日本の全ての小学校約2万校にグローブを寄贈すると発表した、メジャーリーグ・エンジェルスの大谷翔平選手。その数は合わせて約6万個、大谷選手が契約を結んでいるニューバランス製で、各校に右利き用2個、左利き用1個が寄贈されるという。この桁違いのプレゼントに多くの称賛の声が集まった。
一方、「お金の使い方は大谷選手を見習うべき」「身を切って寄付する姿を見てほしい」などと比較されてしまったのが、所得税減税や住民税の非課税世帯への7万円給付など、国民への分配を検討している岸田総理。再分配という点では同じことをしているとも言えるが、なぜここまで評価が分かれてしまうのか。
日本では時に売名行為、偽善などと揶揄され、炎上するリスクもある寄付。『ABEMA Prime』で効果的なあり方について議論した。
■カネよりモノ?
日本ファンドレイジング協会事務局長の小川愛氏は「大谷選手の人柄が表れたような寄付ではないか。平等性がある、すごく良い活動。スポーツとチャリティは相性が良くて、ロールモデルになるような活動だと思っている」とコメント。
リディラバ代表の安部敏樹氏は「貧困支援を行っていると、300、400人いてもその中で野球をやっている子は1人もいない。道具にお金がかかるようなスポーツを選手がサポートしてくれるのはすごくありがたい」と述べる。
メンタリストのDaiGoは「グローブの数は関係なくて、それを1回触ったり見たりした子どもが夢を持つ。結果、寄贈した額よりも大きいものを未来に作る可能性があるというのは、すごく賢い使い方だ。人からもらったお金を賢く使える人はほとんどいない。税金が無駄遣いされるのも、自分のお金じゃないからだ」との見方を示した。
岸田総理が比較されることについて、ネット掲示板「2ちゃんねる」創設者のひろゆき氏は「日本の政府のお金は僕らが払った税金ではないか。大谷さんは自分で稼いだものをあげているので、そもそも同じ比較対象の土台に乗せるべきではない」と指摘。
DaiGoは「岸田さんも私財をなげうってから減税すればよかった」としつつ、「例えばネコを保護しようと思って1万円を保護団体に寄付すると、税金が取られて7000円しか残らず、それでエサを買うのであまり助からない。であれば、ネコのごはんを作る企業とくっついて、1万円を原価にエサを作ったほうが少ないお金でも多くの成果を出せるので、寄付は頭の使い方や工夫で全然変わる」と述べた。
■日本は「ふるさと納税」が急成長…問題点も?
日本でふるさと納税が始まってから右肩上がりで寄付額は増えており、2020年の個人寄付総額は1兆2126円。ただ、アメリカの3241億ドル(約34.6兆円)などと比べると、まだ規模は小さい。
小川氏は「背景にある文化や宗教観など、いろいろ違うところもある。アメリカは教会に行く風習があり、そこで寄付をするのを小さい時から見ていると、当たり前だと思うようになる環境がある。日本は元々、控除に頼っていた部分が大きく、寄付にはなかなか進まなかったのではないか。ただ、今は転換期にあると見ているので、まだまだ伸びしろはあると思う」との見方を示す。
日本の主なケースとして、国・地方公共団体や認定NPO、政治活動、特定公益増進法人などへの寄付金の場合、所得税は特定寄付金として一定額を控除、法人税は全額または一部が損金算入される。一般の寄付金の場合、所得税は控除されず、法人前は一定の範囲内で損金参入される。
ひろゆき氏は「日本は認定されたNPOや公益法人などじゃないと経費にならないが、アメリカはある程度大丈夫そうなボランティア団体であれば、基本的に寄付控除される。例えば、アメリカですごい金持ちが100億円手に入れた時、“50億円を税金で取られるぐらいなら”とNPOを作ってお金を突っ込んで、マラリア撲滅の活動をしていたりする。日本でふるさと納税が流行ったのも、払った額が控除されるから。日本とアメリカの30倍の差は、気分よりも税制が大きいのでは」と指摘する。
一方、安部氏はふるさと納税には問題があるとし、「控除がめちゃくちゃ優遇されていること。例えば100払った時に3割くらいが肉とかで返ってきて、2割くらいは手数料としてプラットフォーム側が取る。残り分の50が減税になっているわけだ。さらには、金持ちになればなるほど使える金額が増え、かなり逆進性の高い減税になっている。肉やメロンではなく、それこそNPOの活動にそのままいかない限り、ふるさと納税はむしろネガティブインパクトのほうが大きいと思う」と述べた。
■寄付の妨げとなる要因、寄付が個人に与えるポジティブな影響とは
内閣府の「2022年度 市民の社会貢献に関する実態調査」によると、寄付の妨げとなる要因として、「経済的な余裕がない」(50.3%)が最も多く、「寄付先の団体等への不信感」(23.5%)、「実際に役に立っていると思えない」(22.9%)、「十分な情報がない」(18.2%)、「手続きがわかりにくい」(12.9%)と続く。
小川氏は「そういう(不信感の)話はよく聞くが、寄付を受け取ったほうは『これに使いました』という報告書やお礼を出していこうと言っているし、私どもがやっている研修の中でも働きかけをしている。よく探すと団体のHPに載っていたりするが、見当たらなかったら積極的に要求してみては」と促す。
では、寄付はどういう形がいいのか。安部氏は「この分野で十数年やってきて思うのは、定額寄付。例えば12万円をスポットでやるよりは、毎月1万円のほうがいい。受け入れる団体側からすると、スポットだと次いつ来るかが読めないので、“こういう問題解決をしよう”という活動がしにくい。定額寄付は少額でも計算が立つので、金額以上に価値が高い」と述べた。
小川氏は「寄付をすると自分への肯定感になるというのがある。心がポカポカするので、そういう体験を皆さんにもしていただきたい。自分の関心があることやこうなってほしいという社会に関するところから、まず始めてみていただきたいと思う」と述べた。(『ABEMA Prime』より)
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