じてもらえれば、すごくありがたいと思います。
-変わっているというのは、どちら方面に言われることが多いか。
醍醐 僕はまず、リーチのみを打たないんですよ、ほとんど。だから手組み上、「効率的にはこれだけど、これを切っちゃうとリーチのみになるルートがあるな」と思ったら、それはいかない。そういうところが「変わっているな」となるでしょうし、自分がアガれない時は「この人にアガってほしい」とか、「この人にアガってほしくない」とかがあります。だから、その人がアガりやすい環境を作ったり、アガりにくい環境を作ったり、というのを考えながら打つので。たぶん、そういう人はあまりいないと思います。なので、「何で、この牌が出てくるの?」ということはよくある感じです。
-自分の出番ではない時の、アガる人の選択というのは条件戦のよう。
醍醐 麻雀は基本的に条件戦なんですよ、ひと半荘で考えると。自分が2着目の時は3着の人にアガられないようにしたりとか、いろいろあるので。
-その点、トップが偉いルールではありつつも、着の並びもシーズンを通して意識して打つか。
醍醐 トップが偉いというか、2着から1着になるのか、2着から3着の倍というだけで。1着順分か、2着順分かの違い。どうしてもトップを取りたいというか、常にベストのポイントを取れるような選択をしていくという感じになると思います。
-チームメイトを除いた32選手で、戦いたい相手は。
醍醐 戦いたいのは鈴木大介さんですね。最強戦で当たっていまして。すごくたくさんの方が見てくださって、大介さんに負けた時に、「あれ、惜しかったね」とか「引き負けたね」とかいろいろ言われて。「次に会う時は勝てるといいね」みたいな感じ。鈴木大介さんをボコボコにすると、僕のファンはすごく喜んでくれると思うので、一番当たりたいのは大介さんですかね。一番興味があるのは渡辺太。たぶん何年後かには麻雀界で最強になっていると思いますが、あと5年10年くらいは「壁として頑張らないとな」と勝手に思っているので。興味があるのは渡辺太ですかね。
-将棋の棋士でもある鈴木大介選手に関してはいろいろと意見がある。麻雀一本で生きている人の中には「そこには負けられないぞ」とはっきり言う人もいる。
醍醐 僕は、そういうことはなくて。鈴木大介さんとは昔、麻雀の話をしたことがあるんですよ。そこらへんの麻雀プロか、それ以上にはいろいろと局面も覚えているし、きちんと考えて選択されている方なので。Mリーグの舞台には立ってもおかしくはないと思います。
-純粋に強者としての興味か。
醍醐 鈴木大介さんは興味がどうこうというよりも、倒したい相手というか「倒すと喜んでくれるかな、みんなが」というイメージです。
-渡辺選手に関しては、いろいろな方から評価が高くて、いろいろな表現がある。
醍醐 彼はネット麻雀で名前がある選手ですが、ネット麻雀での対戦とか牌譜を見たりとかはたぶんMリーガーの中では一番、していると思います。ネットの土俵で、というか。そこで受ける印象と、今同じ団体に入って勉強会をしていますが、実際に打つと少し印象が違います。やはりリアルの方に慣れきっていない。ネットの雀力をそのまま持ってきている感じではありませんが、ただそういうのは慣れであったりとか、相手への対応力だったり。Mリーグはリーグ戦なので特定の相手と当たる。ネット麻雀は不特定の相手と当たるので、バランスが全然違います。そういうのも彼は頭がいいので合わせてくるでしょうから、何年後かにはリアルの方でも打つ感じになる、と期待しています。ただ、彼に「みんな、弱いな」と思われたら嫌なので、何年かは「この人に勝ちたいな」と思われる存在でいたいと思います。
-自分がMリーグに入ったところで、どのくらいの成績が残せるか。
醍醐 近藤監督には「500ポイント勝ってね」と言われていますが、500ポイントを勝つのは20何回では無理なので(苦笑)。ただ、200から300は勝ちたいと思っています。ただ、こればかりはやってみないと。100回出られるのでしたら200から300は大丈夫だと思いますが、20数回では。必ずとは言えませんが、ただ、チームに貢献できるだけの数字は残さないとな、と思っています。
-その他、近藤監督から言われていることは。
醍醐 特にないです。「チームメイトとうまくやってね」とか、ポーズとか、終わった後のインタビューとか「頑張ってね」みたいな。「いつまでも初々しい感じではなくて、慣れていってね」みたいな感じのことは言われました。
-会場に足を運ぶことなど、大きく生活が変わるが、日頃のリフレッシュ方法は。
醍醐 リフレッシュというか、僕は寝付きが基本、悪くて。今も対局の前はサウナに行って、グッスリ眠れるようにします。ただ、Mリーグは夕方から始まるので、そんなに寝付きに関しては心配していません。サウナは前の日が空いていたら、絶対に行くと思います。
-近藤監督からは「チームの『親戚のおじさん』になってほしい」と言われた。
醍醐 「娘たちを可愛がる立ち位置でやってくれ」ということだと思います。
-ある程度の距離感か。
醍醐 僕は基本的に人間関係で距離を取る方。どちらかと言うと、逆の意味っぽいと思っています。ただ、茅森さんは先輩なので。4年くらい前に入ってやられている方。茅森さんには一生、敬語だと思いますし、おじさんという感じはないと思いますけど。先輩ですし、有名選手ですし。
◆Mリーグ 2018年に全7チームで発足し、2019-20シーズンから全8チーム、2023-24シーズンからは全9チームに。各チーム、男女混成の4人で構成されレギュラーシーズンを戦い、上位6チームがセミファイナルシリーズに進出。さらに上位4チームがファイナルシリーズに進み優勝を争う。優勝賞金は5000万円。
(ABEMA/麻雀チャンネルより)