9月24日(日)さいたまスーパーアリーナで開催された「RIZIN.44」。今大会でフライ級転向2戦目を迎えた山本アーセンは福田龍彌と対戦し、3RにTKO負けを喫したものの、今後の可能性を感じさせる試合を見せた。
アーセンは2020年8月「RIZIN.22」での加藤ケンジ戦を最後に怪我のため長期欠場。今年5月「RIZIN.42」でフライ級に階級を下げて約3年ぶりの復帰を果たすと、伊藤裕樹から判定勝利を収めた。
連勝をかけてアーセンが対戦した福田は各団体のトップ選手たちが出場したDEEPフライ級グランプリで優勝を果たしている実力者。フライ級離れした威力を誇るパンチを得意とするフライ級屈指のストライカーだ。
その福田を相手にアーセンは打撃戦を展開し、カーフキックを効かせつつ、左フック・左ストレートからのタックルも織り交ぜて福田を攻め込んでいく。
福田もサウスポー&フリッカースタイル(前手を下げた構え)から繰り出すジャブで反撃に転じ、このジャブを受け続けたアーセンの左目が次第に腫れあがる。そして3Rにアーセンにドクターチェックが入り、一度は試合続行になったものの、二度目のチェックでドクターが試合をストップした。
ドクターチェック時に「大丈夫、大丈夫」「お願い。やめられない!」と試合続行を懇願し、TKO負けが告げられると、悔し涙を流したアーセン。バックステージでも「クソみたいな動きをしちゃいました。グラウンドありきで進めるのがもともとのプランだったのに、KOで勝てる気がして。バカみたいにカウンターを狙っちゃって、もっと自分を出して、ちゃんと攻めればよかった」と無念さをにじませた。
得意のテイクダウンを奪うことができず、打撃戦で敗れたアーセンだが、試合内容という面ではどうだったのか。現UFCファイターで、セコンドを務めた中村倫也はアーセンの成長を感じることができた試合だったと振り返る。
「確かに今回は相手の隙を見て、打撃を出しながらテイクダウンする作戦でした。福田選手はテイクダウンディフェンスが上手いので、時間をかけてじっくり丁寧に寝技をやろうと。
もちろん福田選手のジャブに対してもシミレーションしていたのですが、フリッカーのジャブは想定していなくて。こっちも精度のいい一発を当てられればと思っていたのですが、ボクシング技術については福田選手の方が一枚上手でした。
ただ今までのアーセンだったら打撃を受けて固まっていたと思うんですけど、今回は打撃を交換しながら、自分の攻撃を返すことが出来て、アーセンもそれが心地よかったと思うんです。
今まで練習では出来ていても、試合で出来なかったことがあって、それが今回の試合で出来るようになった。しかも日本トップのストライカーの福田選手とそれがやれたわけだから、僕はアーセンの成長を感じました。アーセンはああやって悔しがっていたけど、『今回得たものに焦点を当てていこう!』と伝えました」
今回の敗戦で4勝6敗となったアーセンだが、適正階級=フライ級での戦いは始まったばかり。中村も「試合では見せていないけど、今回は組み技・寝技の部分で細かいところを修正する練習をしていて、アーセンはポテンシャルも高いから、すぐにそれを覚えくれる」と間近でアーセンの進化を目にしている。
敗れてもなお成長の跡を見せたアーセン。その才能が開花し、巻き返すのはこれからだ。
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