イスラム組織「ハマス」が実効支配するガザ地区。周囲はコンクリートの「分離壁」で覆われ、住民はそこから出ることはできない。
ガザ地区は種子島と同じくらいの面積に、約222万人のパレスチナ人が強制居住させられ、人口密度世界一とも言われている場所だ。その“壁”のなかで、今人々はどのような暮らしを送っているのか。ガザ地区に6回の渡航経験のあるジャーナリストの藤原亮司氏に聞いた。
藤原氏いわく、ガザ地区の実質失業率が80%を超えると言われる一方で、「飢え死にする人はいない。物の援助だけでカツカツの生活はできるんです」と説明する。若者は高校卒業しても仕事がなく、やることがない。それでも、ガザから出国させてもらえず毎日友人や近所の人と無駄話をして暮らしているのだという。
「以前まではガザからイスラエルに出稼ぎに行って(ガザに)帰ってくるということができたんですけど、年々自由というか人間の尊厳というものが奪われていくという状況です」(藤原氏)
「その中でハマスに参加するという選択をとる人もいますが、多くの人は『そういうことをやっても無駄だ』と、諦めの中で暮らすしかないというのが現状」という。イスラエル建国以来、ハマス側からすると”理不尽”な75年間だったと見ることもできる。そんな人々の解放を目指し立ち上がったのがハマスだ。
「ハマスは2006年に統一選挙で選ばれた政党。民主主義で選ばれた組織ですが、イスラエルや西側諸国からテロ組織に指定されたため猛反発、政権から引きずりおろされました」(藤原氏)
現在のパレスチナ自治区は、ガザ地区とヨルダン川西岸地区の2つ。ハマスの凋落以降、ヨルダン川西岸地区が政権を握っているため、国際社会からの援助はガザ地区には中々たどり着かないという。
電気はイスラエルからの給電に頼っているため、使えるのは1日4時間だけ。また、かつては下水処理施設が破壊されたり、老朽化しても新しい部品はイスラエル側が「武器に使われる恐れがある」という理由で搬入を禁止。修理されずにされず汚水や下水が海に垂れ流しになるほどの劣悪な環境にも陥った。
そんなガザ地区では、藤原氏が最初に渡航した2002年頃は150~160万人程度だった人口が、現在は230万人程度と急増している。「ガザの人たちは仕事もなく何もすることがないし、いつ子供が殺されるかもしれないということで家族を増やそうという考えもある」という。
藤原氏によると、ガザ地区の今後を考える際にポイントとなるのは、エジプトの動きだ。ガザとエジプトをつなぐ検問所も、物や人の出入が止まっているため、「まずはエジプト側が、ガザに支援物資などを搬入できるというのが第一歩」だと語った。
今回のハマスの動きについて、「ガザの状況が少しでも改善するということにはまったくつながることはない。ガザの人々の生活がもっと制限されてしまい、暮らしは非常に絶望的なものになってしまいます」「地獄絵図しかない」と嘆いた。
(『ABEMA的ニュースショー』より)
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