2027年に台湾有事が? 「海峡封鎖なら円安・株安・債券安のトリプル安に」「台湾から来る避難民の対応は考えられていない」 元陸幕長に聞く日本の“協力”
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 9月24日、台湾国防部は対岸にあたる中国・福建省沿岸部に「中国軍の地上部隊が集結している」動きを確認したと発表。哨戒機や衛星を駆使し監視を強めた。中国軍はこの2カ月ほど台湾周辺での軍事演習を強化していて、18日には防空識別圏に過去最多となる1日103機の中国軍機が飛来。この状況に台湾の国防部長は「最近の中国軍の動きは異常だ」として警戒を強めている。

【映像】中国の演習の様子

 もし台湾有事が起こったら日本はどう対応すべきなのか。アメリカのシンクタンクは6月、台湾有事のアメリカの対応を想定したリポートを発表。その中で「大規模な基地がある日本の協力がなければ中国の侵略に対し迅速な対応が不可能になる」として、日本が不可欠な存在だと強調している。

 日本に何が起きるのか。何ができるのか。『ABEMA Prime』で専門家に聞いた。

■「2025年から2027年は非常に気をつけるべき時期」

 台湾有事を巡っては、今年2月にアメリカのバーンズCIA長官が「習近平国家主席が2027年までに台湾進攻を成功させる準備を指示したことを把握している」と発言。3月の米情報機関報告書では「中国が台湾有事に備えて2027年までを目標に軍事の増強を図っている」と指摘している。2027年8月に自民解放軍建軍100年、2028年3月には習主席の3期目の任期満了を迎え、その時期に紛争リスクが高まると予測されている。

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 元陸上幕僚長・元陸将の岩田清文氏は「中国に今すぐ進攻できる能力はない。少なくとも1年以内はできない」とした上で、「台湾の国防部長が2年前に『2025年以降は中国が進攻できる能力を持つ』と言っている。中国は今、揚陸艇や核戦力も含めて大軍拡をしていて、これが早く進めば、2025年から2027年は非常に気をつけるべき時期だと思う」との見方を示す。

 ロシアのウクライナ侵攻が長期化していることから、中国の狙いは短期戦だと指摘。「中東とヨーロッパにいる米軍を移動させるのに1カ月くらいかかるので、その前にやってしまいたい。できれば平和的統一が狙いだと思うが、2年前くらいの台湾でのアンケートで過半数が、自分は何人かという問いに『台湾人』、統一と独立と現状維持なら『現状維持』と答えている。台湾は政治工作に落ちないと思うので、最後は武力行使しかないということになってしまうだろう」とした。

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 CSIS(米国戦略国際問題研究所)が2026年の台湾有事を想定したシミュレーションでは、24通りの大半は中国が撃退されたという。岩田氏は「21回が進攻失敗で、3回が成功だ。ただ、この報告書で一番大事なところは、中国人民解放軍、台湾軍と台湾領土、米軍、陸海空自衛隊、それから空母も戦艦も、24回全てでボロボロになっていること。“3回は成功するけども、世界をリードする国には二度となれない”ということで、CSISはやめておけといっている」と説明した。

■「海峡封鎖なら円安・株安・債券安のトリプル安に」「“社会活動は守る”という国民の強い意志が必要」

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 岩田氏は、台湾有事の日本への影響は「極めて大きい」と分析する。「台湾周辺の海が封鎖されると、年間4200隻の日本向けのコンテナ船あるいはタンカーが、台湾海峡とバシー海峡を通れなくなる。ずっと南のロンボク海峡を通ることになると、石油や原油、LNGが日本に着くのは2~3週間遅れる。原油が入らないので石油精製品が作れなくなり、第3次オイルショックだ。そうなった瞬間に、台湾も日本も含めて円安・株安・債券安のトリプル安が起こるだろう。それから、中国は台湾周辺の制空権、制海権を制圧しようとするが、台湾軍はやらせまいとする。与那国島と台湾の間に台湾空軍の根拠地があり、ここに中国軍が入ってくると、与那国島と石垣島の上空でドッグファイトが起こる。ちょうどその上は航空自衛隊が防空識別圏を南北に引いているので、航空自衛隊のF-15とF-35が那覇基地から飛び立って止めに行く」。

 そうなれば“三つ巴”で日本有事は避けられないといい、「与那国、石垣、宮古、西表など先島諸島に住んでいる10万人には早く逃げてもらわないといけない。加えて、台湾には2万人、中国大陸には11万人の邦人がいて、合わせて二十数万人を避難させる状況が来る。さらに難しいのは、台湾からの避難民だ。ウクライナは人口の2割の800万人が逃げているが、同じ2割なら台湾から460万人が避難する。与那国島まで約110キロ、石垣島まで約230キロだから、ボートで数十万人が逃げてくるだろう。こういう方々もきちんとケアしなければいけない。国民保護については今年の3月、旅行者も含めた先島諸島の12万人をどう逃がすかという図上訓練をやっている。しかし、台湾から避難民が来た時の対応は、政府はまだ考えていない」指摘した。

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 米シンクタンクは「日本の存在は不可欠」としているが、どのような協力が求められるのか。「日本が台湾に自衛隊を派遣することはない。台湾が自分たちで守れない時にアメリカが参戦する、そのアメリカを支援するのが日本の役割だと思う。燃料や食料の補給、弾薬の輸送、食料を渡したり、集団的自衛権の一部を行使して米軍を直接防護する」と説明。

 さらに、日本国土への攻撃も覚悟すべきだとし、「中国がどうしても台湾を取れないという時には、アメリカの出撃拠点である日本の米軍基地や自衛隊基地、あるいは日本国民に対しても“アメリカを支援せずに中国と手を握ろう”“アメリカを支援しなければ日本は攻撃しない”“核攻撃もやるよ”という脅し。国家石油備蓄基地は10カ所あるが、そこにミサイルを撃ってパニックを起こし“アメリカを支援するからこうなるんだ”と。そういったプロパガンダ、宣伝戦、情報戦になってくる」と警鐘を鳴らした。

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 では、日本国民が個人レベルでできることはあるのか。岩田氏は「国民の戦う意志だ。ウクライナは、ゼレンスキーが“亡命しない。最後まで逃げない”と言い、4000万人が団結した。2021年の国際世論調査で、『あなたは国のために戦いますか?』という問いに、日本の『はい』は世界最低の13.2%。自衛隊もまさか国民が鉄砲を持って戦ってくれるとは思わないが、発電や水道、通信など社会活動がきちんと動くように“闘う”。今もキーウではコーヒーショップが開いている。そういった状況があることによってウクライナは負けない。“どんな状況になっても日本の社会活動は守る”という強い意志を日本国民が持つことによって、習近平もおいそれと入ってこれない」と述べる。

 その上で、「避難が必要な二十数万の邦人に対して、“そろそろ進攻があるかもしれないから逃げてください”とどこまで言っていいのか。言った瞬間に台湾の株が下がり、経済も落ち込んでしまうので、6月に台湾に行って国会議員などと話した時には『“台湾から逃げる”とあまり言ってくれるな』と。ただ、逃げ遅れたら大変なので、自治体の首長や台湾と中国に支社を持っている日本の経営者の方々、メディアには言わないといけない。“いつ、どのように、どのような手段で”はしっかり検討していかなければいけない、重い課題だ」とした。(『ABEMA Prime』より)

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