大きく険しい峠を越えた経験を活かし、次は頂点を目指す。TEAM雷電は2022-23シーズン、ファイナルシリーズ進出を逃せばレギュレーションによりチーム構成を変更せざるを得なかったが、結果は見事に初のファイナルシリーズ進出を果たし、3位でフィニッシュした。ベテランでありチームの支柱である瀬戸熊直樹(連盟)にとっても、1つ大きな結果を残し、安堵したシーズンでもあった。今シーズンは足かせもなく、気持ちよくスタートが切れることもあり、目標をしっかりと頂点に定めた。ファイナルの舞台を踏んだチームとして堂々と「もう優勝争いをしなければいけない」と誓った。
【映像】Mリーグ2023-24シーズン 開幕直前インタビュー
-2022-23シーズンの振り返りを。
瀬戸熊直樹(以下、瀬戸熊) (選手入れ替えの)レギュレーションに引っかかっていたので、そこに向けて最大限の努力ができました。チームの最低ラインはクリアできたんじゃないかと思います。ファイナルに関してはチームのみんなが次のシーズンにつながるものになればいいと思ってやっていました。勝ち負けよりも経験することが大事だと思ったので。
-レギュレーションにかかっていた半年というのは重いものだったか。
瀬戸熊 僕自身想像していたんですが、想像の数倍きつかったですね。必ず1人以上を入れ替えだし、その前のシーズンがひどすぎて、チーム解体も免れないような状況だったので。僕の麻雀人生ではいい経験だったけど、二度とやりたくないくらいのプレッシャーを感じていました。
個人戦だと惜しくても一緒なんですよ、次のシーズン頑張ればいいと切り替えられる。チームの場合ではそういうわけにはいかない。ファンがついている。負けるにしてもやり切った負けを見せなければいけない。勝つにしてもドラマチックな勝ちを見せなければいけない。そういう意味では毎年毎年続いているんだなという感じはしました。
-本田朋広選手の活躍は大きかった。
瀬戸熊 レギュラーシーズンで勝てたのは本田の力が大きかったですね。本田の貯金をみんなで活かしながらという感じでしたから。困った時は本田がトップを取って帰ってきてくれるという感じでした。
-レギュラーシーズンを突破してからの4人の雰囲気は。
瀬戸熊 まず萩原さんが体調不良で出られないということがセミファイナル前日にわかりまして、3人で何とかしなければいけないということで、萩原さん帰ってくるまでは頑張ろうという形でまとまりました。
4人いればどうしても甘えもあると思うんですよね。調子いい人が行けばいい。少ない人数になると行くしかないので。勝とうが負けようが必ず自分の責任になる。そういう意味では集中できました。(萩原選手が)戻ってきた時にすごく負けていたり、重要な場面だったりするとその選手にとって余計プレッシャーがかかると思う。とにかく戻ってきた時にいい報告をしようということでまとまったと思います。
ファイナルが終わった時、僕は3位でも4位でもいいと思ったんですけども、その最終戦を黒沢さんが経験できるということがプラスになると思っていました。勝ったことは本当に嬉しいですけど、僕は結果は気にしていなかった。しかも相手がMリーグでも強いと言われている勝又選手だったので、勝又選手相手に戦えたことが黒沢さんにとっては財産になったと思います。
-ファイナルに出場した経験が、今期はどのようなところに出てくれば良いと考えているか。
瀬戸熊 ファイナルに行くことは当たり前の話になったので、じゃあ勝つためにはどうしたらいいか。今度は本当に優勝を目指してみたいと思っていますし、負けている段階で優勝を目指すといってもちゃんちゃらおかしい話ですから。
やっぱり麻雀って経験なんですよね。レギュラーシーズンで調子が良かった人がセミファイナルやファイナルで調子を崩したり、逆にレギュラーシーズンで調子が悪かった人が良くなったりして、やっぱりキャリアが出ちゃうんですよ。
プレッシャーがかかったり、その人にさえ負けなきゃいいとかいう場面で経験の差が出るので、チームとして経験が積めたことは大きいです。1000点でも価値ある1000点があるし、意味ない満貫だったりする時もある。むしろアガがらない方がよかったという満貫もある。これは条件戦でしか現れないので。レギュラーシーズンであれば、満貫をアガれば必ず素点に8ポイント加わるわけですし、チームにも自分の点数にも加わるわけですけど、条件戦になると価値のない満貫が出る。意識をどこに向けるかということですね。レギュラーシーズンですとトップを目指すんですけど、ダメだったら2着。2着がダメだったら3着となるんですが条件戦だと全然違う。条件戦だとトップだろうが2着だろうが対戦相手に条件を突きつけていればそれで勝てる。そういった意味では違うと思います。
(レギュラーシーズンを)先頭に立って逃げちゃった場合はどういう心理状態になるのか、そこでどれだけ気楽に打てるようになるかどうか、未経験なところもあるんですけど、そういうところが個人戦で自分はわかっています。先に逃げちゃうと終盤になればなるほどノーマークになれるので、その気楽さがある位置には逃げたいと思います。
-新チームの印象については。
瀬戸熊 モチベーションはどのチームよりも高いですよね。猿川とは長年(連盟)Aリーグとかでやっているんでわかります。菅原さんもここ何年かで強くなっていると思いますし、中田さんも活躍をしているし。何と言っても鈴木大介さんは最強戦をファイナルで戦いましたけど、プロをなぎ倒してきた方。一発勝負に強いのもわかっているので、すごく魅力あるチームだし怖いと思います。
鈴木さんは異質だと思いますけど考えていることはわかっている。逆に鈴木さんみたいに全面的に戦いを挑んでくる選手はMリーグにはそんなにいなかったので、僕としては歓迎する感じですよね。鈴木さんって誰よりも牌理に明るいと思うんです。その鈴木さんが牌効率を関係ないと声を大にして言ってくれている。これは僕にとってはプラスに作用している。麻雀プロが「牌効率は(勝負に)関係ない」というのはなかなか受け入れられない世界だった。でも鈴木さんが言うと説得力が増すんですよね。頭脳明晰なことがわかっているので、数字にも明るくて何よりも論理的に考える人がそこは関係ないと声を大にしていってくれるというのは僕にとってプラスになります。
-数字ではない別の戦いがMリーグにはある。
瀬戸熊 根っこにはその考え方があるので、逆にちょっとやりやすくはなるかなと思っています。
-チーム構成が変わったチームは、次の年度の成績が大きく変わるか。
うちも本田が入ってきた時に▲1256.1をしている。新しい選手が入ってくるってことはバランスが壊れる可能性がありますね。ドリブンズさんもそうですが強い人が加入したからと言って強いチームになるとは限らない。1人入れ替わるだけでも別の異質のチームになる。
マイナスに作用しているとは言わないですけど。例えばサッカーでも日本代表の選手でもクラブチームの方が機能するじゃないですか。それはチームとしてのシステムがしっかりしているから。日本代表は日本で上手い人11人を集めているはずなのにクラブチームに負けることもある。それはやっぱり噛み合わせなんです。代表の11人が長い年月をかければ日本で一番強いチームになるんでしょうけど、日々やっているチームの方が強かったりもする。EX風林火山も優勝した次の年に松ヶ瀬さんが入ってきたけど、チームとしては優勝ではなくなってしまった。これも不思議なところですよね。こうやって見ていただくと個人はそれぞれ活躍する人が出てくると思いますが、チームとしてどうなのかわからないです。
-改めて今シーズンの目標は。
瀬戸熊 これはもう優勝しかないですね。目指せると思いますしもう優勝争いをしなければいけない。自分の中でどうすればここにたどり着くかというのがわかったので、チーム最年長の僕がみんなをうまくムードを作りながらこうやっていこうよ、とするのが自分の役割ですね。
優勝シャーレを取るところになったら、僕も未経験のところがあるのでそこは楽しみですね。その時は4人が4人でこれまで培ってきたものを集結させて頑張っていければいいんじゃないかと思います。
-開幕日に試合がある。
瀬戸熊 開幕戦に対してという特別な思いはなかったですが、BEAST Japanextさんと当たるというのは楽しみだと思います。あとはこれまでレギュラーシーズンは週に2日ずつだったのが1日の時もあるので、そこはまた自分の中でルーティンを考えなければなと思っています。ファイナルみたいに週に2回も3回も出なければいけない時があるけれども、逆に言えば2週間が空いちゃうとかそういうゲームも出てくると思うので、そういう調整は考えなければいけないです。
-シーズン中のルーティンに関して心がけていることはあるか。
瀬戸熊 体調管理だけですね。シーズンが始まると夜型になっていくんですけど、なるべく体内時計を壊さないとか。決まった時間に起きて、決まった時間に寝て、決まった時間に食事を取るというのをやっていくと、自分の体の異変に気付くんですよ。むちゃくちゃ不規則に過ごしていると、だるいことが本当にだるいなのか、ただの不摂生なのかよくわからない。時間を決めて動くことによって、体の調子がおかしいということに気づきが早くなる。それは崩しちゃいけない。たとえば2週間空いていたらじゃあ夜更かししちゃおうとか、試合が近づいたら戻せばいい、とかそういうものではない。自分の中で決めた時間は守ろうとしています。
◆Mリーグ 2018年に全7チームで発足し、2019-20シーズンから全8チーム、2023-24シーズンからは全9チームに。各チーム、男女混成の4人で構成されレギュラーシーズンを戦い、上位6チームがセミファイナルシリーズに進出。さらに上位4チームがファイナルシリーズに進み優勝を争う。優勝賞金は5000万円。
(ABEMA/麻雀チャンネルより)