金融商品取引法違反などで起訴された、日産自動車の元会長カルロス・ゴーン被告。保釈中だった2019年に中東のレバノンに逃亡し、今も裁判は行われていないままだ。今年に入ってからは、レバノンで日産などを相手取り、1400億円以上の損害賠償を求める裁判も起こしている。14日のABEMA『NewsBAR橋下』に出演した弁護士の丸山和也氏は「日本の尊厳と権威がかかっている」と危機感を訴えた。
丸山氏は「これは本当にひどい事件だ。ゴーン被告が保釈中、楽器のケースの中に隠れてプライベートジェットで逃げるという大胆な逃亡劇を演じて、ある意味では“かっこいい”と。テレビだったらそれで終わるが、これは日本の司法に土足で踏み入り、ぶち破った行為だ。マスコミは忘れたように放送せず、日本の司法も諦めている」と主張。
一方、橋下氏は「日本の司法が土足で踏みにじられたと言うけど、レバノンとしても、自国民を他国に引き渡すことは国家の主権として許せない。逆の立場で、中国で日本人がスパイ容疑などで捕まった時、何らかのかたちで日本に逃げてきた人を中国に引き渡すのか、という話だ」と指摘する。
丸山氏は「法的にはそうだ」とした上で、「国や国民が黙って、過去のことにしているのがよくない。例えば、北朝鮮の拉致問題は“国家の最優先課題だ”と言ってきた考えが欠落している。舐められているし、馬鹿にされているし、踏みにじられている。官邸に行って岸田総理と話し、『カルロス・ゴーン奪還特命委員会を作って、あなたがトップになっていろいろやってほしい』『引き渡し条約(※)はないけど、外交的・経済的、政治的圧力による交渉をやったらどうか』と提案した。『考えてみます』と言われたけど、まったく考えていない。これは1年半くらい前の話だ」と明かした。
※日本は米国と韓国の2カ国のみ犯罪人引渡し条約を締結、英国は115カ国、米国69カ国、韓国25カ国(2016年時点)などと比べて少ない
これに橋下氏は「日本が引き渡し条約を結んでいる国は少数。諸外国は日本の裁判を信用しておらず、野蛮な司法システムだと見ているからだ。1つは、取り調べ時の弁護人の立会権がないこと。取り調べは密室の中で行われるのが当たり前だと日本国民は思っているけど、普通は弁護人が立ち会うわけだ。ゴーン被告は、弁護人の立ち合いもないということも言い訳にしているが、それには日本はちゃんと答えなくてはいけない。それを抜きに圧力だなんだと言っても、世界は味方してくれない」と指摘。
その上で、「弁護人の立ち合い権は認めたうえで、捜査機関へもおとり捜査や盗聴、司法取引などの“武器”を認めさせて、力をつけないと。僕は保釈を広げることには賛成で、被告の権利を拡大する代わりに、GPSをつける。“人権侵害だ”という声があがるが、逆。拘置所の中にずっと入れられるより、GPSをつけて外に出たほうがまだマシだ。弁護士会もやっとそれを認め始めた。ただ、全員にということではなく、海外に逃亡するおそれのある人などにする。法務省は“日本には日本のやり方がある“と言うが、それを認めたら、北朝鮮には北朝鮮の、中国には中国のやり方があるとなってしまう。世界標準でいかないと」と話した。
こうした流れから、橋下氏が「丸山さん、今からやってくださいよ(笑)」と投げかけると、丸山氏は「“やるって言って1年半経ったのにどうなってるんだ”と岸田さんに言いに行こうと思ってるんだけど」と意気込んでいた。(ABEMA『NewsBAR橋下』より)