“タクシードライバー80歳上限”が波紋 免許返納動きに逆行? 「自分はもう迷惑をかけない」自主返納者の思いは
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 国土交通省が公表した規制緩和案が波紋を広げている。現在、75歳である個人タクシー運転手の年齢上限を、地域によっては80歳にするというのだ。

【映像】歩道走行に逆走…高齢ドライバーによる危険運転の実例

 確かにタクシーの運転手不足、過疎地での路線バスの撤退など地域の足が失われることが問題となっており、その対応策の1つとされている。しかしSNSでは、高齢者に免許返納を勧めながらタクシーの運転を認めるのは矛盾している、という声が相次いでいる。

 “人生100年時代”において運転は何歳までが適切なのか。『ABEMA Prime』で、免許を返納した当事者を交え議論した。

■「人生100年時代。80歳でプロのドライバーがいてもおかしくない」

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 高齢者安全運転支援研究会会員で道路交通評論家の中村拓司氏は「そもそも20年くらい前までは、100歳に近い人たちが運転するということがなかった。人生100年時代で、80歳で運転するという方はこれからたくさん出てくる。その中ではプロのドライバーがいてもおかしくない状況だと考えている」と話す。

 現状の免許更新では、70歳以上は2時間の高齢者講習、75歳以上は該当者の運転技能検査や新認知機能検査を受ける。一方、更新頻度は72歳以上が「3年に1回」で、年齢を重ねても変わりはない。

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 中村氏は「高齢者の運転免許人口が増えてきたことに伴って、事故も目立つようになってきた。また、75歳は認知機能が衰えるかどうかの境目で、認知機能検査が導入された経緯がある。確かに(更新頻度は)3年でいいのかどうか。認知症は数カ月でなってしまったり、1年でうんと進んでしまう方もいらっしゃる。そこは運転免許とは別の視点でしっかりとした検査が必要になってくると考えている」との見方を示す。

 中村氏は、認知症予防の観点から「無理して免許返納すべきではない」と主張している。「運転は目と耳、それから五感で情報を得て、“信号が黄色から赤色に変わった。ということはブレーキに足を移さなければいけない”など、脳と身体をフルに活用する。高齢医療の専門家の皆さんも“認知症予防に運転は効く”とおっしゃっているし、運転をやめると今まで平気だった人が認知症になってしまう事例もあると聞いている。やはり車の運転は認知症予防には効果的だということは言えると思う」とした。

■「高齢者の事故を見た時の、“自分はもう迷惑をかけない”という安堵感」

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 60代後半に免許を返納した、調布市高齢者免許自主返納推進市民会議代表の山添登氏(88)は「7年前、高齢者の車が登校する小学生の列に突っ込んだ。“これは大変だ。誰かが免許を自主的に返納して安心の街づくりをしなくてはならない”と、調布から全国に発信しようと思った」と活動の経緯について説明。

 「免許証返納は憲法で認められた権利で、『自主的に返納しなさい』とは言えない」とした上で、「70代は2年に1度、80代は1年に1度更新すると同時に、ドライブレコーダーなどで“あなたの運動神経はこうなんだよ”という状態を示して、自主的に返納してもらうのはどうか」と提案する。

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 免許返納のメリットとしては、「高齢者の事故を見た時の、“自分はもうああいうかたちで家族やみんなに迷惑をかけない”という安堵感が一番。そして、それをみんなに伝えられる。特に教養のある親こそ『自分は大丈夫だ。自信満々だ』と言うが、各家族で子どもたちがヒヤヒヤしている。だから、我々は年寄りを孤独にさせないでいろんな自治会に入れたり、自主返納する活動を行政と一緒にやっている」と述べた。

 株式会社EXx取締役CTOのTehu氏は、都会と田舎では交通事情が異なるとし、「免許返納は都会こそ最優先でやらなくてはいけない。操作ミスが起こった時、目の前に人がいる確率は圧倒的に都会のほうが高いからだ。一方で、認知機能検査にも限界があると思っている。運転後のエコドライブ判定があるように、“あなたの運転はヤバいぞ”とスコアリングを蓄積して、毎日が免許テストになればいいのでは。そういう管理のほうが合理的だし、みんな納得できると思う」との考えを示した。

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 山添氏は「自分も“85歳は高齢じゃないだろう”と思っていたが、いざなってみたら、1週間見ない赤ちゃんが成長しているように1日1日高齢化していると実感する。田舎は生活圏の問題があるが、なんとかして安全安心の街を作っていきたい」と訴えた。

■規制緩和の前にできることも?

 規制緩和案についてTehu氏は「法律を変えるだけでできるような、国交省の役人がまず考えることとしてはすごくわかる。それでも焼け石に水という問題だが、どうしようもないわけでもない。例えば、田舎にはスクールバスがたくさん存在しているが、8時台と15時台以外は暇なので、その間に通院のサポートなどをしてもらう。ただ、そこは教育委員会と市の交通課という管轄の違いで、お互いにやることができない。そういうところをうまく使えば、UターンIターンで帰ってきた高齢のタクシードライバーに期待するような、回りくどいやり方の前にできることがあるのではないか」と指摘する。

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 中村氏は「高齢者が事故を起こしやすい場所は比較的明らかになっていて、交差点やカーブ、丁字路などだ。その場所・地点になんらかの対策を施せば、事故は減らせるのではないか。行政がもう少し本気で、今ある道路を高齢者にフィットさせる必要があるとも考えている。今まで道路作る人も、車を作る人も若かったものだから、そこが抜けていたのではないか」と投げかけた。(『ABEMA Prime』より)

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