巨大IT企業への規制 「解決への道」に見る日米の違いとは?
【映像】GAFAMは裁判でも負けない?

 9月26日、アメリカのFTC(連邦取引委員会)が日本の独占禁止法に当たる反トラスト法に違反した疑いで IT大手のアマゾンを提訴した。アマゾンの業態のどのような点が問題視されているのか?『ABEMAヒルズ』では、日米の対応の違いに着目し、専門家と考えた。

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 FTCは「他の競合サイトで、より安く販売した事業者をサイト内で検索しづらくする」「自社の配送サービスを使う事業者の商品を上位に表示する」など、アマゾンが「オンライン経済における競争を阻害している」と主張。

 一方アマゾンは「FTCの狙いは消費者と競争を保護するという役割から根本的に逸脱しており、FTCの思い通りになれば、顧客が選択できる商品が減り、価格は上がり、配達は遅れる」と反論。両者の言い分は真っ向から対立している。

 独占禁止法や経済学に詳しい名古屋大学の林秀弥教授は「『小売り事業』と『売り場提供』を兼ねた優位な立場。有利な状況を作れるシステムがある以上、アマゾン側の主張には説得力がない」と説明。配送サービスについても「アマゾンは自社の配送サービスを利用させることで大量の商品を配送することができ、配送コストを下げられるが、ライバル企業は自前の配送サービスのコストが高くなってしまう。これは『ライバル費用引き上げ戦略』の典型例だ」と解説した。

 しかし、裁判の実情について林教授は「FTCの訴えを裁判所が退けることはしばしば起こっている。理屈の詰め方が甘いとアマゾン側の反論を許してしまう」と説明。実際、FTCは2022年、メタ社(旧フェイスブック)やマイクロソフトを提訴したが、どちらも敗訴になっている。 

 そこで林教授が注目しているのは、2年前に32歳という若さでFTC委員長に就任したリナ・カーン氏。就任前からアマゾンを批判してきた彼女の主張が受け入れられるかがポイントになるという。

 FTCとアマゾンの対決について、上智大学教授で現代アメリカ政治外交が専門の前嶋和弘氏は「ポイントは双方とも『消費者の利益』を主張している点だ。FTCはアマゾンが市場を独占することによって人々が損をすると訴えており、アマゾンはFTCに従うと商品の値段が上がると主張している」と述べた。

 さらにFTCの狙いについて「アメリカは判例を第一次的な法源とするところがあるが、これまでの多くの裁判ではIT企業の言い分が通っている。そのため、それを変えるために、いろいろ裁判を起こして『争点化』し、法律を作ろうとしているのでは」と分析した。

 一方、日本では2018年に、公正取引委員会がアマゾンジャパン合同会社に立ち入り調査を実施。「通販サイトで値引きの一部を納入者に負担させている」という指摘に対し、アマゾンジャパン側は2020年、1400社に20億円を返金するなどの改善計画を出し、行政処分は見送られた。

 提訴しているアメリカと比べると、“穏やか”な決着に見えるが、これについて林教授は、「アメリカでは裁判で全面対決するのが一般的だが、日本では会社が自発的に改善計画を出す『確約手続』などで裁判よりも迅速な解決処理を目指す傾向がある。行政側も速やかな解決を求め、企業側も評判を下げるリスクを避ける」と指摘。

 これを受けて前嶋准教授は、「日米の違いはあるが、公正な取引や消費者を守るために国が巨大企業にどうやって立ち向かっていくのか、という点は非常に大きなテーマだ」述べた。
(『ABEMAヒルズ』より)
 

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