普段は見る機会のない他人の給与明細書。さまざまな職種の人たちから、その給与明細書を買い取り、公開しているサイトがある。驚くべき高収入な仕事、大変そうなのに賃金が安すぎる仕事とは?
【映像】大手アニメ制作=手取り14万円 郵便配達員はその3倍!?
物価の変動を反映した7月の実質賃金は、物価上昇の影響が続き16カ月連続のマイナスとなっている。年々減っていく実質賃金だが、他人の給与は気にならないだろうか。給与明細書を買い取り、SNSやブログで世間に公表している、「給与明細買取屋さん」というアカウントがある。
買取額1000円という値段の安さから、提供者側の暴露の意味も込めてか、区議会議員、パイロット、カフェチェーン店長など様々な職種の給与明細が集まり、公開されている。
中でも特に反響の大きかった給与明細をまとめた。どのような職業の人がどの程度稼いでいるのだろうか?
【郵便配達員】
外を歩けばよく見かける赤バイク。雨の日も雪の日もひたすら配達をこなす仕事だが、入社15年目の30代男性の給与明細を見てみると、総支給額は57万4000円、手取り45万5200円、年収は750万円だ。
1日あたりの配達数は500~1000通ほどだという。体力に自信がある人にとってはなかなか高収入な仕事ではないだろうか。
【国税局の職員】
国の財政基盤を支える税のスペシャリスト。大卒20代男性の給与明細は、総支給額は25万8000円、手取り20万3600円、年収は410万円ほど。
現在は税務署勤務で普段は定時で帰れるが、確定申告期間は50~60時間ほどの残業になるという。ノルマはあまりなく、ゆるめに働けて給与もきちんともらえるという。
【外資系IT企業】
外資系IT企業の営業職で働く20代後半の女性。彼女の給与明細を見ると、総支給額は227万円、手取り159万1400円、年収は副業も含めて、なんと3160万円!
英語が話せて営業もできる女性として重宝され、転職を繰り返すたびに年収はアップしてきた。現在は、1日8時間勤務で残業なし。土日にコンサルの副業をし、本業で2800万円、副業で360万円稼いでいるといい、現在は婚活中で希望は「自分より年収が上」のパートナー。
【通信制高校の教頭先生】
教育学部を卒業し、通信制高校の教諭となった男性。副キャンパス長となった彼の給与明細は、総支給額24万1000円、手取り19万1750円、年収300万円。
通信制だが、生徒が毎日登校する学校なので、全日制高校と業務量はほぼ変わらず、彼自身は60名の担任生徒を抱えているため、昼休み返上で働いているそうだ。体力的にも精神的にもきつく、自分の給与明細こそ「教育業界の闇」だと話す。
【アニメ制作会社】
大手アニメ制作会社に新卒で入社した20代男性。朝から晩まで膨大な作業をこなす彼の給与明細は、総支給額17万430円、手取り14万4555円、年収なんと216万円。
日中はデスクワークをし、夜から朝4時頃までアニメーターの原画回収、土日返上で働き詰めだという。残業時間が1日12時間と半端ではなく、精神を病み退職してしまったそうだ。
さまざまな職種の給与明細を公開し続ける「給与明細買取屋さん」。実は、アカウント主自身はオーナー社長だという。給与明細を公開する思いをこう語る。
「日本人は給与や税金などお金の話を避けがちで、学ぶ機会がほとんどない。長時間労働やパワハラにさらされ、上層部に搾取されっぱなし。かたや同じような仕事でも、外資系企業に転職すれば30代で年収1000万円も夢ではないし、起業という道もある。こうやって色々な職業の給与をオープンにすることで、労働者が搾取されがちな社会の空気を変えていきたいと思っている」
下がり続ける実質賃金について、東京工業大学准教授の西田亮介氏に話を聞いた。
━━マイナスが続く実質賃金についてどう思う?
「チェーンのハンバーガー屋さんで1000円近いセットもざらになっていて、ものすごく物価高を感じる。日本の場合、仕事をしている人の9割近くが就業者(雇われて働いている)で、この実質賃金が目減りすると多くの人たちは当然、以前より生活が苦しくなっていると感じているはずだ」
━━給料を上げるには転職しかない?
「転職に関する研究では、3回くらいまでは給与が伸びていくと言われている。ところが、転職回数が多くなっていくと賃金が下がってしまう。ところで給与は高い方がいいとなりがちだが、僕はそうでもないと考える。家族がいる・いないとか、低い年収でもいつの日か“自分の作品”で当てるチャレンジングな人生がいいのか、堅実に家族を育てていくのか。理想の働き方は人による。目先の賃金も大事だが、豊かな人生の形は多様で、人と比べるようなものでもないはずだ」
(『ABEMAヒルズ』より)
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