今年上半期の振り込め詐欺など、特殊詐欺の認知件数が9464件と過去最多となっている。未だ増え続ける特殊詐欺に、経済アナリストで、ニュース番組『ABEMAヒルズ』コメンテーターの森永康平氏が体当たり取材を行った。その手口と対策とは?
森永氏はYouTubeチャンネルの中で、「経済アナリストの私が投資詐欺に遭っても被害に遭わないのではないか?」という検証をすべく、悪質な詐欺に体当たり取材を決行。森永氏のスタッフのもとに届いた「円安が進んでいるためドル建ての金融商品を紹介させて欲しい」という、怪しい投資勧誘にコンタクトを取った。
「まだ詐欺と決まったわけじゃないので。変な話、本当にいい商品なら買うし、詐欺師だったら論破する」(森永氏、以下同)
名前を変えて、怪しいメッセージを送ってきた業者と接触した。
森永:カフェに入ったんですけど、どこにいるのかな。あの2人かな。すいません。
男性:あ、戸柱さんですか?
森永:DMでやり取りさせていただいた戸柱です。
男性:どうも初めまして。
森永:よろしくお願いします。
男性:改めまして○○ファイナンスの○○と申します。
森永:よろしくお願いします。
女性:どうも初めまして。私○○と申します。
そこで待っていたのは男性と女性の2人組。早速、女性が商品の説明を始めた。
女性:今回我々の方から提案させていただく商品ですが、ドル建ての長期運用での投資信託、名前は“@@@@@”と言います。この商品の特徴を説明させていただきますが、一番の特徴はリターンが年間で30%付くっていうことなんですよ。
男性:100万円で商品を購入していただいた場合、大体年間で30万くらいの配当金があると。そうすると毎月2~3万円程度入ってきますよね。
提示してきた商品は、100万円を投資すると年間30万円の利益が出るというもの。しかも、この商品、実際に存在する投資信託と同じ名前を使用していた。もちろん中身は全くの別物だ。そこで、森永氏が商品について追及する。
森永:アメリカの国債の利回りとかって今何%くらいですか?
女性:今ですと4%になります。
森永:ちなみに1年前の今は何%ぐらいだったんですか?
女性:1年前ですと1.5%ですね。
森永:2年前の今の時期は何%ぐらいなんですか?
女性:2年前は1%ぐらいですね。
森永:この3年間の平均利回りを計算すると、大体2.2%じゃないですか。そう考えると、資産全体で3割のリターンがあるってことは、株式の方で50%どころかそれ以上のリターンが出てないと計算が合わないんですけど、本当に出るんですか?アメリカ株で?正直ちょっと信用できないですよね。
女性:なんてこと言うんですか。さっきから戸柱さん質問ばかりで戸柱さんこそ信用できないですよ。
ここで女性が“逆切れ”した。すると男性がすかさず次のトークを展開する。
男性:戸柱さん、質問ばかりじゃダメですよ。リスク取ってリターン得ましょうよ。私わかっていますよ。
森永:何がですか?
男性:戸柱さん、入ってきたときからチャレンジャーの目をしています。
森永:チャレンジャー?
男性:ここで契約して、一気に老後資金を獲得してリターン取っていきましょうよ!
森永:なんでそうやって早く契約させようとするんですか。おかしくないですか。
男性:別の商品もありますのでそちらをご紹介させていただきます。リスクを抑えてあるのでリターンは少ないんですけど、元本保証の安全な商品です。
契約を急かすような言動をみせ、“元本保証”の商品を提示してきた。ここで森永氏が攻め立てる。
森永:ちょっと今スマホで金融庁のホームページで登録業者を見たんですけど、御社の名前が載っていないので金融商品取引法違反だと思うんですよ。無登録営業じゃないですか!この際言わせてもらいますけど、あなたたち金融機関じゃないのに元本保証とか利回り保証の商品売ってるって、これ金商法(金融商品取引法)だけじゃなくて出資法にも違反していますけど大丈夫なんですか?
金融庁への登録なしの営業、さらに「元本保証」の謳い文句で出資を集めるのは出資法違反になると指摘されると、男性の態度が急変した。
男性:もういいです。冷やかしですか?
森永:どこ行くんですか?
男性:いや、もう帰ります。
森永:帰らないでくださいよ。
男性:行くぞ。
女性:はい。
痛いところを突かれたのか、2人組は資料を叩きつけ帰っていった。
「結論から言うと詐欺だったし、普通に違法だった。全然いい商品じゃなかった」
今、“モノなしマルチ”と呼ばれる、暗号資産(仮想通貨)や海外事業等への投資など、具体的な商品がないマルチ商法の被害に遭う若者が急増している。2022年、国民生活センターには3353件の相談が寄せられ、その半数は20代以下だ。
━━若年層がターゲットになっている現状をどう見る?
「知らない人からSNSでDMが届いたりして、そこから会話が始まっておいしい話を持ちかけられる。10代、20代の日常生活の中ですでに詐欺に接触しやすい環境がある。聞いた話だと、投資に興味があるような投稿をする人が中心に狙われるという」
━━詐欺師と対峙した感想は?
「普通の会社員風の男女2人で、周りからは保険の営業を受けているくらいにしか見えないと思う。また、女性に“逆ギレ”されたがそれはよくあるパターンで、契約が上手くいかなさそうになると片方が『これだけ説明してやってるのに契約しないのか!』と怒り、もう片方がなだめて助けてくれる。そうすると『助けてくれたこの人は信頼できる』と潜在的に思ってしまうが、全て台本だ」
投資詐欺にだまされないためのポイント
1.「絶対に儲かる」は信じるな!
上手い話をしても、最後は必ずと言っていいほど「絶対儲かる」「元本保証」などありえないことを言うので、そのワードが出たら詐欺だと思っていい。
2.相場感を持とう!
定期預金の年利や、日本国債のリターンなどだいたいの相場感を知っておくと、明らかにおかしい話には気づける。
3.その場で契約せず持ち帰って確認を!
詐欺師はその場でサインさせようとするので、その場で契約しない。詐欺師が実在の金融機関の名前を語るケースもあるので、公式ホームページや支店に確認する。
━━どう投資していくのがいい?
「手数料が低いネット証券など使い、自分で判断して投資すると詐欺師が介在する場所がなくなるので、ちょっと大変なところもあるかもしれないが、基本的には自分でやるのがいいと思う」
(『ABEMAヒルズ』より)
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