将棋界の早指し団体戦「ABEMAトーナメント2023」本戦トーナメント準決勝・第1試合、チーム永瀬とチーム天彦の対戦が9月9日に放送された。決勝進出をかけた大一番では、優勝経験のあるチーム永瀬が盤石の強さを見せつけ、チーム天彦を圧倒。リーダーの永瀬拓矢王座(31)自ら3戦全勝でチームをけん引し、最終スコア5勝2敗で3大会ぶりの決勝へ駒を進めた。この結果、チーム永瀬が決勝の舞台へ一番乗り。どちらも優勝経験を持つチーム藤井とチーム稲葉の勝者と決勝戦を戦う。
強さこそ正義。勝利を妥協無く追い求めるチーム永瀬が、盤石の指し回しで3大会ぶりの決勝進出を決めた。運命の準決勝では、第1局でチームの勝ち頭でもある増田康宏七段(25)がチーム天彦の三枚堂達也七段(30)に210手の長手数の一局で勝利。増田七段が引き込んだ流れに乗り、続く第2局では本田奎六段(26)が戸辺誠七段(36)を破った。
2連勝の勢いに乗り、第3局では永瀬王座が相手リーダーの佐藤天彦九段(35)と激突。横歩取りの出だしから、永瀬王座が△9四歩と距離をはかるような工夫を見せてペースを握った。激しい攻め合いとなったが、受けの名手でもある永瀬王座の手堅さが光り快勝。チーム全員で3連勝とスタートダッシュに成功した。
しかしチーム天彦にとっても初のベスト4の舞台とあり、簡単には折れない。第4局は好調の増田七段と戸辺七段との対戦となったが、「踏み込み過ぎて詰まされてしまった」と増田七段がまさかの頓死。チームに不穏な空気が流れた。しかし、チームのピンチを救うのがリーダーの役目。永瀬王座が第5局を担うと、三枚堂七段との横歩取りの一局で手堅く押し切り勝利。チーム勝利に“王手”をかける大きな1勝を持ち帰った。
第6局では、本田六段が相手リーダーとの対戦に臨んだが、佐藤九段が「ここで終わってしまうとチームも終わりになってしまう」と奮起し本田六段を圧倒。チーム永瀬は4勝2敗となった。
流れは絶対に渡さない、と第7局では永瀬王座が3度目の登板。戸辺七段得意の中飛車の出だしから、相穴熊戦へと展開した。桂馬と銀が飛び交うスリリングな展開から、互いの穴熊のはがし合いへ。削り合いの激戦となったが、永瀬王座が攻防に手厚く押し切ってチームの勝利を決めた。終局後には「(自分が)後手番をメインに指して先手番で2人に勝っていただくというプランだった」ことも明かし、本戦では後手番の7局で無敗記録を継続している。
3大会ぶりの決勝進出を決めた永瀬王座は、「一局一局複雑で勉強になる将棋ばかりで、どの結果がひっくり返っていてもおかしくなかった。一日を通して大変な時間が長かった」と総括。目指す頂点に向けて前進したことにホッとした笑顔も見せていた。しかし、「チーム稲葉、チーム藤井、チーム永瀬はどのチームも優勝経験がある。どちらのチームが来ても大変な相手なので、それまでにしっかり準備して勝負できるように。団体戦で2回優勝したチームはないので、2回目の優勝を目指したい」と気を引き締めていた。
◆ABEMAトーナメント2023 第1、2回が個人戦、第3回から団体戦になり、今回が6回目の開催。ドラフト会議にリーダー棋士14人が参加し、2人ずつを指名、3人1組のチームを作る。残り1チームは指名漏れした棋士が3つに分かれたトーナメントを実施し、勝ち抜いた3人が「エントリーチーム」として参加、全15チームで行われる。予選リーグは3チームずつ5リーグに分かれ、上位2チームが本戦トーナメントに進出する。試合は全て5本先取の9本勝負で行われ、対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行われる。優勝賞金は1000万円。
(ABEMA/将棋チャンネルより)