近年増えている、身元はわかるものの、引き取り手のない遺体。横須賀市役所で見せてくれたのは、生活保護を受けていた一人暮らしの高齢者宅から見つかった遺書。『私 死亡の時 15万円しかありません 火葬 無縁仏にしてもらえませんか 私を引取るひとがいません』。終活支援センターの北見万幸氏は「また裏がすごかった。無縁の『縁』の字がたくさん練習してあった」と話す。
市で火葬したということだが、実は故人に頼れる身寄りがなく、金銭的余裕もない場合、火葬などの費用は生活保護費の一部で賄われる。つまり、税金。9月に国が公表したデータによると、その総額が初めて100億円を超えた。
横須賀市の庁舎内には、引き取り手がない約200人の遺骨が保管されている。親族と連絡がつかず、一定期間を過ぎれば無縁納骨堂に納められる。北見氏は「お姉さんが海外に行って連絡が取れないので、とりあえず置いてあるという理由が書いてある」「黙ってここに立っていると泣けてきてしまう」。
そんな中、新たな葬儀の形として話題になっているのが、移動式の葬祭会場だ。サービスを始めたのは、元住職で清浄株式会社社長の阿部俊之氏。「見送る人が誰もいないという、一番最期のところで虚しさを感じる」と話す。
去年、葬儀社を立ち上げ、購入したバスに祭壇を設置。故人が入所していた施設などに赴き、職員や入所仲間などに参列してもらえるようにした。火葬後は合葬墓などに納骨。通夜や告別式まで執り行うと赤字になることもあるが、それでも続けていくと言う。
困窮化する高齢者とともに、年々増えるそうした人達の葬儀費用にかかる税金。今後どうすべきなのか、『ABEMA Prime』で考えた。
北見氏によると、親族が引き取りを拒む理由は、親族も生活に困窮し葬儀費用がないこと、遠方に住んでいたり遺族も高齢化したりして体力的に困難なこと、長きにわたり「疎遠状態」にあること、親族間の感情的な面、などがあるという。
「ご本人にもいろいろな思いがあるのだろうが、現状はそういった悩みなどを聞く窓口も行政にない。生前に聞いておかないで、亡くなったらお金だけ投入するというところが問題だ」
横須賀市では、終末期から死後の手続きまでを支える「エンディングプラン・サポート事業」を2015年から行っている。申請すると、葬儀や納骨先などの希望を登録でき、葬儀社と生前契約することができる。対象は、原則一人暮らしで頼れる身寄りがなく、低所得で資産の少ない高齢者の市民。費用は26万円で、生活保護受給者は納骨費5万円のみを前納する。
なぜ親族と連絡がとれないのか。北見氏は、そもそも遺族の連絡先がわからないことが大きなハードルになっていると指摘する。
「家族の数が少なくなったり、3世代同居が少なくなったり、高齢の単身者が多くなった。ダメ押しが、2003年頃から携帯電話の契約数が固定電話を抜いたこと。“104(番号案内)”が機能しなくなったということだ。こうした背景から、引き取り手のない遺骨が急増している。携帯電話はロックがかかり、顔認証も解除できないので、なかなか中を確認することができない」
葬儀費用を税金で賄うことに対し、Xでは「何で顔も知らない人のために税金が使われるの?」「葬祭扶助を出すために税金を納めているわけじゃない」などの批判の声もある。
北見氏は「意外とお金を残されて亡くなる方が多いというのは知られていること。ただ、口座のお金が(勝手には)使えない」「(エンディングプラン・サポート事業の導入は)全国1700以上の自治体のうち16カ所くらい。支援費用の26万円も最低限度に抑え込んでいる金額で、葬儀社さんにも相当ご協力いただいている」と述べた。
また、阿部氏も自身の葬儀社をめぐり、「棺などは安く買えるが、病院へはどうしても2人でお迎えに行かないといけない。病院のほうからは『私たちはあなたたちの手伝いじゃない』と言われる。バスも運転するので、ほとんどが人件費で飛んでしまうというのが現状だ。私がお金を取らなかったらどうにかいけるが、従業員からは“私たちは偽善者じゃない”と怒られる」と明かした。
2022年の死者数は156万人あまりと過去最多。火葬場の不足が指摘され、都市部では10日以上も待たなければならないケースもある。北見氏は「エリア人口内で今1.2%くらいが毎年死んでいく。1.5%まで上がるというのは読めていて、その段階では人口もある程度減っているので、おそらく2040年前後がピーク。そこまで耐えるということなのだろう。うちの事業では、8年やってみて約20%を吸収できている」とした。
では、墓地埋葬法や生活保護法などの改正も必要になってくるのか。「墓地埋葬法では、火葬の義務は謳っていない。誰もする者がいない時だけ、亡くなった場所の市町村長に対する義務だけだ。昭和23年頃からの法律で、古いものだ」「(遺留金の扱いについては)検討が始まると思う。総務省の行政評価局が、厚労省や金融庁になんとかできないのかと勧告を出したところだ」とした。(『ABEMA Prime』より)
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