【MIZUHO BLUE DREAM MATCH 2023】日本代表4－1カナダ代表（10月13日／デンカビッグスワンスタジアム）
初の複数得点の喜びと反省と
田中碧は実に冷静沈着だ。ピッチ内でも、試合後のコメントでも、その振る舞いは変わらない。13日のカナダ戦で、日本代表のフル代表で初めて複数得点を挙げたその2点は、いずれも田中らしいクレバーさが際立っていた。そして試合後のコメントも。「パーフェクト。でも、まだまだ」。田中が振り返った言葉の真意とは、なにか。
「落ち着いてコントロールできた」。キックオフから78秒で決めたゴールを、田中はそう振り返った。周りの状況をしっかりと把握できていたからこそ生まれた先制弾だった。
カナダは、ボール非保持時は5バックを形成していた。「5-3の（ブロックの）前や5-4の前は比較的空いている」と判断し、マークが手薄な場所に立っていた田中は、中盤でこぼれ球を拾うと、ミドルシュートを選択。「意図的に股を抜けました」と、フリーでボールを持ち、時間をつくれたからこそ、相手の動きを見極め、狙い通りのシュートを打てた。
田中は49分にもチームの4点目となるゴールを決めた。ゴール前で伊東純也の浮き球パスを受け「力まずに決められたことがよかった」と振り返っていた。
「（中盤から）止まらずにいいところに入っていけた」と、ここでも周りの状況を冷静に把握しながら、得点の匂いがしそうな場所へと顔を出せたことが、功を奏した。
田中にとって、これがフル代表で初めて複数得点を記録した試合となった。「ゴールに絡むこと」は以前から自身の課題に挙げていただけに、ある種の納得感もあったはずだ。
「もう1、2点決めるチャンスがあったので、それを決めていればゴールという部分に関してはパーフェクトだった。まだまだだなと思う」
試合後のコメントも、実に田中らしい。両チーム最多5本のシュートを打ちながらも決められなかった反省と、一方で、結果も出せた喜び。その両方がにじみ出る言葉を残した。
試合中も試合後も、いつでも冷静な田中は「継続することが大事」と語る。
「FWじゃないのでコンスタントに決めることは難しいですけど、3試合、4試合、5試合で点を取ることが自分のなかでは大事。得点チャンスをつくり出す、もしくはそこに絡んでいくことを増やしていきたい」
それはゴールへのこだわりであり、チームへの責任であり、自身への覚悟だ。4月に右膝内側靱帯断裂で戦線を離脱し、日本代表の6月シリーズもメンバー外となったなかで、9月に代表復帰した際にはキャプテンマークも巻いた。“森保ジャパン5連勝”“5試合連続4得点以上の勝利”のうち、直近3試合で、自身の存在意義を示した。ただし“まだまだ”。田中が見据えるのはまさに、“3試合、4試合、5試合”と、結果を出し続けることだ──。
文・舞野隼大
（ABEMA／MIZUHO BLUE DREAM MATCH 2023）GettyImages
