「いつ終わってもOK、明日死んでもOK。だから全然後悔もないし。」と語る末期のすい臓がんに体を蝕まれている叶井俊太郎氏(56)。なぜ死を目前に後悔がないと言いきれるのか、ABEMAエンタメはその理由に迫った。
映画プロデューサーの叶井氏は2001年に買い付けたハリウッド映画『アメリ』が国内で大ヒットするなど数々の映画作品を企画・プロデュースしてきた。私生活では、2009年9月、“くらたま”こと漫画家の倉田真由美氏と結婚。24歳の長男と13歳の長女がいる。
叶井氏のすい臓がんが見つかったのは2022年の6月。医師からは治療をしなければ余命は半年と宣告され、治療に専念するか、治療はせずに残りの時間を好きに使うのかの決断を迫られたという。治療しないことを選択したことで残された命は半年に。仕事を残すことで仲間に迷惑をかけたくないとの思いもあり、叶井氏は仕事に打ち込んだ。そして家族に対しても、自分の「したい」ではなく、それぞれの「したい」を優先させた。
ーー家族と行きたいところはありますか?
叶井:行かない。だってみんな忙しいもん。くらたま(妻・倉田真由美氏)は仕事忙しいし。娘は娘で部活、彼氏、友達で忙しいからそれを全部調整してまでどっか行くとかはね。こっちも行きたくないです。
ーー家族に遺したい言葉はありますか?
叶井:遺言みたいな?ないよ。あの娘に対しても特に何も残さないから好きなように生きろとしか言えないよね。なんかそんな言葉にとらわれたくないじゃないですか。そういうお父さんがいたなと。それでいいです。
半年間で仕事の後始末をやり終え、あとは死を待つだけ。しかし、余命をすぎてもその時は訪れなかった。
叶井:本当は半年で死ぬ予定だったんですよ。だけど生きているんですよ。それがちょっと納得いかないです。転移ボンボンしろって言うんだよ、俺としては。ごめん本当に。今がんで闘病中の人には申し訳ないんですけど、僕はもう全身転移してほしいんですよ。
ーー倉田氏の反応はいかがでしたか?
叶井:半年が過ぎたねぐらいの感じだと思うけど、実際話してないかわかんないけどね。どうなんですかね。俺としてはちょっと拍子抜けだよね。
余命の期間をすぎ、また仕事ができるということは、自分がいつ亡くなってもいいよう、再び後始末をしなければならないということ。後悔のないよう仕事上の生前整理を終わらせていた叶井氏にとってそれは耐え難いことだった。宣告された人生のピリオドから約11カ月がたった今、生きる希望や目的は見いだせていないようだ。
ーー目標はありますか?
叶井:いや、もうそれは日常でいいですよ。特にない。なんか別に特別なことして死ぬのも変な話じゃないですか。
叶井氏は、余命宣告後、生きた証を本という形で残すことに決めていた。そして10月30日、15人の著名人と対談した『エンドロール!末期がんになった叶井俊太郎と、文化人15人の“余命半年”論』を発売。本来であれば叶井氏が亡くなった後に発売される予定だったものだ。妻の倉田真由美氏は、この本に向き合うことが苦しく、読むことができないでいるという。
ーー 印象に残っているエピソードはありますか?
叶井:やっぱ全員久々に会っているんですよ。昔から知っているけど、僕も忘れていることが結構あったんで、その当時の話を聞いて色々思い起こしたことがいっぱいあります。それぞれのエピソードが面白いんですけど、死ぬ前に、昔から付き合いがあった人たちと、ああやって真剣に話したことないんで、話せてよかったなっていうことですかね。
余生は日常を淡々と過ごすだけでいいと言っていた叶井氏だが、対談本の次回作について聞くと、少し表情が明るくなったように見えた。
ーー今後対談したい人はいますか?
叶井:いや、今後対談はどうなんですかね。ぱっと思いつかないけど、他にもいると思いますけどね。でもちょっと今思いつかないですよ。どうなんでしょう。第2弾考えなきゃいけないかなと思っている。早めにね。
最後に家族への思いを聞いた。
叶井:(妻・倉田氏に)もう死んだら葬式やるかどうするかという話は任せたとしか言えないよね。
ーー娘さんは叶井氏の病気については理解されていますか?
叶井:理解しているのかどうか分かんないけど、重病だってこと分かっていると思いますよ。今、中2だし、心配していないから。向こうは多分(心配)しているのかどうか知らんけど、さっぱりしていて良かったと思います。あんまり「大丈夫?」みたいな、「死なないで」みたいな、泣いたりするとこっちも困っちゃうしさ。そんな感じになってないから、まあ良かったなと。逆にあの部活と友達と彼氏で忙しいみたいなんで、活発な子に育ってよかったなと思います。会社で死ぬと迷惑がかかっちゃうから、そこは避けたいけど。外もやだ。家がいっか。
(『ABEMA NEWS』より)
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