ラーニングイノベーション総合研究所が10月に発表した「管理職意識調査」で、管理職が抱える悩みの1位となった「部下の育成」。Xには「謝らない、報連相できない。社会人舐めすぎ」「自分の考えとシナリオ持って相談に来て欲しい」といった声があがるが、会社の売上アップや業務効率化のためには部下の育成は不可欠だ。
中小企業の総務部長を務めている原沢一世さん(48)も、頭を悩ませている1人。「メンタルが弱い部下が増えている。ちょっとマイナスなことがあるとすぐつられて、失敗すると自己嫌悪になってしまう。やる気スイッチはどこにあるんだろう?という感じだ」。
そして最近は、説明不十分でコミュニケーション力が低い部下にも悩んでいるという。「LINE・メールでの報告・相談が増えた。テキストだけを見ると判断できないというか、勘違いしてしまうような内容。仕事のスキルは関係ないと思う」。
6割の管理職が部下へのフィードバックを「ためらう」と回答するなど、“部下を育てられない”現代。解決の糸口はどこにあるのか。ビジネス本『部下を育ててはいけない』著者でオンラインサロン田端大学の田端信太郎氏と『ABEMA Prime』で考えた。
■田端氏「最後は退職勧奨して追い出すべき。そこから逃げているからいつもフワフワした話になる」
【ケース1:やる気のない部下】
『最近、若い部下の育成を任されたんですが、肝心の部下本人のやる気がなく途方に暮れています。部下の報告はいつも言い訳ばかり。アドバイスも聞かず改善されません。自分の仕事もある中で、“やる気のない部下”にどう接したらよいのでしょうか』
吉田幸弘(人材育成コンサルタント):「いいからやれ」と言いたくなるが、そうもいかない。まず言い訳を聞いて、最後に「どうしたいの?」というところで行動をさせる。そこに持っていくことが重要。
田端:この手の話をする時に重要なのは、査定の権限がどれぐらいあるのか。給料の上げ下げや人事の決定権がないのに、「上司なんだからなんとかしろ」って言われても、バットがない野球選手みたいなものだ。決定権がない人は、「権限ないのにマネジメントなんかできませんよ」と上司に言うべきだと思う。その上で、まず成果が出ていないこと、会社としてはここまで求めているということを示す。言い訳については、ある機材が必要なのであれば投資をしようかとか、全部塞いでいく。それでも成果が出ていない場合は、査定で給料を下げたり、これだけ言っているのにできないのは君の責任だと、最後は退職勧奨して追い出すべきだ。そこから逃げているから、この手の話がいつもフワフワする。会社は学校じゃない。育成は目的ではなく手段で、それを含めて成果を出すのが管理職の仕事。そういうマインドで接してないから、「育成してよ」となってしまう。
カンニング竹山:パワハラにはならない?
ハヤカワ五味(実業家):「これを達成していない」というロジックが立っていれば大丈夫だ。
田端:ボーナスは全てカットできるし、基本給も査定に基づいて年間10%ぐらいまで下げられる。日本の給料が上がらないのは、給料を下げられないからだ。
菅野志桜里(弁護士):育成したり、チームをまとめていくにはスキルがいる。そういうのが得意な人と、個人でガンガン進めていく人がいるわけで、昇進したからって得意じゃない人に育成させるこのルートはやめられないのか?
吉田:それがいろいろと問題になっている。営業成績が良い人が、必ずしも良いマネージャーになるわけではない。なので、営業成績が良い人はプレーヤーを極める、マネージャーはマネージャーで、といった動きも最近出てきている。
ハヤカワ五味:そもそもやる気は自分で作れっていう話でもある。私の場合、どうしても関わらなきゃいけない人がやる気がなかった場合は、人として見ないようにする。水が上から下に流れるのと同じように仕組みを作って、流れていることを確認するように対応している。
吉田:モチベーションは上げられないものだと思っているが、リーダーが“下げる”可能性はある。例えば、正当な評価をしなかったり、言い方が良くなかったりなど。特にリーダーはストレスが溜まってる人が多いと思うが、ある時にプツッとキレてしまって、今までの信頼がマイナスになってしまうということがある。
■奥が深い問い? 部下への指示は“細かくor放任”
【ケース2:部下への指示は細かく?放任?】
『私の部下は自信家で、細かく指示すると嫌がります。一度任せてみたのですが、足りない部分ばかりで、尻拭いに時間がかかり、私の業務が滞りました。部下に仕事を振る際、細かく指示をすべきなのか、それとも放任したほうが成長するのでしょうか』
吉田:部下に指示を出す時、絶対に理由を伝えるようにしている。「なんでこの仕事が必要か」「なぜAさんに頼むのか」。これがないと、部下は考えないからだ。人によって頼み方は変わるが、その後は任せて、動かしてみて、タイミングを見てフィードバックを入れる。
田端:「細かく指示は出さずに、部下を信用して放任する」というのは原則論で、これがべき論としては正しい。いわゆるマイクロマネジメントは好ましくない。ただ、吉田さんがおっしゃった通り、相手が新入社員だったり、上場前の重要なクライアントへの提案という場合だったら、提案書を全部自分でチェックするっていうのは、必要。正直これは一番奥が深い。任せつつ、後ろで見て、必要とあらばサポートするけど、それだと本人のポテンシャルがフルに発揮されなかったり、ミスで全体がぶち壊しになるなら必要な段階でサポートしないといけない。ケースバイケースで、これはもうバランスとしか言えない。
仁科健吾(テレビ朝日アナウンサー):めちゃくちゃやる気がある部下で、厳しい指導を求めている。しかし、スペックが追いつかず、やってもやっても成果が出ないという場合にはどうしたらいい?
田端:まずは「やる気があるのはいいことだよ」と伝える。その上で「でも、求める水準に達してないよね」というフィードバックも率直にやる。そこから先は、仕事を細かく分割して、今までだったら「1週間で提案書を書いてね」と指示していたのを、「1日だけあげるからまず目次だけ書いてくれないか」と、砕いていくやり方がある。
吉田:やる気があってうまくいってないのは一番悪いケース。田端さんがおっしゃっているように、プロセスを小さくしていく必要がある。
ハヤカワ五味:自信があるタイプの場合、私は一旦ずっこけるのを待つ。激しく転んで、「痛いっす」っていう時に手を差し伸べないと、うすら自信がある状態が続くからだ。人の言うことあんま聞いてないし、「わかりました」と言ってるけどなんも聞いてないみたいなことがかなりある。
仁科:逆に部下から見て良い上司っていうのはどんな人?
吉田:責任が取れる上司。あと常に平常心で、どんな時でもイライラしたり、おろおろしない。そして、部下が追いつけない知識やスキルを追求する。「決断力」「平常心」「知識」、この3つさえあればなめられる上司にならない。
田端:もちろんパワハラがいけないのは当たり前だが、今の管理職は逆に若手にビビっている。顔色を伺うようになっているのを感じる。それは結局、誰もハッピーになってない。
吉田:ハラスメントという言葉を盾にして、防止する人が増えた。まずやることをやってからで、その前に「ハラスメントだ」というのは問題だ。
仁科:僕は入社5年目で、部下として扱われることが多い。個人差があると思うが、僕は張り合いがほしいので、こっちも積極的にコミュニケーションを取りたい。上司たちには「そんなに怖がらないで来いよ」と言いたい。(『ABEMA Prime』より)
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