熱い気持ちのこもったラストスピーチが、視聴者の心を震わせた。将棋界の早指し団体戦「ABEMAトーナメント2023」本戦トーナメント準決勝・第1試合、チーム永瀬とチーム天彦の対戦が9月9日に放送された。佐藤天彦九段（35）率いるチーム天彦は、“常勝軍団”のチーム永瀬を相手に最終スコア2勝5敗で敗退。ベスト4で今大会を去ることとなった。メンバーの戸辺誠七段（36）は、エンディングで仲間への思いを問われると「泣きそうになりますね（笑）」。約半年間のチームでの活動を振り返り、チームメイトとファンへ感謝の気持ちを伝えた。
今期のチーム天彦は、佐藤九段が「普段から親しんでいる棋士」というコンセプトの元、三枚堂達也七段（30）と四段昇段同期の戸辺七段を指名。3人の名前の頭文字から取った『天辺堂』をチーム名とし、過酷な戦いへ臨んだ。予選Cリーグでは早速そのチーム力を活かし、堂々の1位通過。2期連続3回目の本戦へと進出した。初戦となった2回戦・チーム羽生との対戦では戸辺七段が3戦全勝の大爆発でチームをけん引し、初の4強入りを決めた。
準決勝では、“常勝軍団”のチーム永瀬と対戦。3連敗スタートと苦しい立ち上がりとなったが、常に笑顔の明るいチームの雰囲気を保ち続けた。第4局では、戸辺七段が相手の増田康宏七段（25）の一瞬の隙を突き待望の初勝利。さらに1勝4敗の窮地では佐藤九段が「ここで終わってしまうとチームも終わりになってしまう」と気持ちを奮い立たせ勝利をもぎ取って見せた。第7局で戸辺七段が相手リーダーの永瀬拓矢王座（31）に敗れたことで、チーム天彦は2勝5敗で敗退が決まった。
エンディングでは、戸辺七段の熱い気持ちがこもったスピーチが話題となった。
「私にとってこの大会は、（ドラフト会議の）実況から始まっているんですよね。そこで天彦リーダーにサプライズ指名を受けて『まさか』という感じで始まりましたが、一戦一戦チームでお互いを高め合いながら成長できたかなと思っています。私としてはかなりベストに近い状態でパフォーマンス出来たのかなと思っています。ただ、最終戦は自分でもエキサイティングしていましたが、『勝ちたかったな…』という思いと『リーダーに申し訳ないな』という気持ちがあります。
チームで集まってお茶をしたり、チーム動画でダーツをした時もかなり盛り上がりまして楽しかったです。練習ももちろんですが、試合以外の部分でも普段から連絡を取り合って、チーム力というものを高められたと思っています」
さらに、司会の加藤桃子女流四段（28）から仲間へのメッセージを問われると、「これはなんか泣きそうになりますね（笑）」とポツリ。少しの間を置いた後に、佐藤九段と三枚堂七段への思いを語った。
「リーダーの天彦さんには、まず指名して頂いたことに感謝ですね。四段昇段が同期で、若い頃から一緒にトップを目指してやってきた同士で熱い気持ちをやってきましたが、十何年経ってまた一緒にトップを目指して戦うという、10代の時の熱い気持ちがよみがえってきた感じで、公式戦にも良い影響があったという面でもリーダーに感謝です。そして、三枚堂さんはいかなる時も堂々としていてスマートで、後輩なんですけど頼ってしまっていました。アドバイスや、チームが迷った時に『ここはこう行った方がいい！』とスパッと決めてくれるような一面もあったりしたので、この3人で戦えて幸せでした。感謝ですね」
この熱い気持ちが込められたスピーチはファンの心も大きく揺さぶった様子。ABEMAのコメント欄には「このチーム好きでした」「戸辺の日は忘れない」「泣いていいよw」「いいチームや」「やだ泣いちゃう」「青春やな」「いいなあ」「ぐっとくる」と多くの感想が寄せられていた。
◆ABEMAトーナメント2023 第1、2回が個人戦、第3回から団体戦になり、今回が6回目の開催。ドラフト会議にリーダー棋士14人が参加し、2人ずつを指名、3人1組のチームを作る。残り1チームは指名漏れした棋士が3つに分かれたトーナメントを実施し、勝ち抜いた3人が「エントリーチーム」として参加、全15チームで行われる。予選リーグは3チームずつ5リーグに分かれ、上位2チームが本戦トーナメントに進出する。試合は全て5本先取の9本勝負で行われ、対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行われる。優勝賞金は1000万円。
（ABEMA／将棋チャンネルより）
