60代の男性がネットで知り合った女性にTikTokでのショップ開設を勧められ、3億円を超える詐欺被害に遭った。今年10月、男性は理事長を務めていた保育園の積立金2億4000万円あまりを横領したとして刑事告発されている。
「怒りというより失望ばかり。こういうことも平気でできるんだな」
憤りをあらわにするのは、愛知県瀬戸市で複数の保育園を運営する社会福祉法人菱野団地子どもセンターの森田洋子理事長。口にしたのは、夫でもある前理事長の横領事件についてだ。
「弊社の建て替えをするために積み立てをしていたがゼロになった」
2019年7月から今年8月にかけ、複数回行われていたという横領。前理事長は女性に一度会った後、チャットでやり取りを続け、この間に数千万円規模を女性に渡していたが、しばらくすると、“ある投資話”を持ちかけられる。それがTikTokショップの開設だ。
TikTokにネットショップを開設し、物が売れるたびウォレットと呼ばれるネット上の財布の売り上げが増え、儲かる仕組みだったというが「エラーが出た。アカウントが停止された。資金を追加しないと運営継続できない」などと女性は言葉巧みに前理事長に対し金銭の振り込みを要求。その額は1回につきおよそ8000万円。
男性は夫婦の財産を使い切ると、親族にもお金を借り、振り込み続けた。しかし今年8月、とうとう資金が底をつき、前理事長が法人の別の関係者に打ち明けたことで横領が明らかになった。
「最後の最後まであのお金は戻ってくる。言われた金額を振り込めば戻ってくるという風に本人は思っていた」(森田洋子理事長)
被害額は3億円以上だが、そのほとんどが戻ってくる見込みがないという。女性とのやり取りは消えるタイプのチャットを介していたため、現段階では確認するすべがないのだという。
詐欺事件に詳しいジャーナリストの多田文明氏によると、SNSなどを通じて女性が中高年の男性を詐欺に誘導するというデジタル版美人局のような手口が近年増加傾向にあり、「中高年の方はネットに詳しくないため、相手の話にのってしまい、どんどんお金を取られてしまう」のだという。
さらに多田氏によると、最初は貯金を全部使わせるがその後、借金をさせてさらにお金を出させ、今回のように横領という形で「加害者」にさせることもあるという。
法人は業務上横領の疑いで前理事長を刑事告訴する方針で、法人に対し運営補助金などおよそ2億4000万円を支払っていた瀬戸市も、前理事長を業務上横領で刑事告発している。
「保育園の運営をこのまま継続させていただきたい旨は市の方には伝えている。改善に向けて進んでいきたい」(森田洋子理事長)
(『ABEMAヒルズ』より)