9月24日(日)さいたまスーパーアリーナで開催された「RIZIN.44」。今大会ではRIZINの最激戦区=フェザー級で熾烈なサバイバルマッチが繰り広げられた。
ヴガール・ケラモフが第4代王者として頂点に立つRIZINフェザー級は、斎藤裕・牛久絢太郎・クレベル・コイケの歴代王者をはじめ、朝倉未来や平本蓮など人気と実力を兼ね備えた選手がひしめくRIZIN屈指の激戦区だ。
11月4日のRIZINアゼルバイジャン大会では王者ケラモフvs挑戦者・鈴木千裕によるタイトルマッチが組まれ、今大会でもタイトル戦線への生き残りをかけたクレベルVS金原正徳、牛久vs萩原京平、中原由貴vs白川陸斗、摩嶋一整vs横山武司など4試合が行われた。
対戦カード発表時からコアなファンの間で“裏メイン”として注目を集めていたのが摩嶋vs横山の寝業師対決だ。前日計量で摩嶋がリミットを200gオーバーしたため、66.2kg契約に変更されるアクシデントがあったものの、試合は期待通りの濃厚な寝技の攻防となり、キャリアで勝る摩嶋が横山を振り切った。
朝倉兄弟の同門でもある白川は約2年ぶりの復帰戦で、ONE Championshipにも参戦経験のある実力者・中原と対戦。2Rに白川がヒザ蹴りであわやの場面を作れば、中原も粘り強いパンチとタックルで攻め続けるなど、スリリングな攻防が続き、中原が白川から勝利をもぎ取った。
勝った摩嶋が「上にいるやつらを全員で極めたい」、中原が「下から突き上げてトップどころをかき乱したい」と上位陣への対戦をアピールするなか、第2代王者・牛久と4月のRIZIN.41で強豪カイル・アグォンに勝利した萩原が激突。海を渡りATT(アメリカン・トップ・チーム)で練習を重ね、堀口恭司をセコンドにつけた牛久は、原点回帰といえるテイクダウンを軸にした戦いぶりを披露。成長著しい萩原の持ち味=打撃を潰す危なげない試合運びで復帰戦を判定勝利で飾った。
そして、この日最大のサプライズになったのはクレベルvs金原のメインイベントだ。6月のRIZIN.43では計量失敗により、タイトル剥奪という処置を受けたクレベルだったが、試合そのものは鈴木千裕に一本勝ち。決して試合に負けて王座を失ったわけではなく、その技術に衰えはない。
そんなRIZINフェザー級最強の寝業師・クレベルに対し、40歳のベテラン金原はなんと寝技での真っ向勝負を仕掛ける。1Rにクレベルのギロチンチョークでピンチを迎えた金原だが、それを凌ぐと2Rには肩固めのプレッシャーをかけながらクレベルの上体を固めてパスガードを仕掛け、マウントポジションを取りかける場面も。3Rも寝技でクレベルを攻め込み、バックやマウントを取りかけるなど柔術的な動きでもクレベルを圧倒し、見事に元王者のクレベルから勝利を収めた。
試合後に「僕は誰々と試合が決まったから打撃を練習します・寝技を練習しますということではなくて、MMAをずっと積み重ねてコツコツやってきた、本当にそれがこの試合に出た」と語った金原だが、この試合で効果的だった肩固め&上体を固めるパスガードは金原がキャリア初期から得意にし、UFC参戦時(2014年~2016年)にも多用していた必殺技でもある。
RIZIN榊原信行代表も「メインに関していえば、まさに有言実行。金ちゃんが20年のキャリアをかけて、血と汗と涙で積み上げてきたものが結実したと思います。みんなクレベル相手にグラウンドに行ったらやられるという先入観があるなか、あえてグラウンドでいく作戦を遂行して、素晴らしいものを見せてもらいました」と金原の勝利を絶賛。「現時点で言えば(次の挑戦者は)金原選手でいいと思う」と金原が事実上のRIZINフェザー級ランキング1位だと位置づけた。
こうなると俄然気になるのが今後のタイトル戦の行方だ。前述の通り、11月のRIZINアゼルバイジャン大会ではケラモフvs鈴木のタイトルマッチが組まれており、榊原代表曰く、朝倉・平本・斎藤は「みんなメンタルをオーバーホールしている時期で、本人たちの中から戦いたいというタイミングが来ると思う。今は少し距離を置いていて、これから何をどう見せるかは話し始めていきたい」という状況。萩原に勝利した牛久は試合後に「アメリカで練習していて、トップを目指すなら階級のことをシビアにならないといけない」と階級変更を示唆している。
この現状を考えるとケラモフvs鈴木の勝者に金原が挑むことになり、その舞台は最速で大晦日ということになる。金原がキャリアの集大成でつかみ取った勝利でRIZINフェザー級が大きく動き出した。
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