先日行われたANN世論調査では、岸田内閣の支持率が政権発足以来最低の26.9%を記録。そして、事実上の与野党対決となった10月の衆参補欠選挙でも、野党候補が1勝1敗となり、「野党がまとまれば与党に勝てる」という結果となった。
【映像】正にバラバラ…立憲・泉代表と国民・玉木代表の「応酬」
支持率が低迷する岸田政権を野党は今後も一致結束して追い詰められるのか? 野党事情をテレビ朝日政治部の村上祐子記者に聞いた。
━━野党が存在感を示せていないのはなぜか?
一言で表すと、バラバラだからだ。“バラバラ”の要因は共産党に対する各党のスタンスの違いにある。
まず野党第一党の立憲民主党は、前回の衆院選で安全保障政策などが異なる共産と政権枠組みの合意まで結んで臨んだものの、与党からは「立憲共産党」と揶揄されて結果的に議席を減らした。その後、代表に就いた泉健太氏は一旦共産との連携を白紙にしたところ党内からの猛反発が起きた。というのも、共産党と選挙協力しなければ勝てない選挙基盤の弱い立憲議員が一定数いるからだ。その後やむなく方針を転換し、野党の一本化を目指すという二転三転があった。
続いて日本維新の会は次の衆院選ではすべての小選挙区に独自の候補を擁立予定。つまり、他の野党と連携せずに自分たちだけで闘うスタンスを表明している。
そして国民民主党。最近は政権に連立入りするのではという話もくすぶるが、そもそも国民民主は共産党と距離を置いている。元々立憲と国民民主に分かれる前はどちらも「民主党」だったが、共産党との距離をめぐって当初から党内で意見が分かれていた。国民民主としては、共産党と選挙協力する政党とは一緒にやれないというスタンスを明確にしている。
このように共産党をめぐる立ち位置の違いが表面化しているが、そのせいでまとまって政権に立ち向かえない状況になっている。
━━10月22日に長崎と徳島高知での衆参補欠選挙は事実上の与野党対決となり、野党候補が1勝1敗となった。この結果を野党はどう見ているのか?
1勝とはいえ勝ちは勝ち。立憲としては間を空けずに各党に呼びかけたかったが、きっかけがなく頭を悩ませていた時に10月20日から臨時国会が始まった。通常、与党も野党も新執行部が発足すると、国会での「挨拶回り」といって、各党に挨拶して回る慣例がある。このセレモニーを利用して、立憲は各党に接触を図った。執行部自体は変わらない状態でのあいさつ回りは極めて異例だが、ある幹部は「選挙に向けて連携を呼び掛けるためには『渡りに船だった』」と話す。あくまで「ご挨拶」という形で各党に接触し、「臨時国会頑張りましょう」「次の選挙に向けて連携しましょう」と声をかけた。
━━その挨拶回りが思わぬ波紋を呼んだそうだが。
共産党が思いのほか挨拶回りに大きく反応した。挨拶回りを「党首会談」と捉え、各党への「次の選挙に向けて力を合わせましょう」といった呼びかけを、「次期衆院選挙での連携確認」と赤旗新聞の一面で大々的に報じたのだ。これに共産党と距離を置く国民民主がさらに反発し、翌日に控えていた立憲からの挨拶回りを拒否。SNS上で党首どうしが応酬するというカオスな状態になっている。本来、言いたいことがあれば党首同士が会って話すものだが、お互いが会見やSNSで相手を批判していること自体が、今のバラバラぶりを露呈している。
━━そんなバラバラな状態の中、次の衆院選に向けて各党は準備を進めているのか?
少なくとも維新は独自候補を立てる方針のため、野党が連携する枠組みには入らない。次に、立憲と共産。共産党としては、速やかに政策のすり合わせをしたうえで具体的な選挙区調整に入りたいものの、立憲の泉代表は明言を避けている。現在は約50の選挙区で両党の候補者が競合していて、野党の議席を伸ばすためには本音では協力したい。今後は、表立った形ではアピールせず、協力できる選挙区でそれぞれが協力するという「ステルス戦略」が落としどころだと言われていて、実際に東京では30ある選挙区で候補者を一本化することが内々に決まる見通し。
実際に候補者調整の話し合いをしているのは国民民主だが、立憲が共産に近づくほど立憲と距離を置くので、野党全体での選挙区調整はかなり難航が予想される。国民民主の玉木代表は「政策を脇において『選挙を一緒にやれば何とかなる』という考え方には立たない」「立憲がだんだん近づきにくい存在になってきた」とけん制している。
━━立憲はかなり苦労しているようだが。
共産と連携すれば国民民主が逃げる一方、共産と協力しなければ勝てない議員もいる。各党との接触の場も、あくまで臨時国会召集に伴う「挨拶回り」という建て付けにした。さらに、使う言葉にもこだわった。ある幹部によると、キラーワードは「連携」。他党を刺激しないように、「協力」「共闘」というワードを使わずに「連携」が多用されている。
泉代表は決して「野党共闘」「選挙協力」という言葉は使わず、「各党との連携」「野党議席の最大化に向けて力合わせに取り組む」と述べていて、共産党にも「協力」「共闘」という言葉は使わないで欲しいと伝えていた。共産としては、むしろ「野党共闘」という言葉を積極的に使用してきたが、立憲の意図をくみ取って「連携」という言葉を使って「あげて」いる。ただ、志位委員長は「立憲と連携することで将来的な選挙区調整も想定している」と述べているため、あくまでも選挙区調整をやることにこだわっている。
――年内解散が見送られた中、野党の選挙に対する思惑は?
衆議院議員の任期は10月30日で折り返しを迎えたので、いつ選挙があっても対応できるように準備を本格化させる必要がある。そんな中、ある中堅議員は「早く解散して欲しい」と漏らす。「支持率が低迷する中で解散すれば、政権交代は起きなくても自民党の議席を過半数割れに追い込めるので、岸田さんに今辞めてもらっては困る」「むしろ支持率が少し上がって、岸田さんが解散してくれた方が与党の議席を減らせるからありがたい」と述べている。一回の選挙で政権交代できないことを見越して、まずは自民党を過半数割れに追い込み、岸田総理を「生かさず殺さず」でじわじわ追い込みたい考え。
別の野党議員は「本当は維新と選挙協力したい」とぼやく。立憲と維新の議席を足すと137議席。まだまだ政権交代には程遠いがかなりの議席を上積みすることが出来る。ただ、そうなると憲法改正など見解が違うイシューで立憲が歩み寄らないと難しいので、実現性は低い。
━━ここまで支持率が下がっても与党が強いのは野党が一枚岩になれないから、ということに尽きるようだが。
野党の内輪もめは昔から繰り返されてきた。かつての民主党が「民進党」「希望の党」「立憲民主党」「国民民主党」と党名を変えたりくっついたり離れたりしてきた歴史がある。今も昔も野党に求められているのは、まとまること。考え方の異なる政党が選挙のためにどこまでお互いが譲歩できるかで、今後の命運が決まることになる。
(ABEMA/倍速ニュース)