【キリンチャレンジカップ2023】日本代表 2-0 チュニジア代表(10月17日/ノエビアスタジアム神戸)
古橋亨梧は、急にボールが来ても冷静にゴールを決め切った。10月17日、日本代表はチュニジア代表に2-0で勝利を収めた。貴重な先制ゴールを奪ったのは古橋であり、CFで先発を託された責務を果たしてみせた。「偶発的だった」と振り返ったが、ヴィッセル神戸時代に慣れ親しんだ“ホーム”だから決められた凱旋弾だったのかもしれない。
チャンスは何度も作れていたが、ネットを揺らせない——。日本がそんな展開を強いられ、スコアレスでハーフタイムを迎えようとしていた43分にその瞬間は訪れた。中盤の守田英正から久保建英、旗手怜央へとパスが繋がると、旗手は右サイドを駆け上がる伊東純也へとパスを送った。しかしボールはカットしようと伸ばした相手DFの足に当たり、ペナルティーエリア中央で待つ古橋の下へ。
抜け出した古橋の前にはGKただ一人。不意に訪れた絶好のチャンスは「偶発的だった」と振り返ったが、「流れのなかで『出てきたらいいかな』と動き出していた」とも話している。出し手と受け手の良い関係でフリーになってのゴールはいわば十八番で、古橋らしい準備と嗅覚の賜物であることは間違いだろう。あとは冷静だった。「良いところにボールが来て、思っていた以上に落ち着いてトラップできました。GKも見ながらどちらにも蹴れる良いところにボールを置けた」と、叩き上げのストライカーはきっちりとシュートを決め切った。
舞台が、ノエビアスタジアム神戸だったことも力になったはずだ。2018年から2021年までヴィッセル神戸でプレーしていた古橋にとっては「思い入れのあるスタジアム」であり、約2年ぶりのピッチの“芝目”も古橋には馴染み深いものだったのだろう。「たくさんの人が名前を呼んでくれたり、ゲーフラやユニフォームを掲げてくれたりして、本当に嬉しいです。その人たちの前でプレーできて、ゴールを決められてよかった」と喜びを語る。同じノエビアスタジアム開催だった2022年6月のガーナ戦はベンチで90分間を過ごしただけに余計に感慨深いだろう。
古巣・神戸のファン・サポーターも駆けつけたなかでの一撃。ただし、古橋に慢心はない。「点を決められてホッとしていますけど、まだまだやらないといけない。これに満足せず、またクラブに帰って頑張りたい」と、11月から始まるW杯アジア2次予選へ向けて気を引き締めた。背番号11はファンの期待に、堂々の“凱旋弾”で応えてみせた。
取材・文:舞野隼大
(ABEMA/キリンチャレンジカップ2023)